12 3択問題を作るU
はじめに、前項のまとめにより、わたしなりの「3択問題の理想像」を採録しておく。
これらの中でわたしが一番重視しているのは「解答者が考えようという気持ちが起こるような問題」という要素である。誰にでも考えるチャンスを与える問題のほうが、面白いに決まっているからだ。これを今後考える準備とする。
3択問題の作り方で、大切なことは「ネタ」と「選択肢」だと述べた。「選択肢」を作るに当たって、「悩ましいとき」と「悩まなくてもできるとき」があることは、そこそこ3択問題を作ってみれば分かる。「悩まなくてもできるとき」というのは、例えば次のような問題のとき。
1番の問題は、問題の設定自体の勝利。答えを「何年代?」にしたのは我ながらうまい。「20年代」「30年代」「40年代」というそれぞれの時代には、解答者がイメージを持ちやすいからだ。「うーん、いつごろだろうなぁ」と、考える気持ちが起こる(と思う)。3択問題では、いろいろな方法を使って「考えようという気持ちを起こさせる」ことが大切なんである(でなきゃ面白くないから)。しかも答えはそのイメージを多少裏切るものであり(と思うんだが)、実によくできた問題である。「ネタ」も大事だが、その「処理の仕方」、とりわけ「何を答えにするか」を選ぶのが大事。
よく3択問題だと細かい数字を選択肢にする場合が見られる。その数字に意味がある場合は(業界の人なら御馴染みの数字である場合、語呂合わせがある場合、など)いいのだが、数字を細かくしすぎることで考える気持ちを失わせてしまっている場合もあることを考えるべきだと思う。
2番の問題は歌詞の途中のある部分が思い浮かべば正解はできる。歌を知らないとつらいが、英語の常識としてAかBが答えだろうなぁ、というところまでは考えが及ぶと思うので、あとは解答者が悩んでくれると思う。類題に「『Stand by me』で」というのもあるが、いろいろな理由から「Let it be」の方が面白い。
こんなふうに、3つで組になっているもののうち1つを答えにする場合は楽。「少年隊のメンバーのうち」とか。できるだけメジャーな3つで行く方が悩ましい(つーか、悩みたくなる)。これを「幕末三舟のうち」とか「寛政の三奇人のうち」とかしてしまうと、考えたくなくなる。後者については私自身詳しいので、わたしだけが面白みを感じる問題になってしまい、出題には適さない。
また、別に3つで組になっているもので無くとも、同じカテゴリーに入るものがたくさんある場合も楽だ。こんな感じ。
いずれもネタの選び方だけにのっかかっているが、まあ考える気持ちが起こる問題として作ったつもり。
さて、ここでひとつ確認しておきたいことがある。今までの問題は、全て「メジャーな言葉だけで構成されている」という共通点がある(5問目の書名は別として)。知らない言葉がひとつでも入ってしまうと、考えようという気が殺がれてしまい、やっぱり面白くないのではないか。もちろん場合にも拠るが。
今見たような状況の時はたいして悩まないで済むが、次のような問題に選択肢をつけよ、となったら結構悩む。問題と正解だけ述べる。みなさんならどういう選択肢をつけるか。
芸人さん島木譲二氏は、ここから芸名をつけたんだそうだが、これを3択にしようとして選択肢を作る場合、どうなるか。
まず考えられるのは「芸人でそろえる」という作り方。「島木譲二」の誤答なら「吉本新喜劇」の芸人じゃなければ正解が浮いてしまう。ところが、新喜劇の芸人さんの名前は「チャーリー浜」「池乃めだか」のように、まずあり得ない答えができてしまう。そうするとちょっと世代の違う新喜劇俳優「内場勝則」「石田靖」などを入れることになるが、そうすると、やっぱり「島木」が浮いてしまう。
同じカテゴリーの答えがうまく選べない場合、「全くバラバラなカテゴリーだけど、ちょっとした共通点があるものから選ぶ」という方法もある。例えば誤答として「山本譲二」「所譲二」のような「譲二つながり」にする、とか。全員芸名だし、悪くないが、そこまでしてこの問題を3択問題にする必要があるのか?
はっきりいえば、無理に3択にする必要が全く存在しない。で、正解を導こうという気もそんなに起きないし、だったらやめればいいじゃん、ということになる。ここでひとつのわたし流決め事ができた。
さて、今の問題については「浮いてしまうから駄目」という観点を重視してきた。これは「如何にも島木が正解」の問題にしたくないからそうしたのだが、わざと「浮いている選択肢」を用意する場合もある。勝手に引用して申し訳無いのだが、1995年の「第2回東大(中略)オープン」で出題された次の問題が、非常にいい例である。
東大出身の3人のミュージシャンを選択肢にしているが、@AとBとで一見別カテゴリーに分けられる。そうすると、人情としてBをまず外す、ということが起こりうる。もしくは、逆に@Aが引っ掛けでBが正解なのかな、という考えを持つ人がいるかもしれない。いずれにしても「単純に同条件の3つから選ぶ」という普通の3択問題に対して、こちらは「出題者の意図を読む」という新しい面白みが生まれてくる。
今の問題だとちょっと分かりにくい人は、選択肢が「@早稲田大学 A慶応大学 B明治大学」という問題のとき、どういう風に考えるかを想像してもらえば良い。
こういうふうな選択肢の遊び方は他にもいろいろある。クイズは「出題者と解答者との知恵比べ」という面が多分に存在するが、3択問題はクイズの持つそういう要素を一番楽しめる形式だと思っている。だから、わたしはできるだけ3択問題を重視したい。