愛する妻との間に子どもが生まれて間もなく、カインは鰥夫になってしまった。
だが妻を失った悲しみに打ちひしがれている暇などない。
幼いフィールを立派に育てなくてはならなかった。


「さて、今日の食材を捕りに山へ行くとするか」
「ぱぱー、ぼくもいくー」
「山は危険だからね。私から離れてはいけないよ、フィール」
「はーい」


カインは元気いっぱいに返事をしたフィールの手を取った。
反対の手には狩り用の斧を引っ提げている。
神々の子の面倒はトトに見させて、二人は仲良く山へと出かけて行った。




「GO FIGHT!オズオズオズレンジャー♪
信じてフューチャー
OK!オーライ! 勇気をこの手に
旅立て!」


最近子どもたちの間で流行っている『滅神戦隊オズレンジャー』の歌を一緒に歌いながら、山道をどんどん進んでいく。
木々の生い茂った山にはぽかぽかとした日が射し込み気持ちよかった。

カインは自分の隣をとことこと歩いているフィールに目を細める。
妻を亡くした悲しみは大きい。
だがフィールが居てくれるお陰で取り乱したりせずに済んだ。
我が子の成長をどこまで見守れるか分からないけれど、こうして親子でいられる時間を大切にしたいと思った。


だが穏やかな時間は突如として破られる。
静けさを獣の咆哮が切り裂いた。
カインはフィールを抱き上げ、斧を構えた。


「フィール、今夜は牡丹鍋にしよう」


二人の前に立ち塞がったのは、体長がカインの三倍はあろうかという大猪であった。
獰猛な牙が二人に向けられている。
フィールは猪の大きさに驚いてはいるものの父の頼もしさを知ってか、はたまた肝が据わっているのか泣いたりしなかった。

大猪は前足で地面を抉り、二人目掛けて突進してきた。
カインはふわりと飛び上がると猪の首筋に斧を振り下ろす。

頸椎の砕ける音が森に響き渡った。

カインは優雅に着地するとフィールを下ろしてやった。
好奇心が強いのか、フィールは息絶えたばかりの猪を覗き込んでいる。


「すごくおおきいね」
「これだけあればご近所にお裾分け出来るかな。さぁ、暗くなる前に帰ろう」


右手にフィールの小さな手を握り、左手に斧を突き刺した猪の足を持ち、カインは村への道を戻っていった。


「GO FIGHT!オズオズオズレンジャー♪
限界チャレンジャー
勇気という名のレクスを持ってる
GO FIGHT!オズオズオズレンジャー♪
夢見てフューチャー
OK!オーライ! 明日をこの手に
滅神戦隊オズレンジャー
旅立て!」

「フィールはオズレンジャーの中で誰が一番好きなんだい?」
「うーんとね、オズ・ライオン!」
「そうか。私はどうもあの黄色いのを見ると昔の仕事仲間を思い出すんだよね」
「おともだち?」
「友達か…うん、まぁそんなところさ」
「オズ・ライオンみたいにつよいの?」
「それなりに強かったけれど、私の方が強かったよ」
「やっぱりぱぱはすごいや!」
「あはは。フィールのパパだからね」


子どもを育てるには愛情が一番。
二人の楽しげな歌声は山の奥まで谺していた。



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お分かりかと思いますが、滅神戦隊オズレンジャーの歌は魔●戦隊マ●レンジャーの替え歌です。
マ〜ジ、マ〜ジ、マ●レンジャ〜♪


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