2004年05月14日(金) 天気:晴

 昨日のつばめさんの話の続きです。今朝はどうしているかなと,覗いてみましたらやっぱり電線で待っています。少し小さくてわかりづらいですけど,写真にツーショットを収めてみました。パパはどんな気持ちで待っているのでしょうかね。

 

さて今日は,バックグラウンドネタの続きです。

 歯科という業界が医科と決定的に違うことがひとつあります。「勤務医」というポジションです。お医者さんの場合,自分で開業しなくても,大学にずっと籍を置かなくても,ある大病院に「勤務医」として勤めることができ,そこで定年まで勤めるというケースはそんなにめずらしいことではありません。しかし,歯科の場合,「勤務医」で定年までというケースはほとんどありません。

 理由はいくつか考えられます。まずひとつは医科ほど「勤務医」というポジション自体が多くないことです。大きな総合病院ならば,歯科を備えているところもありますが,少し規模が小さい病院では「歯科」はない場合がほとんどです。そしてその大きな総合病院の「歯科」は,大学病院の出張先となっている場合が多く,個人が病院と契約して「勤務医」になれるケースはかなりまれです。

 たまに,ひとつの歯医者さんが分院を経営していて,そこの雇われ院長というポジションや,大きな歯科医院の勤務医というポジションがありますが,どちらも定年まで勤務するというケースは珍しく,自分で開業するまでの腰掛け的要素が強いポジションです。雇う側も年々昇給していくベテラン歯科医を置くより,若手歯科医を雇った方がコストを抑えることが出来るというメリットがあるようです(ベテランと若手の収益面の差は,少し経験を積んだ段階で差がなくなることが多いので・・・)。つまり,歯科の場合極論を言いますと,大学に残るか自分で開業の道を歩むかという二つにひとつの選択肢を選ぶ人が大半であるということになります。

 自分もそれを決めなければならない時期が来ていました。国立大学の「助手」というポジション(国家公務員)は,法律上は自分で「辞める」といわない限り,クビにはならないようです。しかし,実際は教室のトップである教授の意向が強く影響します。大学に籍を置きつづけるということは,「研究」を仕事の中心とし,業績を上げてポジションアップを目指していくということになります。「いや,私は出世なんて興味ありません。一生助手で雇ってくださればそれで満足です。」という考えの人がいたとします。しかし,研究を続けて業績が上がれば自然とポジションは上がります。もしも研究をせず,診療ばかりしたいということになると,「よほど」診療で秀でたものがないかぎり,教授がそれを認めてくれません。助手のポジションは国立大学の歯科の場合,ひとつの教室に多くて4人くらいです。附属の大学病院の助手を合わせても8人程度といったところです。教授にしてみても,「研究をしない,出世意欲のない安定志向の助手」が集まってしまったら教室の業績は上がりません。ましてや,毎年卒業する学生が数名各教室に残ります。そのなかで,安定志向でひとつのポジションを占め続けるのは非常に難しいことです。

私も徳島へ来て数年が経過した頃から,今後の身の振り方をどうすべきか決める時期にさしかかってきました。大学に残り続ける=研究業績を上げていって上を目指す,開業を考える=診療に力を入れて,そちらの準備をする・・・

卒業間がなかった頃の私は,「借金」ということや,開業医の行う「臨床」の生き甲斐的なところに誤解を抱いていたせいで,開業という選択肢がほとんど考えられない状況でしたが,卒業後10年近く経ったその頃はどちらも魅力的なものとして考えることが出来るようになっていました。

・・・あれ?前回から全く話が進展しませんでした。前置きが長くなりすぎましたね。くどい性格が露見してしまいました(笑)。

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