ミヤマハンノキ | ||
Alnus crispa (Aiton) Pursh subsp. maximowiczii (Callier) Hult |
北海道旭岳温泉 |
ハンノキ属のうち、葉の展開と同時に花が咲くのがヤシャブシ亜属、葉の展開に先立って花が咲くのがハンノキ亜属である。ヤシャブシ亜属の多くの葉は狭い卵形だが、ミヤマハンノキのみは広卵形である。亜高山〜高山帯の岩礫地などに分布するが、北日本では低地でも見られる。ハンノキ亜属が主として湿地や河原などの湿った場所を好むのに対して、ヤシャブシ亜属は崩壊地や岩礫地など、荒れた乾いた場所でよく見られる。 |
赤道観 | 極観 | 極観の光学断面(微分干渉像・油浸) | 極観(微分干渉像・油浸) |
外層に発芽孔どうしを結ぶ弧状の肥厚部(arc)があることがハンノキ属の特徴である。極方向からは角張った多角形に見え、その頂点に4〜9個の発芽孔があり、孔は正面から見ると細長いスリット状を呈する。光学断面では内・外層ともに孔の縁まで伸びるが、外層はその縁でやや厚くなり、内層から離れて外側にとび出る。このため発芽孔の断面はカニのはさみを二つ向かい合わせにおいたような構造(このような発芽孔の構造を「前室」
という)をとる。表面には短いうね状の突起が密集する。 花粉分析を行う際に、出現するハンノキ属花粉がハンノキ亜属であるかヤシャブシ亜属であるかを決めることは、花粉化石群集から古環境の復元をする時に重要な意味を持つ。守田益宗さんと三好教夫さんは1988年の論文で、ハンノキ亜属は、外層が厚いこと、arcの幅が広く明瞭なこと、発芽孔が突出すること、発芽孔における外層の肥厚が顕著なこと等の特徴によって、ヤシャブシ亜属との区別が可能であると述べている(Morita and Miyoshi,1988)。 |
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