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陸化の進行と地殻変動

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 常総粘土層の最上部は、やや緑がかった、白〜灰色の石けん状の粘土層です。この粘土層は、湿地堆積の火山灰層で、水との化学反応の結果、粘土化したものと言われています。しかし、花見川下流域の、千葉市天戸〜長作付近にはこの粘土層は見られず、かわりに赤土状のローム層が分布しています。この地層は「下末吉ローム層」と呼ばれる、常総粘土層と同時期に降下した火山灰が、乾いた陸上に堆積したものです。このことは、古東京湾の海退後、まだ湿地環境が残っていた他の地域に対して、天戸〜長作周辺地域の乾陸化が先行したことを示しています。しかし、この地域は現在の分水界地域の横戸〜柏井周辺よりも、南に下がった東京湾よりにあります。海抜高度も20m前後で、分水界地域よりも10m近く低くなっています。横戸〜柏井周辺には層状のSIPは分布しません。天戸〜長作周辺に対して、分水界地域の離水時期が遅れたことは明かです。離水は最も高い場所から進むはずなので、当時は長作〜天戸周辺の方が高かったことになります。
 常総粘土と同層準の陸成火山灰層の分布域は、東京湾水系と印旛沼水系との分水界地域よりも東京湾側のより標高の低い地域に、分水界や、海抜高度が30mを越える地域に平行に、2〜3kmの幅で、東京湾北東岸沿いに松戸付近まで追跡できます(上の図;三谷ほか,1996)。これらのことは、当初これらの地域にあった隆起運動の軸が、次第に内陸側に移動したことを示しています。それが現在のようになるのは、常総粘土層堆積期以降、古東京湾地域の離水が完了する5万年前以後のことでしょう。この間に東京湾地域の陥没が急速に進み、この地殻変動に引きずられるようにして、隆起運動の軸が内陸側に移動して、現在の分水界地域が形成されたのではないかと考えられます。


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