上 野 山 王 廃 寺 心 礎 ・ 根 巻 石 ・ 鴟 尾など

上野山王廃寺心礎・根巻石・鴟尾

野山王廃寺:史蹟

この地は中世天台宗昌楽寺(治承4年焼失)があり、日吉権現が勧請され日吉21社の社殿が造立されていたと伝える。
山王廃寺塔跡はこの唯一現存する日吉神社と称する小祠の境内にある。
近世には種々の民間信仰が盛んであったようで境内には元禄8年銘(1695)の庚申塔など多くの(18基)石造物が残る。
 山王廃寺伽藍推定図:但し塔・金堂は確認済で あるが、それ以外は推定。
  近年の発掘で塔基壇(一辺14m)の西で金堂跡と見られる基壇を発掘と云う。
○「山吹日記」 奈佐勝皐,天保年中:
「北原の野にいつ、この東北に山王村とてここにも礎石有。かむつけの君の始祖の君たちのみところを祭り奉りしとかや。又の説に船尾山にまつりし山王権現の鳥居のあとやともいへり。此所はかの山のかたよりまむかいに向へればさもありなん。」
塔基壇と金堂基壇の間から、「放光寺」というヘラ書き瓦や「方光」の押印のある瓦が出土。
放光寺とは、山上碑文中に「・・・長利僧母為記定文也 放光寺僧」とあり、当廃寺は放光寺と関連があったもしくはこの廃寺が放光寺であったと推定される。
2008/08/13追加:
○「天武・持統朝の寺院経営」より
 放光寺印瓦(2種)

上野山王廃寺塔心礎

日枝神社の境内は、周囲より一段と高く、建物基壇の様相を呈し、日吉神社境内が塔基壇と思われる。
大正10年塔心礎が発見される。
塔基壇は一辺14mで、地下式心礎であった。(現状では心礎上面が基壇の上面より30cm下に据えられている。)
心礎は3.0×2.5×1,5mで、中央に径65×18cmの円穴があり、さらに中央に径27×30cmの舎利孔を穿つ。
円穴の周囲には径108cmの環状排水溝を彫り、そこから東西南北の四方に放射状の排水溝を彫る構造を持つ。
塔建立時期は出土瓦などから白鳳期(7世紀末)とされる。

2004/8/5「X」氏撮影
上野山王廃寺心礎1
  同        2
2005/08/28撮影:
上野山王廃寺心礎1
  同        2:左図拡大図
  同        3
  同        4
  同        5
2008/08/12追加:
「天武・持統朝の寺院経営」 より
 山王廃寺心礎実測図
2011/05/29追加:
「佛教考古學論攷」 より
 山王廃寺心礎実測図2

○「日本の木造塔跡」:
心礎は2.7×2.5×1.5mで、中央に径65×17cmの円穴があり、さらにその中央に径26×27.7cmの孔を穿つ。
円穴の周囲には径110cm幅6cmの環状溝があり、この溝から4本の放射上排水溝が走る。

2006/08/13追加:
○「柴田常恵写真資料」 より:大正もしくは昭和初頭撮影か?
  山王廃寺心礎

2017/01/31追加:
○「群馬県史蹟名勝天然紀念物調査報告. 第1輯」群馬県史蹟名勝天然紀念物調査会編、三明社、昭和7年(1932) より
 口伝伝説等の存するものがない。
大正の初め、境内の掃除をなし、その除草を埋める穴を掘らんとして、偶然、大礎石を発見しことありしが、まもなく之を埋めた。
後、大正10年本県史蹟名勝記念物調査臨時委員たる福島武雄らは青年団の後援を得て、再びこれを発掘して、寺院跡たると知るが、史跡指定に際し、山王廃寺と呼ぶに至る。
 山王廃寺心礎       山王廃寺心礎実測図     山王廃寺礎石実測図

上野山王廃寺塔心柱根巻石:重文

塔心礎を飾っていたものと思われる。
根巻石は7個の蓮弁からなり、輝石安山岩製という。
径は96.5cmを測る。
出土地は不明ながら、現在地から約1丁東の地点で 井戸枠に使用されていたものと云う 。
2005/08/28撮影:
 上野山王廃寺根巻石1:左図拡大図
   同         2
   同         3
2008/08/12追加:
「天武・持統朝の寺院経営」 より
 山王廃寺根巻石実測図

上野山王廃寺石製鴟尾

石製鴟尾が2個残存する。

その1:日吉神社境内に設置。
高さ約1m。重量950kg。角閃石安山岩製。
2005/08/28撮影:
 上野山王廃寺石製鴟尾1      同           2      同           3

その2:都丸氏邸内(日吉神社東約2丁)
高さ・重量は日吉神社境内鴟尾と同一とされる。
但し、両者の石質(こちらは硬い輝石安山岩製)や細工に相異があり、1対の鴟尾とは考えられないという見解もある。

日吉神社境内礎石

現在境内には塔礎石と推定される礎石及び柱座・枘孔を持つ礎石が散乱する。
2005/08/28撮影:
  上野山王廃寺礎石1      同        2      同        3      同        4
 


2006年以前作成:2017/01/31更新:ホームページ日本の塔婆