4 直前期の学習について

 皆さん、6月10日まであと20日間。漢字検定の学習は進んでいますか? 

 さて、前項で紹介した問題集が一通り終わった段階になる頃だろうと思う。もう一度この問題集をはじめからパラパラ見なおしてみて、自分の理解度を確認してみよう。これからは「分からなかった問題」をもう一回見なおしてみて、今答えられるかを確認する。

 確認するにあたり、「確実に答えられるようになった問題」「いまいち不確実な問題」に分類して印をつけていきたい。例えば「垂蹟」という熟語がある。「蹟」には「セキ」「シャク」2つの読みが在り、どっちがどっちだったか忘れてしまいがちになる。こういうのはノートに書き出して、直前期のチェック用にしたい。

 この時期の学習については、とにかく「テスト3日前以降のチェック用シート作成」という発想を持って欲しい。どうしても覚えられない漢字というのはあるものだ。どうしても覚えられない読みもある。そういうのを直前で頭に詰め込むことは、漢字検定において有用である。大学受験ではやらない方がいいと思うけど。事実、わたしの1級の試験の時には、直前にチェックしたことが4問ほど出たおかげで、なんとか合格点に乗せることができた。直前チェック、という発想は級が上がるごとに大事になってくる。

 さて、今まで学習に一番厄介だと述べてきた「訓読み」について、まだ触れてこなかった。

 「漢字必携」を見ると、ひとつの漢字に訓読みが4〜5つある、なんていうのはざらである。何ぼ程覚えなければいけないのか、と眩暈を覚える数であるが、実際は「この読みは絶対出ないだろうな」と想像される読みもある。「淋」という漢字に「りんびょう」という読みがあるそうだが、出題されるとは絶対に思えない。なお、この読みは「漢検 漢字辞典」には掲載されていない。はっきり言って、「漢字必携」はあまり見ない方が勉強ははかどる。また、元々知っている読みも結構たくさんある。そういうのは覚える必要が無いから、ほっとけばよい。つーことで考えると、全部の読みのうち、新たに覚える必要があるのは半分ちょっとくらいだろうか。

 ひとつひとつ覚えるのも面倒だし、だいいち頭に入らない。だから、次のような学習法をヒントにして頭にいれてみては如何だろうか。

  1. 過去問や問題集を中心にして、何回もチェックする。
  2. 漢字の意味や成り立ち、熟語を使って、何とかうまく引っ掛けて覚える。
  3. 同じ読みの漢字をまとめて覚える。

 1は、ごく普通の勉強法だから多言は要しない。出やすい読みを重点的に学習するのであれば、これが一番である。とはいえ、これだけでは記憶力を刺激したり、覚えようという気を起こさせるのは難しい。自分の中の「覚えようという気持ち」を刺激する学習法をしなければいけない、というのがこのホームページの一番のコンセプトである。が、この学習法しかしないで漢字検定に臨む人が多いのが現状である。

 で、2の勉強法。音読みの勉強の時「熟語」を重視することを提唱したが、熟語の知識が訓読みの学習に役立つ。例えば「綴」という漢字に「集綴」という熟語があることを知れば、「あつめる」という読みがあることを覚えたのと同じだ。このように、「同じ意味の漢字を重ねた熟語」を用いて訓読みを想像したり、漢字の意味を想像したりすることは、漢文の授業でよく行なうテだ。また、意味や成り立ちで覚えられる漢字も多い。

 また、例えば「蕩」という漢字は「うごく」「とろける」「のびやか」「ほしいまま」「みだす」「はらう」「あらう」と、7つも訓読みを有する(「とける」という読みがないことは自分で強く意識しないといけない)。熟語という点で言えば「掃蕩」という熟語で「はらう」という読みが分かる程度。そこで成り立ちを調べて意味を考えると、どうも「ゆれうごく」という基本的な意味があることが分かる。そこから何とか繋げて7つの読みに結びつければよい。この辺はストーリーを自分で考えることに学習上の意義がある。

 古文の授業の時、古文単語を覚える手助けとして「基本的な意味を考える」という作業を行なうことがある。例えば「飽く」という動詞があって、「満足する」「いやになる」という意味がある。正反対の2つの意味だが、両方とも「お腹いっぱい」というイメージで繋がっている。お腹いっぱいだから満足するし、いっぱいになりすぎるとイヤになる。漢字でも、たくさん読みがある漢字を、統括するような「基本的な意味」を見つけることで、記憶の手助けにしたい。

 3は「漢検 漢字辞典」をうまく利用してまとめ覚えをしたいところ。と同じに「同じ読みの漢字は、同じ部首であることが多い」というのをうまく使うことが求められよう。

 とまあ、いろいろ書いてきたが、試験前3週間のこの時期、ここまで来れば大切なのは「問題集を解きまくる」という発想であろう。わたしが使った問題集を以下に挙げるが、その気になれば2週間ほどで全部解き終わることが出きるはずだ(ただし本の題名はわたしが持っているバージョンのものなので、2003年度版といささか違うかもしれない)。

 わたしは以上5冊の問題集をやった。全部買うと5000円に届くが、落ちてもう1回受験するのと同じ値段だから、高いと思わないこと。5冊もやれば絶対に自信がつく。わたしはそのとき手に入った準1級の問題集をほとんど手に入れたのだが、今はもう少し種類が増えてきている。とにかく何冊か買って早く解き終わらせること。で、解き終わった段階からはすぐに「分からなかった問題」のチェックをしまくる。ラスト一週間で何度も確認して、覚え残しを極力無くすようにしよう。

 この時期、正直言って会社とか忙しく、帰ってきてから勉強する時間が取れない人が多いのではないだろうか。わたし自身は1月受験だったため、比較的勉強時間は取れていた(正月はここ2年、漢字の勉強のみだった)。そういう意味で、6月受験には社会人の人にハンディが多い。しかし、せめて1日2時間、問題集に向かって欲しい。なーに、テレビなんか今つまんないんだから、簡単なことだ。あと3週間、酒も止めてしまおう。

 次項、「受かるための考え方と作戦」を述べて、準1級講座を終了。次次項からはいよいよ「1級への道」に進む。

 とにかく、この時期、勉強すればするほどどんどん自信がつくし、漢字の力もつく。がんばってください。

 

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