9 アタック25体験記 その2

10月6日(土)

 この辺の頃は、6年前に録画しておいた半年分くらいのアタック25を、暇さえあれば見ていた。これは問題を聞いて答えを速やかに思い出す、という作業に関する一種のリハビリのためである。見覚えの在る人がたくさん出場していて、これがなかなか楽しい。9月30日放送分に登場していた緑の女性は、6年前も出場していて、そのときもやはり負けていることや、復活ウルトラで奇襲クイズ敗者の女性は、景山真由美さんという方に負けていることとか、そういう楽しみも在る。我が先輩・上野裕之さんや秋元雅史さんの回も見た。先輩方が登場している会はすべてクイズ研究会大会だから、押すタイミングが異様に早い。こんなところで早押しをやったら、解答権を得られることなく終わってしまうのではないか。もしくはときたま含まれるフリ付き問題に引っかかったり。

 ま、今回はそういう大会ではないと思うので、そこそこ安心していられる。見ているうちに、アタック25に関するいろいろなことが見えてくる。まず、2枚目は8番を取る人が圧倒的に多いということ。次が18番。それがどうした。クイズプレーヤーたちの中では「何としても3枚目を取るべし」というセオリーがあるようだが、前半戦をラクに進めるためには、確かに3番や23番に入っておきたい気がする。3番に自分の色がある、という状況は、前半戦で角が取れるかが決まってしまう局面になったとき、著しく有利(=絶対に角を取る勝負に加われる)になるからである。

 たくさん見ているうちに、何となく感じたのは次のようなセオリーである。当たり前だよ、と思われるかもしれないが、再確認しておくのも悪くない。

 ひとつ具体例を挙げておこう。どうしても考えなくてはならない局面。例えば、下図のような状況であなたは赤の席に座っているとする。

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

 この場面において問題が読みきられ、誰も押そうとしない状況となった。あなたは問題の答えを知っている。さあ、どうするか。実に微妙な場面である。緑が正解してくれれば次の問題が「全員角に入れるチャンス」になって面白いはずなのだが、緑がせこくてそうさせてくれない。こんなとき正解してしまうと、何処を取っても次の問題において「自分以外の人は角に入れるが、自分だけは絶対に入れない」になってしまう。しかし、知っている問題はできるかぎり正解を重ねたい。何ぼでも正解して勢いをつけたいからである。アタック25では、正解している人が乗りに乗って連続正解する、ということが往々にしてあるし、後半戦を考えたとき「強いかも」と思わせていたほうが得だったりするからである。これはセオリー3にも絡む考え方だ。

 

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

 ただ、このときは、実戦ではよく見られるが間違っても2番とかを取ってはならない。ここはセオリー2に従って7番を取る(左図)。そうすれば、1問しのぐだけで緑が角に入るチャンスを無くせる(左下図)。青か白が1に入ったら次は9番で、他の人の角に入るチャンスを作る(セオリー2)。角を分散させる作戦である。もちろん2〜4のラインを自分で狙うのは言うまでも無い。緑が1に入ったら次に2番で様子を見る。その後17から9に進んで場を荒らす。場が荒れればアタックチャンス後の勝負に持ちこめる(セオリー3)。 

 

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

 19に自分が入った後について。緑が次に何処へ入ってもその次に赤は角を取るチャンスとなる。しかし、この場面から1に白か青が入ると、実に難しい。どうやってもその人が次25に入れるから。だから、ここは勝負どころとなる。でもどっちにしても、十字架型が出来たこと自体で「勝負どころ」になっているので、覚悟してアタックチャンス後に勝負をかけるしかない。切りこみ隊長として勝負を荒れさせるしかない。本当に強い人は、わざと勝負を荒れさせるのだ、ということを羽生善治関係の本で読んだことがある。一般の人大会にわたしが出る場合は、そうやって場を荒れさせてこそ勝ち甲斐があるというものだ。

 他にもいろいろ考えたが、あんまり考えすぎるのも良くないので、1996年6月にTQCの同級生・本藤氏が出演した会を見た。この会もクイズ研究会大会であり、赤:京都大学の田中大典さん、緑:北海道大学の石持義久さん、白:大阪大学の田中耕一郎さん、青:本藤氏の4人だった。よく知らないのだが、他の3人は強豪予備軍として当時名が通っていたらしい。ちなみにわたしが唯一応援に行ったアタックでもある。混戦だったが、最後は本藤氏が勝利を収めた。

 本藤氏の勝因のひとつは「クイズ研究会員が苦手とするような問題を得意分野としていること」。早押しも別に早くなく、正解した8問のうち、押し勝った問題は2問。他はことごとく押し負けている。特にベタは全然押し負け。勝負を決めた問題は「ホワイトカカオ、グリーンペパーミント」で押して「グラスホッパー」。強烈な押しに、後ろで見ていてえらいびっくりしたことをよく覚えている。

 勝因のもう一つは「遠慮無く勝負をかけてくること」であろう。「SMAPのキムタクならぬプロ野球のキムタクのいる球団は?」という問題を、自信持って「福岡ダイエーホークス」と誤答した。それは「佐々木重樹」がいた球団である。自分だけが角を取るチャンスのときは「太陽系の9つの惑星の中で、衛星を持っていないのは2つ」で押し、「金星」で正解。ちなみに、数か月後、全く同じ問題で「水星」が正解になっていたからおっかない。この押しが他の人のミスをひたすら誘発しまくる結果となったから面白いもんだ。これも「場を荒らす」という意味において有用な戦術と思われる。

 もちろん、問題のめぐり合わせは、他の解答者の自爆なども大きいけれど、主に今言った2つのことが絡んでいるはずだ。パネルの取り方、という意味ではあまり参考にならなかったが、とにかく「勝負をしまくる」という姿勢を植え付けてくれる、彼一番の名勝負だった。そんな彼から来たメールは「角を取るのに躊躇は無用」。いい言葉だ。

10月7日(日)

 アタック25放送。社会科の高校教諭(というのは制度上存在しないのだが)が出演したこともあり、社会科関係(特に歴史)の出題が多かった。やはりアタックチャンス後の勝負が大切だということが際立った。映画問題は「陰陽師」の「野村萬斎」が答え。こういう問題なら助かるのだが。ちょっと嫌だったのが「10月11日問題」。確かにスタッフの人は「放送部周辺1週間くらいのことをチェックしてください」と言っていたが、4日後なんてまた面倒くさい。暇だったら確認するけど、資格試験の勉強があるしなー。

 この後「キネマ旬報」10月下旬号から際立った映画をチェックし、日刊スポーツを1週間分読む。11月6日の松田優作十三回忌は気になるところだ。「モーニング娘。」のシングルも10月下旬発売だから、一応名前を覚えておくか。全然好きじゃないけど、いつだったか新リーダーの名前が出ていたし。

 さて、この日、TQCの先輩・秋元さんからメールがきた。CDだとスガシカオかドゥー・アズ・インフィニティーあたりが出題されそう、とのこと。早速最新アルバムのタイトルを覚える。

10月11日(木)

 このころはクイズのことを全く考えず、仕事ばかりしていた。そんなこの日に入ったニュース。日本人として10人目のノーベル賞受賞者が決まったらしい。また覚えることが増えた。化学賞3人目、福井謙一、名古屋大学、京都大学出身、などなど。とはいえ、この手の時事問題はすぐ色褪せてしまうことが多いから、出題されにくい。むしろ12月10日の受賞日近く、もしくは年間チャンピオン決定戦のときに出題されるネタ。

 

BACK