ハイマツ Pinus pumila (Pall.) Regellus | |
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雄花(草津白根山弓池湿原) | 雌花(同左) |
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7月も終わりに近く、もう無いだろうと思ったが、かろうじて抜け殻のような雄花が残っていた。揺すってみたが花粉が飛ぶことはない。これはダメかなと思ったが、落ちている雄花を拾って帰り、花粉のプレパラートを作ってみると、意外なことにたくさんの花粉が残っていて、きれいな標本ができたのはうれしかった。 一方雌花はと見ると、小さいがもう一人前の顔つきである。受粉は既に終わっているだろう。ただし、それだけのことで受精は行われず、小さなままで冬を越し、翌春受精して、マツボックリへと成長する。マツボックリの成熟には2年を要するのである。マツの毬果の種鱗には「へそ」と呼ばれる突起物があるが、これが冬越しをした小さなマツボックリの名残である。 これに対して、トウヒやモミ、ツガなど、他のマツ科の毬果は開花後1年で成熟するため、種鱗に「へそ」は見られない。またゴヨウマツ類のへそは種鱗の先端に付くが、ニヨウマツ類では中央についている。 |
ハイマツの毬果と「へそ」 |
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赤道観 | 同(光学断面) | 同(微分干渉像) |
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本体と気嚢・Germinal zoneとの境目に「Marginal ridge」と呼ばれる出っ張りがあるのがマツ属花粉の特徴である。遠心極側の花粉膜(Germinal zone)は薄く、受粉時にはここが裂け、原形質が外に出て雌しべを受粉させる。マツ属の単維管束亜属(ゴヨウマツ類)のGerminal zoneにはイボ状の突起があるが、複維管束亜属(ニヨウマツ類)には無い。この二点を確認することがマツ属花粉の同定に際してのポイントである。 極観の光学断面では、Marginal ridgeがヒレ状の出っ張りのように見える。 |
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極観(遠心極側)Germinal zone | 極観(光学断面) |
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