何も見えない
何も聞こえない

触れられないことがこんなにも怖いだなんて、思いもしなかった



     『父さんといっしょ ― 父さんのおしおき編 ―』



頭の上で一纏めにされた腕がぎしりと痛む。
拳を握り締め、フィールは目の前にいるであろうカインに向かって声を絞り出した。


「父さん…お願いだからもうやめてよ…」


どんなに哀願しても、父からの返事は聞こえてこない。
カインが今どのような表情をしているのか、両目を塞がれたフィールには知る由もなかった。


「とうさっ…!!」


ふいに内腿を撫で上げられた。
ベッドに両腕を縛られ、目隠しをされて鋭敏になった感覚は少しの刺激にすらも反応してしまう。
ゆっくりとファスナーを下ろされる音が、酷く耳障りだった。

服を剥ぎ取ってもまだカインは何も言葉を発しなかった。
いつもは必要以上に口付けてくるのにそれもない。
それはフィールをたまらなく不安にさせた。


「ぅあっ!」


突然自身を咥内に含まれ、思わず腰が跳ね上がる。
舌戯に翻弄され、限界まで追い詰められるものの決定的な刺激を与えられないままカインは離れていってしまった。
追い上げられたままで行き場のない熱が下肢にぐずぐずと燻る。


「父さん、腕外してよ…」


達せられない苦しさと、自分から触れられない心細さとでフィールの声は震えていた。

近付く気配に身を強張らせば、秘裂にいきなり指を突き入れられた。
息を詰らせるフィールに構うことなく、カインは内部を解していく。
フィールにはただ唇を噛んで耐えることしかできなかった。


「ぁ、あ、ああああっ!!!」


両脚を大きく開かされた自分の姿はさぞ滑稽なことだろう。
だがそんなことに構う余裕はフィールにはなかった。
乱暴に指が引き抜かれ、代わりにカイン自身が押し入ってくる。
いつもより性急な律動に、今、こうして自分を組み敷いているのはカイン以外の誰かなのではないかと錯覚さえおこす。
それでも両脚を掴む掌の熱が、これはカインなのだと教えてくれた。


「はっ、あ、あぁ…父さん」


必死に呼べば、漸くとろとろと蜜を零す高ぶりに触れてもらえた。
カインの長い指が絡む感触に、フィールの顔が綻ぶ。
その様子に、カインの口元が弧を描いた。





カインがフィールの手械を外したとき、フィールは深く眠っていた。
泣き腫らした我が子の目に口付けを落とし、そっと隣に横たわる。
優しく抱き寄せればしがみ付いてくるのが嬉しくて、カインはまた口付けを落とすのだった。



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