いい夢が見られるように、私を忘れないように
祈りを込めて
『祈りを込めて』
自分と同じ色をした我が子の髪を優しく梳く。
今日神々の子を初めて見たからなのか、興奮して寝付けないらしい。
まだ起きていると駄々をこねるフィールにしょうがない子だね、と額にキスを一つ落としてやった。
この子の母親が始めた寝る前のお約束。
眠りへの合図。
いい夢が見られるおまじないなのよ、と彼女は教えてくれた。
明日は今日よりもっといいことがあるように、いい夢を見るのだと。
愛しい人にキスを送るのだと。
先程まではしゃいでいたフィールを何とか寝かしつけると、カインは薄く微笑んだ。
自分のこれはおまじないではなく祈りだ。
この子にとって、明日が、未来が素晴らしいものであって欲しいと思う。
世界の希望をフィールに託すことは苦難を与えることになるのかも知れないけれど。
それでも願わずにはいられない。
世界が、フィールが幸せになれるようにと。
フィールの望んだ未来であればきっと素晴らしいものであるだろうと。
神々の支配から抜け出した世界に自分がいるかは分からないけれど、フィールが少しでも自分のことを覚えていてくれればそれでいい。
だから毎晩キスを送ろう。
いい夢が見られるように
自分のことを忘れないように
祈りを込めて
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