「う…」


小十郎がゆっくりと目を開くと、そこには木目の天井があった。
起き上がろうとするが体が上手く動かない。
額に濡らした手拭いが乗っているのが気持ちよかった。


「よぉ、起きたか」
「政宗様…私は…」


声の方に視線を巡らせれば、闇の中にぼんやりと主の姿が見えた。
団扇で小十郎に風を送りながら、政宗は嘆息する。


「気分はどうだ?お前、縁側で倒れたんだぞ」
「倒れた…?」


そう言われて朧げな記憶を辿ってみるが、霞のかかったような頭では思い出すのも一苦労だった。
知れず眉間の皺が深くなってゆく小十郎に、政宗は先刻自分がされたように指を押し当てる。
人の悪い笑みを浮かべると、腰を上げ小十郎の上に跨った。


「何だ覚えてねぇのか…まぁいいけどよ」


整えられた衿に手をかけ寛げる。
下帯をも剥ぎ取られそうになり小十郎は必死に抵抗するが、身を起こそうと振り上げた両手は丁寧に縛られていた。
あまりの事態に愕然とする。


「悪ふざけが過ぎますぞ!政宗様!」
「おめぇが言ったんだろ?『思う存分お仕置きして下さい』って」
「言ってません!断じて申しておりません!」
「熱中症で頭ヤラれちまって覚えてねぇだけだ。安心しろ」
「無理をおっしゃるな!」
「るせーよ」
「むっ…!!!」


舌を捩じ込んで無理矢理黙らせ、政宗は『お仕置き』を開始した。





暗い部屋に水音が響く。
政宗の舌が肌を這う度、小十郎の縛られた腕がぴくりと震えた。
腕を封じられたくらいで動けなくなる筈もないのだが、まだ体力が回復していないのか小十郎は政宗のなすがままになっている。
それが愉快なのか、政宗は非常に上機嫌だった。

政宗がされたのとは反対に、下へ下へと肌を辿ってゆく。
手のひらで撫でれば筋肉の隆起が吸い付くように反応する。
まだ勃ち上がっていない下腹部に指を掛けると、少々荒っぽく上下に扱いた。


「っ…!政宗、様…」
「さっきは悪い事したよなぁ。おっ勃てたまんま気ィ失っちまうもんだからよ、イかせてやってねぇもんな」
「結構です」
「そう言うなって」


ヌいてやるぜ?

吐息で囁いて、溢れる粘液を砲身に絡め更に刺激を与える。
硬度を増してゆく様を手中で感じながら、浮き上がった血管を舐め上げた。
限界まで反り返ったそれを咥内で玩び、きつく吸い上げる。


「ま、さむねさま…っ」
「おら、とっとと出しやがれ」


色気も何もあったものではない台詞だが、先端の窪みに歯を立てられさしもの小十郎も陥落した。
政宗は満足気な笑みを浮かべる。
口から溢れ指を汚した白濁をわざとらしく舐め取れば、小十郎が僅かに歯軋りした。


「お戯れが過ぎるのではありませんか?…もう十分でしょう。解いて下され」
「ん〜そうだなぁ…」


解く気ねぇなこの主は。
勿体振って腕組みしたり顎に手を遣ったりする政宗を見つめながら、小十郎は熱中症に罹ってしまった己の鍛錬不足を猛省した。
熱中症はいくら鍛錬したところでどうにもならないのだが。

大人しくなった小十郎を尻目に、政宗は衣服を脱ぎ捨てた。
固まる小十郎の上に再度跨る。


「乗られて勝手に動かれる方がヤラれるより屈辱感増さねぇ?」
「政宗様っ!」
「そう怒んなって。ちったぁ楽しめよ」
「この状況で楽しめる筈ないでしょう」
「ひでーな」


互いの肉刀を擦り合わせるように腰を揺らめかせ、傍若無人な奥州筆頭は口角を吊り上げた。


「んじゃ、イタダキマス」


政宗の眼が、妖しく光った。





「くくっ…まだまだ元気そうでなによりだ。なぁ、小十郎」


ねり木を垂らしただけで硬度を取り戻した小十郎に舌なめずりしながら、政宗は解した秘所を宛がった。
そのままゆっくりと腰を落とす。
脈打つ小十郎が体内でもう一回り体積を増した。


「もうこれお仕置きっつーよりご褒美だよな。俺自ら扱いて勃たせて乗って動いてやってんだからよ」
「羅列しないでいただきたい」
「事実なんだから仕方ねぇだろ。ヨくねぇとは言わさねぇぜ?」


絞り上げるように力を籠めれば、小十郎が小さく呻いた。
そのまま腰を浮かせ、勢いよく落とす。
繰り返す度、政宗も小十郎も重い蜜を零した。
更なる潤滑剤を得て、政宗の動きが激しさを増す。
射精感を堪えているのか、政宗が動く度に小十郎の腹筋がぐっとへこむのが月明かりに照らされ濃い陰影を生み出していた。


「すげぇな…お前の、熱ぃ…」
「政宗様…」


熱に浮かされた顔で腰を動かす政宗に、小十郎はごくりと喉を鳴らした。
生憎縛られて興奮するような趣味はないが、主が自分から快感を得ているのだと自覚すると下肢に熱が集まってゆく。
政宗の言葉一つ一つが小十郎にとっては何よりの刺激だった。


「お前もそろそろ限界か?俺ン中でびくびくしてやがるぜ?」
「政宗様こそ。俺の腹が随分汚れているようですが」
「Ha!言ってくれるじゃねぇか」


ここへきて観念したのか突き上げ始めた小十郎に合わせて、政宗も腰を落とす。
終焉に向けて、二人の動きが加速した。

暑さを忘れるほどに激しく。
ほぼ時を同じくして二人は絶頂を迎えた。





流れ落ちる汗もそのままに、政宗は小十郎の上に倒れこんだ。
舌を伸ばして左頬の傷跡を舐める。


「全く。貴方という人は…」
「んだよ。お前がぶっ倒れるからいけねぇんだろ?」
「それに関しては面目なく」
「いいんだよ。無事ならな」


照れ臭かったのか、顔を庭の方へと背けてしまった。
政宗なりに心配していたらしい。


「ご心配をお掛け致しました。政宗様」
「いいっつってんだろ。それより」


ぐるりと顔を戻していつの間にやら落ちていた手拭いを絞り直して載せてやる。


「俺の居ないところで勝手に倒れやがったら、ただじゃおかねーからな」
「肝に銘じておきます」


首を伸ばして口付ければ、同じくらいの優しい口付けが返ってきた。



翌日から政宗が『くーるびず』を取り入れると言い出したのだが、防御が疎かになるとの理由から小十郎は相変わらずがっちり着込んでいる。
お陰で政宗まで顔の右半分しか露出していない状態から兜なし+陣羽織腕捲り+首回りの露出に止まってしまった。
前田利家ほどとは言わないが、真田幸村か長曾我部元親並には風通しの良い服装をしたい政宗はいつか『くーるびず』を成功させようと水面下で画策しているらしい。



(2007/8/17)


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