1 漢字検定とは?

 さて、早速漢字検定の具体的な勉強法を提案したいのだが、その前にひとつ確認しておこう。そもそも「漢字検定」とは、いかなる力を試す試験なのだろうか。

 こんな話からしてみよう。漢字検定は、絶対に年配の方のほうが合格しやすいと思う。なぜなら、昔から使われている言葉をたくさん知っているからである。準一級以上の試験範囲では、この「言葉を知っていること」が合格に大きな力を発揮する。

一例を挙げよう。平成16年度準1級第1回の問題。読みで次のような問題が出題されている。

l        坐らにして天下の大勢を知る。

l        こっそり賄いを取っていた。

l        蟻宛らに働いた。

 この「坐ら」「賄い」「宛ら」を何と読むか、若い人にはいささか難しいのではないか。「いながらにして」「まいない」「○○さながら」という言葉を知らないと、準1級の試験勉強は相当しんどいものになってしまう。これ以外にも常用漢字の表外読みとして

l        条約案の起草に与る。

l        既に十年を閲した。

l        叢に集く虫の音に聴き入る。

 「与る」は「あずかる」と読む。この語に「関与する」という意味があることを知らないと、この読みは想像すらつかないだろう。「閲した」なんて「三千の俳句を閲し」などという正岡子規の俳句が浮かぶと簡単。いささか厳しいけど。「集く」に至っては「すだく」という言葉が最近全く使われない。

 このように見ると、「どれほど漢字を知っているか」も大切な要素だが、「どれほど言葉を知っているか」も相当大切な要素であることが分かる。だから、漢字検定合格を目指す場合、自分の日本語力がどの辺のレベルにあるのかを見極めなければならない。そのレベルによって、漢字検定合格までの勉強量も、相当違ってくるからである。

 準1級を何度も不合格になった人を、周りで何人も知っている。逆に一発で合格した人も知っている(ちなみに、国語教師でも受かりにくい人と一発合格の人、両方のパターンが存在する)。この違いはその人の「日本語力」にこそある。漢字検定合格に必要なのは「漢字を覚えること」以上に「言葉を知ること」なのである。だから、読書を多くしてきた人は(特に昔の本を読んだ人は)著しく有利になる。

 てことは、「漢字検定の勉強のために、読書をすべきか?」。いや、そうではない。漢字検定の勉強を使って「日本語力」を上げていけばいいのである。そこで日本語力に自信を持ち、弾みをつけて様々な本を読んでいけばよいではないか。私はよく「国語の成績を上げるために読書をすべきですか?」と質問を受ける。もしそうなら国語の授業はずーっと読書にしますよ。バランスの良い言語技術能力を育成するのが国語の授業の目的である。同じように「漢字検定の勉強」も、バランスの良い日本語力を付ける良い方法なのである。

 ということで、日本語力を上げつつ、漢字検定合格を目指すための四神を次から示す。

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