14 アタック25体験記 その7 放送後のこと

11月4日(日)

 いよいよ放送日。放送がある旨を伝えたのは、基本的に

 である。自分としては結果を知っているし、だいたいどんな感じのテレビ映りになっているかも想像がついている。またアタック25は基本的に編集が少ないため、自分の発言はほとんどすべて放送されると考えて良い。ただ、何処の問題だったか忘れたが、途中で児玉さんが「これからどう戦いますか?」みたいなインタビューをしてきたことがあったと思う。実に答えづらい質問だ。「えーと、次の問題くらいを正解できれば、○番に入ってアタックチャンスの布石とできるので、云々云々」などと、ベチャベチャ喋るのは絶対に違う。困る質問である。わたしはピンチの頃に聞かれたため、「ちょっと厳しいですが、がんばります」的な発言をしたにとどめたと思う。こういうときにあまり喋るのはわたしのキャラではない。

 この日はマラソンだか駅伝だかが放送されていたため、アタック25は2時15分から始まることになっている。そのことに気づいたのは放送日その日だった。世間には「1時25分から放送されるから」と言って触れまわってしまったのだが、大失敗である。日刊スポーツのラテ欄では「途中沈黙」の4字が記されている。誰のことを言っているのか、このときは俄かに分からなかった。もしかしたらわたしかも、と思ったが、まぁ勝った佐藤さんのことを言っているのだろう。

 で、いよいよ放送が始まった。概ね予想通りの雰囲気だったが、思ったより自分の顔がたくさん写されていたことに気がついた。ようけ押し負けているからだろう。また、6年前の放送に比べ、実に表情豊かになっているとも思った。教員をやるようになってから明らかに表情は豊かになったのだが、ここまで露骨に表情を出し、しかもそれほど痛くなっていないことは幸いである。ただ、ちょっとにこにこし過ぎの感もある。だから、一部薄気味悪い雰囲気もあったが、放送上不穏当と呼べる範囲にはなっていない、と主観的に判断するに足る程度であったことは幸甚の至りだった。

 あっという間に放送が終わった。ビデオを止め、チャンネルをひねるといきなりウチの学校のA先生が映っていた。この日はラグビー花園予選の秋田県決勝の日で、A先生はその主審をしていたのである。同じ時間に別の番組で、2人の教員がテレビに映る、というのは本校始まって以来だろう。

 放送が終わったからといって、ジャンジャン電話がかかって来たり、ということも別に無かった。アタック25を見ている人物など、そんなたいそうな数ではないだろう。このときはそう思っていた。

 夕方5時頃、近くのジャスコに買い物に出かけた。いつものようにレジに並ぶと、いきなり店員が小声で「あの、テレビ出てましたよね」と話し掛けてきた。こういうとき、どう反応していいか困ってしまう。「いやー、そうなんですよ、見られてましたか、あは、はは、ははははははははははは」という筒井康隆調は明らかに変だ。かといって、あまりにも迷惑そうな顔をするのも客商売(=教諭)としておかしい。こういう悩みにこのあとも何度か悩まされることになるのだが、ここでは「あぁ、はは、えぇ、そうなんです」位でごまかした。話を深追いしてこない相手には、この程度でごまかすのが良いのだろうか。

11月5日(月)

 学校に行くと、教職員・生徒たちからしこたま話し掛けられた。とにかくアタック25をよく見ているのである。おそらく純粋に見ていた人物は少ないはずだが、よせばいいのにその連中が、見ていないだろう友人・知人に電話で知らせたりしたらしいのだ。もっとも、クラスの連中には少し情報を流したのだが、そこからジャンジャン知人間のネットワークが広がったということである。これは教職員間でも同様であったようで、親戚や知り合いが「大館鳳鳴高校の先生が今テレビに出てるよ」という電話を掛けてきたので、テレビをひねったら(テレビはひねらないが)果たしてわたしが映っていた、ということだったようである。とにかく携帯電話の普及が、こんな不幸な結果を巻き起こしているのだ。「烏合のシュー」を増やしている機械など嫌いである。だからわたしはいまだに携帯を持っていない。(注:この翌年に購入)

 とはいえ、やはり「見たよ」といってもらうのはそこそこ嬉しいものである。自分が見られていることより、「クイズ番組の面白さ」に触れてもらえたことが嬉しいのである。視聴者に思い入れを感じながら番組を見るという、クイズ番組の伝統的な楽しみ方が、はからずも再現された格好になっているのである。

 さて、話し掛けられた内容は、大きく分けて次のような感じに分けられる。

 

11月11日(日)

 自分の時事に関する予想問題が当たっていたかを確認したくて、アタック25を見た。すると映画の予想問題「ソードフィッシュ」、CDの予想問題「スガシカオ」が出題された。秋元さんは予想したCD問題が2問とも当たったことになる。すごい。

 それだけではない。11月4日問題として用意しておいた「ツタンカーメン」まで出題されたのである。これはびっくりした。つまり、「○月△日問題」は余ったら一般問題にまわされる、ということだ。これは発見だった。それがどうした、という感じだが。

 さてこの回、パネルの取り方という点で気になった個所が1箇所ある。余談ながら紹介しよう。

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 青が2問連続正解した後にこの場面となった。ここで正解したのは緑。何処に入るべきか。

 とにかく緑は角に入れそうに無い。だから考えることは「白が1〜5のラインを作るのを阻止する」という1点のみだと思う。とすると、取るパネルは9番ということになる。青が5に入るのをアシストする形になるが、1〜5が白であるより遥かに良い。

 ところが、ここで緑は7番に入った。これは白にアシストしているようなもの。大チョンボだと思うのだがどうなんだろう。意見のある方は教えていただきたい。わたしもよく分からん。

 

11月22日(木)

 推薦入試の出願が一段落し、学年部の飲み会が催された。場所は比内鶏ときりたんぽで有名な某店。この日、他の先生方が冗談(だと思うのだが)で「酒の肴として、テレビとビデオがある部屋を借りて、アタック25をみんなで見よう」という話をしていた。そんなのはこっばずかしい以外の何者でもない。しかしこのお店にはそういう設備が無いから、てっきりこの話は立ち消えになったと思っていた。

 ところが、幹事は店員に「ビデオ機材ありますか?」と聞き出した。普通そんなことするかしら。こういうことするから巷間「教諭は非常識だ」と言われるのに。しかるに店員は別に不快そうな顔をせず「あ、ありますよ」と答えた。その後5分ほど経って、うんせ、うんせとテレビデオを運んできた。信じられない。ということで「アタック25」鑑賞会と相成った。

 もはやメートルの上がった人々の群れ、こっちの予想通りの所で声が上がる。まず私の最初の答えのところ、それから自己紹介のところ、漢字の問題、誤答、コーデリア、アタックチャンス、三連答、誤答、などなど。

 人前で自分の姿を見るのは昔から嫌だったが、世間の人がどのようにクイズ番組を見ているのか、という意味では勉強になった。やはり分かりやすいところ、感情移入しやすいところで素直に楽しむんだなあ。わたしだったら「なぜこんな早押しができるんだろう」「三連答の布石は何処にあったのか」「パネルのとり方は正しかったか」という分析になるところである。当たり前といえば当たり前なのだが、一般の人とわたしとでは、クイズ番組の見方は著しく違う。それはちょうど、手品のタネが分かっている人と分からない人とでは、手品の見方が違うように。

 この体験記は、手品のタネが分かっている立場として記したものである。ということで、長かったアタック体験記もオシマイ。長い言い訳でした。悪しからず。

 

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