『お約束』



「ふっ…」


切なく寄せられた眉根に、陽介は指先に込めた力を緩めた。
気遣わしそうに相手の様子を窺うが、緩く首を振って返される。


「いいんだ。もっと強くしてくれ」
「いいのか?」
「ああ、その方が気持いい」
「…分かった」


再び体の線をなぞって強く触れる。
溢れる吐息は歓喜の法悦。
もっと快感を感じて貰おうと指の腹を押し付けた。


「あっ…そこ、もっと…」
「ここか?うわ、すげーガチガチ」
「も、少し強く…して、くれ」
「じゃあ遠慮なく」


言われるがまま力を増せば、今度は低いうめき声が上がる。
閉じた瞼の上、微かに睫が震えていた。


「わり、強すぎたか?」
「ちょっと痛かっ…」
「の割には気持ちよさそうじゃん」
「ん…花村、意外と上手い、な…」
「意外は余計だっての。おりゃ、これでどうだ」
「っ…!そこ、凄くい…っ」


紅潮した頬に気を良くし、陽介の指技は一層苛烈に攻め立てる。
恍惚の光が出雲の瞳に宿った。



「あー気持ちよかった。また宜しく」
「おーけー。代わりにテストのヤマ、頼んだからな」
「任せろ」
「頼りにしてるぜ、相棒。しっかしお前の肩、本気でバリバリなのな。揉んでて軽くビビった」
「まめにほぐしてはいるんだけど、どうも凝りやすいらしい」
「それでテレビん中でよく首回してんのか」
「ああ」


首に手を添えゆっくり倒せば、ゴキリと豪快な音がした。


(2008/12/02)


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