4 早押しはどうやって練習するの?

 クイズ研究会のことを言うと、「早押しの練習とかしてるんでしょ?」という質問を、まあぎょうさん受けます。世間の人のイメージはどんなんなんでしょうか。わたしが聞いてみたところに拠れば、早押しのフォームの練習を野球の素振りの様に行なっている、とか、ひたすら早押しの練習のために問題に答えまくっている、とか。

 早押しクイズの問題は、概ね「問題文の最初の方では答えがわからないが、文が進んでいくと答えがしぼりこめる」という性質を持っています。例えばこんな問題があります。

 この問題は、「サリーちゃんですが」の後に誰の名前が読まれるか、そこが答えをしぼりこめる地点になります。このような地点のことをクイズプレーヤーは「ポイント」と呼んでいます。ポイントの位置は問題文の構造によって決まってきます。今のような問題だったら誰にとっても「モコちゃん」がポイントになりますが、次のような問題の場合、解答者によってポイントが変わってきます。

 このような問題の場合、何処で問題文の全容を想像しきれるかが勝負になります。

 で、クイズプレーヤーは、クイズ問題をその構成によって分類し、それぞれについて「ポイント」を研究しています。「研究している」と言っても、1990年頃に出版された「クイズは創造力」(長戸勇人著)という本で著者が研究した分類の方法が、いまも伝統的に使われているようです。

 このような「ポイント」という概念を意識しながら早押しクイズをしまくっていけば、一般の人よりは早押しが速くなります。

 早押しを速くする方法としては、他にクイズプレーヤーの中で常識とされている早押し技術「押しこみ」があります。筆者はこの「テクニック」を使用したことがないので、効果の程は明らかではありません。一般にボタンというものは、ある程度浅く押しても反応しません。そうした「遊び」の部分のぎりぎりまでボタンを押して待っていることを「押しこみ」と呼んでいます。ボタンを押すことに関した「早押しテクニック」は、わたしの知る限りこれだけです。

 冒頭の質問を我々に投げかける一般の人は、おそらく「クイズ王決定戦」的な番組で、派手なフォームの解答者を見たことがあるのでしょう。あの派手なフォームが速く押すのに必要かというと、決してそんなことはない。だから、ああいうフォームの練習をすることは絶対にありません。ただ、テレビ番組の早押しボタンは、少々固めに設定されていて、押しきるのに力が要ることが多いため、ああいうフォームになりやすいのかもしれません。もしくは、つい力が入って強く押してしまうのかも。相手を圧倒するために派手なフォームをする、という説もありますが、効果の程は明らかではありません。

 いずれ、早押しに速くなるためには、「ポイント」を意識しながら早押しクイズに励むことだと思いますが、「ポイント」は早押しを山ほどやっていれば、何となく気づくものです。また、「ポイント」という考え方だけではなく、「先を読む」ことによって「ポイントを早める」というテクニックも必要だし、知識を付けていくことも必要です。そういう意味では、早押しを山ほどやって、早押しクイズに対する「カン」を養っていくことが、一番の早押し強化法です。ウルトラクイズを見ていると、挑戦者の方々がだんだん早押しに強くなっていくのに気づきます。そういうもんです。

 だから、残念ながら、一般の人とちょっとクイズをやりなれている人とでは、早押しをしても全然勝負にならない、と言えるかもしれません。

 

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