どうしてこうなったのか
「無理はしなくていい」という父さんに反抗した訳でもないのに

でも、たまには
主導権を握ってみたいと思うのが、男心というものだ



     『父さんといっしょ ― フィールのご奉仕編 ―』



「ん…」


カインの足元に蹲り、懸命に舌を動かすフィール。
「先程私がしたようにやってごらん」と言われたけれど、なかなか上手くいかなかった。

両手で支えて口に含む。
そろそろと舌を這わせ、口全体で刺激を与えた。


「そう、上手だよ」


カインの指が労わるようにフィールの髪を梳く。
上目遣いにカインの表情を窺えば、瞳にいたずらっぽい光を湛えていた。


なんだかくやしい


自分のように余裕がなくなってしまえばいい。
フィールは今まで以上の刺激を与えようと躍起になった。

唇で啄ばむようにし、ねっとりと全体を弄る。
自分がされたようにカインを愛撫した。

質量を増すごとに咥えているのが大変になる。
顎が疲れてくるけれど、徐々にカインが反応を示し始めたのがなんだか嬉しくて舌を動かし続けた。


「…フィール、そろそろいくよ」


丁度先端を吸い上げたところで声をかけられたため、フィールは思わず口を離してしまった。
熱い飛沫がフィールに降りかかる。
突然のことにフィールは目を見開いたままカインを見つめていた。


「ごめんよフィール。顔を汚してしまったね」


白濁に塗れたフィールの顔を指で拭ってやりながら、カインは苦笑交じりに謝った。
フィールはまだどこか呆然としている。

自身の放った残滓を掻き集めながら、カインはフィールの下肢に目を遣った。
カインの視線に気付いてか、フィールが気まずそうな顔をする。


「さて。またフィールを解放してあげないといけないかな」


表情は優しげなのに、嬉々とした口調がフィールの羞恥を煽る。
大丈夫だよ、と言ったところでこの父が放っておく筈がない。
いつまで経ってもカインに勝てない現状がもどかしくもあり、嬉しくもある。

どうしようかとフィールが考えあぐねていると、カインが意外なことを口にした。


「とは言っても父さんも歳だから、フィールが上に乗ってくれないか?」


ね?とにっこり微笑まれる。
言われた意味の分からないフィールはただただ首を傾げるばかり。

カインはメフィストフェレスの笑みでフィールに悪魔の知恵を授けた。



×××××××××××××××××××××××××××××××××



「うっ…ん…」
「ゆっくりでいいよ」


フィールはカインの自身を秘部に宛がい、ゆっくりと腰を落とした。
いつもよりなかなか入らないもどかしさに、フィールの腰が自然と揺らめく。
カインの腹に置いた手を突っ張らせながらも、フィールは己の中にカインを沈めていった。


確かに上に乗った方が主導権は握れそうな気はする。
だがカインに翻弄されっぱなしなのには変わりがなかった。

フィールはこっそり後悔した。


「はっ…あぁ…」
「全部入ったね。自分がいいように動いてごらん」


そろりと腰を撫で上げる手のひらに体が震えた。
いいようにと言われてもどうすればいいのか分からない。

眉根を寄せるフィールに「こうするんだよ」とカインが支えていた手で腰を揺すった。
途端フィールの体を電流のような刺激が走る。
自重により、常より深く刺さったカインをありありと感じさせられた。


「んっ!父さっ…そんな風にされたら…」
「分かったかい?今度はフィールがやってごらん」


涙目で見つめても、カインはこの体勢を変える気はないらしい。
仕方なくフィールはそろそろと動き始めた。



見下ろす形で交わるのは初めてだ。
いつもは縋り付ける腕も背中も、今は手の届かぬ位置にある。

手をついたカインの腹部を支えにして恐々腰を動かすと、タイミングを見計らってカインも腰を動かしてきた。
背筋を駆け上る快感に、フィールは頽れそうになる。
それを堪えて腰を動かす様は、なんとも扇情的だった。

ぐちゅりぐちゅりと音が聞こえる。
内部を掻き回すこの音だけは、何度聞いても慣れなかった。

フィールの動きに合わせてカインが突き上げる。
白い肌が薄紅に染まる。
歓喜の声を堪えようとするのが愛しくて、カインは何度も何度もフィールの内部を抉った。


「はっ…あぁ!父さん…」


がくがくと震える体を必死に支え、求めるままに体を動かす。
目が眩むような快感を得て、二人は共に果てた。




「たまにはこういうのもいいだろう?」


自分の上に突っ伏してしまったフィールの髪を撫で、カインはおどけて片目を瞑ってみせる。
とんでもない人を父に持ってしまったと、フィールはぼんやりとした頭の片隅で考えていた。



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