奈 良 「慈光院の抹茶」
訪れたのは某年3月初旬だった。
古都の奈良特有の底冷えの季節は去ってはいたが、春と言うにはまだまだ寒い頃だった。
定期観光バスに乗り、昼少し前に「慈光院」(0743-53-3004)に到着した。
ここ慈光院は寛文3(1663)年、時の小泉藩主 片桐貞昌が建立した禅宗の寺であり茶道「石心流」発祥の地でもある。
我々、観光バスの一団はここで昼食を摂ることになっている。
昼食前に寺内を一巡し昼食場所の書院に行く前に希望者のみ有料で抹茶が供せられる。
希望者のみではあるが由緒ある茶道発祥のお寺さんである、一団の殆どは希望する。
そして私を含め希望者は茶処の部屋の前で整列し茶菓子を受け取る。
懐紙が配られ、その上に一口大の饅頭を載せてくれる。
その担当は小学校3〜4年生と見受けられる男の子である。特に僧衣を纏っている訳でもなく寺の関係者の子供といった風である。
茶菓子を受け取り、茶処の和室に入る。そこではパートの小母さん風の3人が座卓の上一杯に抹茶碗を並べ、茶筅で抹茶を掻き混ぜている。我々はそのどれかを取り、茶菓子を頂きながら抹茶をガブガフと頂く。お点前も何もあったものではないが後が支えているので仕方がない。
しかし団体バスの一団、作法を知る人知らぬ人様々の中で『取り敢えず茶道のホンの少しにでも触れる』にはこれはこれで良いのかも知れない。
そして昼食後はバスの出発まで銘々で寺内を散策。ここ慈光院も各所のお寺さんのように枯山水の庭がある。
この庭の特徴は小規模ではあるが枯山水に付き物の石が殆ど使われていないことだろうか。
幾種類もの木々の寄せ植えで設えられている。史跡名勝指定を受けているそうだが成る程と納得できる。
慈光院、観光地奈良にあってそれ程メジャーな寺ではないし規模も小さい。
だからこそ落ち着けるのかも知れない。

写真:慈光院 Roshi 文章:Roshi
 

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