3 準一級をめざそう3

 さて、まだ漢字検定の勉強に、いまいち気合いが入らないという方も多いはず。でも、今始めないといけない。2か月はゆっくり勉強しよう。あまり勉強せず試験に臨んで失敗する人が多いのは、いい傾向ではない。

 「1」で語った「勉強法」という観点による分類を再掲する。

  1. 結構簡単に覚えられるじゃん。覚えていさえすれば得点源になる! 勉強にも時間がかからない!
    …4「常用漢字の書き換え」、「国字の読み」
  2. 全部覚えるのは大変だが、問題集の当該部分をやることで9割以上の正解率が可能になる! 勉強は楽だ!
    …7「対義語と類義語」、8「故事やことわざの中の漢字の書き取り」、9「四字熟語の書き取りと意味」
  3. そもそも自分の蓄積からすれば6割くらいは正解できる! しかも問題集をやれば9割以上の正解率が可能になる! でも勉強にはちょっと時間がかかる!
    …すべての書き取り問題、音読みの読み取り問題
  4. 蓄積なんかないよ。勉強にもどえらく時間がかかる。問題集の当該部分をやりまくって、やっと8割5分の正解率
    …訓読みの読み取り問題

 Bについては、「意味と共に覚える」という観点を用いれば、比較的頭に残りやすいことを説明した。「頭に残るような勉強をする」という観点を、徹底して身につけて欲しい。

 これをCにも当てはめて学習法を考えてみる。まず、結構厄介なのが「音読み」という奴である。漢字検定2級まで合格してきた人なら、「音読みはそんなに難しくない!」と思っているかもしれない。事実、音読みは元々知っているものや推測で正解できるものが多い。熟語自体を知らなくても、その熟語を構成する語の音読みが一種類であれば、簡単に答えにたどり着ける。例えば「煎迫」という熟語の意味を知らなくても、「煎」の読みは比較的易しいから「せんぱく」という正解にたどり着ける。また、例えば「禦止」という熟語を知らなくても、「禦」の読みが「ぎょ」であることは何となく想像がつくので、「ぎょし」という読みにたどり着ける。

 だから、何も準備をしない状態でも、まあ6〜7割くらいの音読み問題は、難なく正解できるのではないか。

 音読みで問題となるのは、次の2種類の場合である。

  1. 同じ漢字で2種類以上の音読みがある場合
  2. 偏や旁などからは音読みが想像しづらい場合

 まず1について考える。同じ漢字で2種類以上の音読みがある場合、意味によってその読みが使い分けられることがある。例えば「串」という漢字。これには「セン」「カン」の2種類がある。こういう「音の読み分け」については、詳しく説明してくれている本が少ない。そもそも前項で紹介した「字通」という辞書では「カン」という読みしか紹介していない。載ってない辞書があろうとも、出題してしまうのが漢字検定だ(「串殺」という熟語が出たことがある)。

 こういうものは、「漢検 漢字辞典」などを利用して「意味による音の読み分け」を自分で見つけるしかない。辞書をひいたりして考えると、「つらぬく」という意味の場合は「セン」、「慣れる」という意味の場合は「カン」という読み分けになる、と結論付けられる。ところが、これだけではいまいち頭には残りにくい。

 こういうとき、「音が似ている語は、意味が似ている場合が多い」という法則を思い出して欲しい(だから「仮借」という現象が起こるのだ)。すなわち、「つらぬく」という意味で「セン」と読む漢字が、他にないかを探せばよい。そうすると「穿」という字がある(探すときにも「漢検漢字辞典」の(類)マークの所を見ると便利)。「カン」だと「慣」がある。こうすれば、忘れにくい。ただし、こういう例はあまり多くない(時間があったら、そういうのをまとめてみたいのだが)。

 また、例えば「斬」という漢字には「ザン」「サン」の2種類があるが、「サン」と読む熟語は漢検漢字辞典に掲載されていない。なら「ザン」だけ覚えればいーじゃん、ということになる(なお、「サン」という読みは、合格必携には載っていなかった)。「椎」だったら「スイ」「ツイ」の2つの読みがあるが、「スイ」を使う熟語は漢字辞典に載っていない。だとすれば、「ツイ」だけ覚えればいーじゃん。かように実質的にひとつの音だけを覚えればいい漢字は、かなりの数にのぼる。

 もうひとつ付け加えておく。音読みが2種類ある場合、片方が「呉音」と呼ばれる音であることがある。「呉音」は「仏教用語」を表すのに使われる音である。このことを知っておけば、読み分け理解に寄与することがある。

 さて、先の「2 偏や旁などからは音読みが想像しづらい場合」を考えてみよう。既に知っている熟語に使われている字だったら思い出しやすい。「馴致」という熟語を知っていれば「馴」の読みが「ジュン」であることは分かりやすい。そういう意味で、前項の「四字熟語」などの知識を増やしていくことが、音読み攻略の近道である。そういう意味で言えば、意味を覚えやすい熟語を各漢字について1つずつ覚えていけばいい。

 でも、それに該当しないものもたくさんある。とにかく何とかして頭に残すことを考えよう。例えば「禾」という字は「カ」と読む。これだったら「科」という漢字に引っ掛けて覚えればいい。先の「馴」だったら「順」にひっかければいいし、「篠」には「条」(正確に言えば旧字体)が含まれているから「ショウ」に繋げやすい。

 それでも覚えにくい「允」のようなものもある。こういうのは数少ないから、ノートか何かに書き写し、必死こいて丸暗記するっきゃない(熟語なら「允許」を覚えると読みと意味が一発で覚えられる)。

 とにかく、音読みはどんなに馴染みのない語でも出題されるから、きっちりした学習が必要である。この段階で

 をはじめからやっていきながら、音読みを身につけていきたい。勉強をし漏らさないという点では、この本に勝るものは今のところ存在しない。「漢検漢和辞典」か「合格捷径」を併用し、とにかく頭に残る様に学習しよう。同時に書き取りと訓読みも学習していくことになるが、これらに付いてはまた別項で述べる。

 とにかく、5月後半までかかってこの問題集を完成させること。今から1日ステップ1つ分熟す(こなす)ことは、それほど難しくはないだろう。飽きたら他の問題集をやってみてもいいだろう。

 

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