11 2級までのための部首講座 実習篇1
- おいしい情報が多いので、転載などを禁じます。とか言いつつ3年もほっぽらかしてました。
- この頁で「シ」は「さんずい」を指します。「イ」は「にんべん」を指します。「才」は「てへん」です。
A 部首の具体的見分け方
漢字検定の部首の問題は、ひたすら同じ問題を繰り返し出題している状況にある。よって、頻出の字をしっかり覚えさえすれば、必ず合格点には乗る。以下、平成14〜15年度に出題された字の覚え方を説明する。前項の内容をまとめ、学習の方向性を指し示すと次の通りである。
- 漢字そのものが部首になっている場合は、それが部首(これは暗記するしかない)。
- 「音符」で覚えられる字はそれで覚える。
- 「音符」が分かりにくくても、「意符」が分かりやすい字の場合は、それが部首。
- その他のものを何とかしてこじつける。
漢字検定の部首の問題は、同じ問題を繰り返し出題している状況にある。よって、頻出の字をしっかり覚えさえすれば、必ず合格点には乗る。以下、頻出漢字を中心にして、上記の順に具体的に部首を覚える方法を説明する。
B 漢字そのものが部首になっているもの
まず、何はなくとも「漢字そのものが部首になっている場合」を片付ける必要がある。列挙すれば以下の通り。
一・乙・二・人・入・八・力・十・又・口・土・士・夕・大・女・子・寸・小・山・川・工・己・干・弓・心・戸・手・支・文・斗・斤・方・日・月・木・欠・止・比・毛・氏・水・火・父・片・牛・犬・玄・玉・王・甘・生・用・田・白・皮・皿・目・矛・矢・石・示・穴・立・竹・米・糸・缶・羊・羽・耳・肉・自・至・舌・舟・色・虫・血・行・衣・西・見・臣・角・言・谷・豆・貝・赤・走・足・身・車・辛・里・麦・金・長・門・雨・青・非・斉・面・革・音・風・飛・食・首・香・馬・骨・高・鬼・竜・魚・鳥・麻・黄・黒・歯・鼓・鼻
以上のうち、平成14〜15年度に出題されたものを赤くしておいた。覚え方は特にない。ただ、これらの字を構成要素にする漢字を一字でも知っておけば頭に残るかも知れない。また、これらのうち「甘」は「甚」の部首として重要。「至」は「致」の部首。「至」は一見音符に見えるので要注意。この字は「至る」という意味をモロに受けている。
あと、「舌」が「舎」「舗」の部首だなんてサギに近い。が、旧字体に合わせてそうしている。どうやら漢字検定では、旧字体に合わせて作った部首(つまり新字体から想像できないもの)は、出題しないことにしているように思う(他に「巻」など)。つーことは、折角勉強しても、絶対に出題されない漢字というのもあることになる。出題するかどうかの基準は公表されているわけではないから、甚だ厄介である。だから、自分で予想問題を作るより、過去問を数年分こなすのが合格の近道なのである。
C 音符で考えられる漢字
次に行く。平成14〜15年度出題分から、音符で覚えられるものを列挙する。ただし、正確さよりも覚えやすさを意識して分類しているので、中には「本当は音符じゃないのに」というのも含んでいる。「会意文字と形声文字とをごっちゃにするな!」という意見も聞こえてくるが、あながち間違っているわけではないので、先ずこれで覚えよう。会意と形声の区別なんかその後で充分。
単に羅列してあるだけだから、必要に応じて「検索」をかけてみて欲しい。
- 「剛(りっとう)」→「岡」が「コウ」「ゴウ」と読む音符。「鋼(金)」「綱(糸)」などと絡めれば簡単。
- 「剖(りっとう)」「賠(貝)」→「倍」からにんべんを取ったものが「バイ」「ボウ」「ブ」と読む音符。「倍(イ)」「培(土)」「陪(こざとへん)」「部(おおざと)」など、たくさんある。
- 「勘(力)」→「甚」を「カン」と読む音符と考え、「堪(土)」とつなげる。
- 「叙(又)」→「余」が「ジョ」「シャ」「ト」と読む音符。「徐(彳)」「除(こざとへん)」「斜(斗)」「途(しんにゅう)」と結びつけよう。
- 「唇(口)」→「辰」が「シン」と読む音符。「娠(女)」「振(才)」「震(雨)」など。
- 「暮(日)」「墓(土)」→一気に覚えよう。「莫」が「ボ」「モ」「バク」「マク」と読む音符。「募(力)」「慕(したごころ)」「幕(巾)」も出るかもよ。「模(木)」「膜(にくづき)」「漠(シ)」など。
- 「塾(土)」→「孰」が「ジュク」と読む音符。「熟(火)」とつなげよ。
- 「奨(大)」→「将」が音符。
- 「妄(女)」→「亡」が「ボウ」「モウ」「コウ」と読む音符。「忘(心)」「忙(りっしんべん)」「盲(目)」。
- 「媒(女)」→「某」が「バイ」「ボウ」と読む音符。「謀(言)」と一緒に。
- 「幣(巾)」「弊(廾)」→「幣」の上側が「ヘイ」「ベツ」と読む音符。。上級者なら「一瞥」「遮蔽」「鼈甲」「斃死」など沢山覚えること。
- 「彩(彡)」→「采」が「サイ」と読む音符。「菜(くさかんむり)」「採(才)」との関連で簡単。
- 「患(心)」→「串」が「カン」と読む音符。これはわかりにくい。むしろ意符から「心を患う」とした方が覚えやすいかも。なお、「串」には「カン」「セン」という読みがあるが、それぞれ「貫」「穿」と意味が通じる、てなことは準1級頻出。
- 「愁(心)」→「秋」が「シュウ」と読む音符なのは簡単。
- 「懲(心)」→「徴」は「チョウ」と読みますね。
- 「懸(心)」→「縣」は「ケン」と読む音符。これは「県」の旧字体。分かりにくい人は、「心に懸ける」とでもしていただければ。
- 「房(戸)」「扉(戸)」→「方」が「ホウ」「ボウ」と読む音符。「非」は「ヒ」「ハイ」と読む音符。今更ながら「門扉(もんぴ)」の読みは大丈夫ですね。
- 「拒(才)」→「巨」は「キョ」と読む音符。単純ですな。
- 「掌(手)」→「尚」が「ショウ」「ジョウ」「ドウ」と読む音符。「賞(貝)」「常(巾)」「堂(土)」「党(儿)」はこの2年出ていないが、出てもいいように覚えよう。
- 「擬(才)」→「疑」が「ギ」「ギョウ」と読む音符。「凝(にすい)」。
- 「架(木)」→「加」という部分に気づけば簡単。「賀(貝)」
- 「栽(木)」→「裁」から「衣」を取ったものが「サイ」と読む音符。「裁(衣)」「載(車)」とつなげて覚えればよい。
- 「漆(シ)」→「漆」の右側が「シツ」と読む音符。表外の「膝」とつなげると楽。
- 「摩(手)」「魔(鬼)」「磨(石)」→「麻」が「マ」と読む音符。「麻」に絡む字は実に出題頻度が高い。「摩」はこの2年で4回も出ている。
- 「窃(穴)」→「切」が音符なのはすぐ分かり増すな。「穴」に絡む字もよく出る。
- 「競(立)」→「兄」が「キョウ」「ケイ」と読む音符。「況(シ)」も。
- 「粋(米)」→「卆」が「スイ」「サイ」と読む音符。旧字体では「卒」と書かれる。「枠(木)」「酔(酉)」「砕(石)」。
- 「腐(肉)」→「付」が「フ」と読む音符。「附(こざとへん)」「符(竹)」「府(まだれ)」など。
- 「虞(虍)」→「呉」が「ゴ」「グ」と読む音符。他に「誤(言)」「娯(女)」。なお「虞」の「グ」という読みは常用漢字外。
- 「衝(行)」→「重」が「ショウ」「シュ」「ドウ」と読む音符。「種(禾)」「動(力)」。
- 「裏(衣)」「衷(衣)」「褒(衣)」→「里」「中」「保」がそれぞれ音符なのが分かるかどうか。なお、「哀」は「衣」が音符扱いされて、「口」を部首としていることを補足しておく。
- 「誓(言)」→「析」が「セキ」「セイ」「テツ」などと読む音符。「哲(口)」「逝(しんにゅう)」もある。
- 「貢(貝)」→「工」が「コウ」「クウ」と読む音符。「攻(攵)」「項(頁)」「功(力)」「空(穴)」など。ただし、次項にも注意。
- 「酌(酉)」→「勺」は「シャク」「テキ」「ヤク」「チョウ」などと読む音符。「的(白)」「約(糸)」「釣(金)」
- 「酬(酉)」→「州」で「シュウ」と読むわけで。
- 「靴(革)」→「化」が「カ」と読む音符。「花(くさかんむり)」「貨(貝)」
- 「頑(頁)」→「元」が「ガン」「カン」と読む音符。「完(うかんむり)」も。
- 「頒(頁)」→「分」が「フン」「ハン」「ヒン」「ボン」と読む音符。「粉(米)」「粉(糸)」「雰(雨)」「貧(貝)」「盆(皿)」など多数。
- 「駄(馬)」→「太」が「ダ」と読む音符。
- 「魂(鬼)」→「云」が「ウン」「コン」と読む音符。「雲(雨)」。「鬼」という部首は、霊的なものに関する字を表すことを知っていれば簡単。
- 「鶏(鳥)」→「渓」の右側が「ケイ」と読む音符。「渓(シ)」。つーか、「鶏」の部首は「鳥」になるに決まってるべぇや。
- 「劾(力)」→「亥」が「ガイ」「カク」「コク」と読む音符。「該(言)」「核(木)」「刻(りっとう)」。
- 「勅(力)」→「束」が「ソク」「チョク」と読む音符。「速(しんにゅう)」に結びつけよ。
- 「塑(土)」→「朔」が「ソ」と読む音符。上級の「遡(さかのぼる)」と結びつけたい。なお、「土」が下に来ている字は、「至」を除きすべて部首は「土」になる。よく出るので覚えておくと便利。
- 「宵(うかんむり)」→「肖」が「ショウ」「サク」と読む音符。「消(シ)」「硝(石)」「削(りっとう)」につなげましょう。
- 「崇(山)」→「宗」が「ソウ」「スウ」と読む音符っぽいでしょ?
- 「恭(したごころ)」→「共」が「キョウ」「コウ」と読む音符。「供(イ)」「洪(シ)」。「恭」は16年度第3回にも出題された。
- 「款(欠)」→「款」の左側が「カン」「レイ」と読む音符。「隷(隶)」とつなげよう。この形を「字通」(白川静)は「崇」の変形とし、2字を会意と取っているが、「漢字の成立ち辞典」(加納喜光・東京堂出版)は「奈」の正字と見ている。どっちにしても、2字を結びつけて同じ音符と考えるのが楽。
- 「殉(歹)」→「旬」が「ジュン」と読むわな。
- 「瓶(瓦)」「塀(土)」→「并」が「ヘイ」「ビン」と読む音符。「併(イ)」とつなげれば秒殺。なお「屏」という字から「塀」に行く。
- 「碁(石)」→「其」が「キ」「ゴ」「ギ」と読む音符。「基(土)」とつなげよ。他に「旗(方)」「棋(木)」「期(月)」「欺(欠)」など。
- 「薫(くさかんむり)」→「薫」から草冠を除いたものは「クン」と読む音符。「勲(力)」とつなげて覚える。
- 「豪(豕)」→上の部分が「高」の変形。「高」は「コウ」「ゴウ」と読む音符。
- 「雇(隹)」→「戸」が「コ」と読む音符。
- 「督(目)」→「叔」が「ジャク」「シュク」「トク」と読む音符。「寂(うかんむり)」「淑(シ)」と一緒に。
- 「耗(耒)」→「毛」は「モウ」と読む音符。
- 「翁(羽)」→「公」を「ショウ」「オウ」と読む音符ととらえる。「松(木)」「訟(言)」とつなげよう。
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平成14〜15年度に出題された179字のうち、「音符」という発想で部首を考えられる上述に字は66字(ちなみに漢字そのものが部首になっている字は11字出題されている)。3分の1強の字がこの発想で理解できた。さてここで、今紹介しなかったが、覚えておいた方がよいと思うものを挙げておく。もしかしたら漢字検定協会で「出題しない」と決めている字もあるかも知れないが、レベルアップを図るという意味で。余裕がなければ見なくてもOK。
- 「騰(馬)」「謄(言)」「勝(力)」→「騰」から馬を除いたものが「トウ」「ショウ」と読む音符。これは是非知っておこう。
- 「養(食)」→「羊」が「ヨウ」「ショウ」と読む音符。「洋(シ)」「詳(言)」「祥(ネ)」「様(木・下にある水は、旧字体では永)」など。
- 「義(羊)」→「我」が「ガ」と読む音符。「餓(食)」など。
- 「改(攵)」→「己」が「キ」「カイ」と読む音符。なお、「己」を部首とする字は「己」自身だけ。「己は己、自分は自分」とか言って覚えては如何?
- 「問(口)」「聞(耳)」→「門」が「モン」と読む音符。一見「もんがまえ」っぽい漢字は、音読みが「もん」であるか否かで部首を見分ける。
- 「在」→なんと「才」が「ザイ」と読む音符。元々「才+士(『字通』より)」なので、「士」を部首にしたいところだが、形からして「土」を部首にしているようだ。
- 「新(斤)」「親(見)」→「新」の右側が「シン」と読む音符。「辛」+「木」の変形と考えると分かりやすい。
- 「触(角)」「独(けものへん)」→本来は「蜀」(略形は「虫」)を「ショク」「ドク」「ダク」と読む音符とする。「蜀」の形は常用漢字に「濁(シ)」のみ残っている。「触」「独」は旧字体「觸」「獨」からの変形。
- 「懇(心)」「墾(土)」→「懇」の上側が「コン」と読む音符。下に「土」がある字は、必ず部首は「土」。
- 「将(寸)」→「爿」が「ショウ」「ソウ」「ジョウ」と読む音符。「壮(士)」「状(犬)」と同系統。
- 「委(女)」「和(口)」→「禾」が「イ」「ワ」と読む音符。を一緒に覚えよう。なお「禾」は本来「カ」と読む音符なので(「禾本科」という語がある)、「科」の部首も「斗」ならよいのだが、会意文字と解して「禾」を部首にしている。めんどくさい。「禾」が左側にあるものについては、「和」「利」を例外として覚えるほうがいいかもしれない。暗記法は「和田アキ子の口、鋭利な刀(りっとう)」とか。ちょっと無理あるか。
- 「協(十)」→「協」の右側が「キョウ」と読む音符。「脅(肉)」と一緒に。
- 「勇(力)」→「甬(「踊」の右側)」が「ヨウ」「ツウ」「ユウ」と読む音符。「勇」は上側が「甬」であり、部首は「力」となる。
- 「聖(耳)」→「呈」が「テイ」「セイ」と読む音符。「程(禾)」など。
- 「乾(乙)」「幹(干)」→「乾」から「乙」をとったものと、「幹」から「干」をとったものは、ともに「カン」と読む同じ音符である。特に「幹」の音符を「干」と勘違いしないように。
- 「学(子)」「覚(見)」→「学」のかんむりが「ガク」「カク」と読む音符。この2字を結びつけると覚えやすい。旧字体「學」「覺」の上の部分が共通している。「ツ」という部首ではないから注意しよう(「ツ」が部首の字は、どうも出題されないようだ)。なお「栄」は旧字体「榮」なので別。読みも違うし。
- 「款(欠)」「隷(隶)」→「款」の左側が「カン」「レイ」と読む音符。2字を結びつけよ。なお、この形を「字通」(白川静)は「崇」の変形とし、2字を会意と取っているが、「漢字の成立ち辞典」(加納喜光・東京堂出版)は「奈」の正字と見ている。どっちにしても、2字を結びつけて同じ政府と考えるのが楽。
- 「暦(日)」「歴(止)」→「暦」から「日」を取ったものが「レキ」と読む音符。
この辺まで読んでくれば、ここに挙げていない漢字についても、音符から部首を想像することができるようになってきているはずである。要は、同じ部分を持った漢字を見つけられるかが、勝負だということになる。平成17年1月出題では、例えば「崎」が出題されている。この部首、簡単に分かるでしょう?
ということで次のページでは、平成14〜15年度出題分のうち、残っている100字程度を「意味から分かるもの」「なんとかこじつけるもの」などに分けて、何とか覚えやすくする方法を紹介する。
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