自分の似姿を人は求めるのか。
近ければ嫌悪し、愛惜する。
遠ければ憧憬し、厭悪する。
愛憎半ばするこの想いは。
「スガタ…?」
見開かれた瞳に、自分の顔が映っていた。
紅い色。
自分には持ち得ない華だ、とスガタは思った。
「タクト…」
見下ろす冴えた眼に、自分はどう映っているのか。
金と蒼。
冷然たる王者の色は孤高にして絶対だ、とタクトは思った。
一つ距離を縮めれば、今までの関係は壊れてしまうのだろう。
友人、という距離感は酷く曖昧だ。
そもそもが最も近しく、果てしなく対極の存在なのだから。
ゆえに求めてはいけない。
歪んだ合わせ鏡のように、伸ばす指先は交わることなく終わればいい。
だから触れたい。触れてはいけない。
ゆえに止められない。
合わせた額から、新たな熱が生まれた。
補色にして同色の紅と蒼が絡まる。
名は、紡げなかった。
重ねた吐息に心の臓が大きく脈打つ。
寄せた唇は何を齎すのか。
もう、互いの瞳に映るものを確かめる術はなかった。
(2010.11.21)
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