【文章修行家さんに40の短文描写お題】
基本香港視点ですが、固有名詞は出てきません。
中国、イギリス、日本が登場しますが、「あの人」とか「貴方」とかで表現されています。
カップリング要素は特にございません。
行って返ってきたあたり(なんだこの大雑把な表現)をイメージしておりますが、他意はないので深く考えないでいただけると幸いです。
配布元>>
文章修行家さんに40の短文描写お題さま
00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。(63文字)
雨城由鏡です。サイト名は「Ray or Shine」。
読んで情景が思い浮かぶものが書きたいと思いつつ、場面描写って何ぞやと頭を捻ることになりそうです。
01. 告白(64文字)
ごめんなさい、の言葉の代わりに深く項垂れた頭のまま敷布を差し出す。
描かれた巨大な地図。
返事は脳天にお見舞いされた拳骨一発だった。
02. 嘘(64文字)
またあの人のところで暮らします。
靴音高く玄関を目指せば、泣きながら引き止めてくれる優しい腕。
今日は4月1日。ぺろりと出した舌は赤い。
03. 卒業(64文字)
元の居場所に戻ってきた。与えられたのは長くて短いモラトリアム。
次は貴方の番ですと言えば、生意気だと頭を叩かれた。
さぁ、どうする?
04. 旅(61文字)
埃っぽい空気と人々の喧騒。
だが久々の我が家は自分同様昔のままではなく、視界が少し滲んだのは黄砂の所為ばかりでもないようだ。
05. 学ぶ(64文字)
商売成功の秘訣はいかに付加価値をつけるか。
ぬいぐるみのつぶらな瞳が訴える。
見習うだけでは芸がないと、一回り大きなものを用意した。
06. 電車(61文字)
心地よい振動に身を任せまどろめば、仕方がないとばかりに貸される肩。
負ぶわれた昔を思い出す。
出発駅へと戻る環状線も悪くない。
07. ペット(64文字)
囀る声に目を細め、手を伸ばす。拒絶を示す嘴は指先に朱を咲かせた。
逃げたくなるのは性。
あの人も、こんな気持ちを味わったのだろうか。
08. 癖(64文字)
感情を露にしてはいけないと教えられた。その割には顔に出てしまう。
ここも似たのだろう。
皮肉屋ぶっている貴方も、隠せてはいないから。
09. おとな(64文字)
大きな裂傷が走る背に指を伸ばす。
内に流れる悠久の刻ゆえ、貴方は過去を抱えて進んでゆけるのか。
問いは言葉にならず、指を引っ込めた。
10. 食事(63文字)
貴方の料理を食べているとき、帰ってこられてよかったと強く思う。
だがあの人の下でも朝食だけは美味しかったと言えば、大層驚かれた。
11. 本(62文字)
変色したページの間にクッキーの食べかすが挟まっていた。
案外だらしないのか、犯人は別の人物なのか、考えたくなくて払い落とした。
12. 夢(63文字)
景色は違えど、どこにいたって空は変わらずそこにある。
夢オチでよかったー!と叫ばずに済むのが一番の幸せだ。
大きく伸びをした。
13. 女と女(64文字)
楽しげな話し声は聞こえてくるだけで場が華やぐ。
自分が盛り上げるならこれしかないと、手持ちの爆竹全てに点火したら大目玉を食らった。
14. 手紙(64文字)
書いては消し、書き終えては破り、また書き直す。
改めて言葉にすると照れ臭い。
二人の間にある紙屑の小山は、山脈へと成長を遂げていた。
15. 信仰(63文字)
貴方は全てで、貴方は絶対で。
そう思いたくても思えない現実が目の前にある。
ほあた!とか叫びながらステッキを振っている貴方の姿が。
16. 遊び(65文字)
よい子には聞かせられないような罵声を吐きながら、全力疾走する貴方。
追いかけっこは万国共通だなと思いながら、自分もまた全力で駆けた。
17. 初体験(61文字)
皮膚を擦るちりりとした感触に思わず眉を顰める。
やはりいつものやつがいいと、愛用の一箱を取り出した。
爆竹にはマッチが一番だ。
18. 仕事(63文字)
お茶にしようの言葉に、針を置いて肩を回す。
随分と没頭していたようだ。背後には縫い終えたパンダの山が出来ていた。
あと200体は作ろう。
19. 化粧(61文字)
色とりどりの光が溢れ、渦を描く。
溢れんばかりの色彩が街を飾り立てていた。
光が強いほど濃くなる影すら、禍々しくも美しかった。
20. 怒り(65文字)
何をどうしたらここまで原型を留めぬ程に無残に変化させることが出来るのか。
皿の上の物体を見遣る。
仇討ちとばかりに中華鍋を投げつけた。
21. 神秘(64文字)
認めたくない現実がそこにはあった。
鏡に映る己が姿に唖然とする。これは呪いか?
こちらへ来てから、だんだんと眉が太くなってきたのだ。
22. 噂(62文字)
地下室から不気味な声が聞こえるとか、誰もいないのに楽しそうに話しているとか。
好奇心と黄色い符とが、袖の中でせめぎあっていた。
23. 彼と彼女(62文字)
肩触れ合う距離の隣人達の、横顔をそっと覗き込んだ。
くれるのは笑顔だったり鋭い眼光だったり。
良かれ悪しかれ、思い出は沢山ある。
24. 悲しみ(61文字)
胸中を蝕む不快感に、吐き出しそうになる口を押さえて堪えた。
代わりに瞳から零れる一滴が止められない。
なんて不味い料理なんだ!
25. 生(64文字)
貴方と出会って、自分は自分になれたのだろうか。
変化に戸惑いながらも手を伸ばす。
戻ってきた今の方が、桃饅頭の味も美味しい気がする。
26. 死(63文字)
咽喉が焼けるようだ。体が震え、目が霞む。
愕然とする貴方の顔に笑い返す余裕なんてない。
貴方の手料理なんて、食べるんじゃなかった。
27. 芝居(64文字)
三つ揃いを着込み、爽やかな笑顔でお茶を出す。
いい仕事してますよ!と日頃穏やかな隣人にサムアップされた。
バイト代、弾んで下さいね。
28. 体(62文字)
背に乗せた両腕に力を籠めれば、絶叫が響き渡る。
伸ばした爪先までの距離は拳一つ分以上。
四千年の歴史を以ってしても届かなかった。
29. 感謝(65文字)
言葉にするのは照れ臭いから。とっておきのお茶とお菓子を用意した。
そして極めつけはこれ、と爆竹を取り出したら盛大に怒られてしまった。
30. イベント(62文字)
テレビ画面の中で女の子が一喜一憂するたび拳を握る貴方。
フラグは見落としてはいけませんよ、と隣人はいつになく真剣な目で言った。
31. やわらかさ(62文字)
散りゆく花の下、その儚さを愛でるのだと隣人が教えてくれた。
ワビサビですねと頷けば、春の風より穏やかで心地よい笑みが返された。
32. 痛み(64文字)
風に嬲られる髪と押さえる手とのコントラストに目を奪われた。
手を伸ばし、触れれば生まれる甘い違和感。
指先に、まだ感触が残っている。
33. 好き(63文字)
貴方に言われても、これだけは譲れません。
断固とした意思表示に、翡翠色の眼は負けじと睨み返してきた。
爆竹だけは、やめられません。
34. 今昔(いまむかし)(62文字)
小さい頃は可愛かったのに、と飲んだくれながら貴方は嘆く。
弟は変わってしまったとあの人も嘆いていた。
不変のものは、あるらしい。
35. 渇き(61文字)
早く大きくなりたい。
彼はその衝動のまま成長を遂げ、貴方はそれが気に入らなかった。
この欲求は、見守る側には辛いもののようだ。
36. 浪漫(64文字)
絶対領域は外せません、だとか。
モロよりチラリがいいんです、だとか。
二次元のなんたるかについて熱く語る隣人にはついていけなかった。
37. 季節(63文字)
様々な花を模った菓子を貰った。
見目は違えど、材料は同じようなものらしい。
隣人の一年が凝縮されたそれは、自分には甘みが足りない。
38. 別れ(64文字)
最後の朝、あの人はポーカーフェイスで見送ってくれた。
置手紙代わりの曼珠沙華を見て少しでも崩せればいいと、握手を交わしつつ願った。
39. 欲(63文字)
同じ商品をいくつも買う隣人に理由を尋ねた。
特典は同じじゃないんです!と語気荒く説明してくれる貴方。
天井知らず、とはこのことか。
40. 贈り物(64文字)
ダブルデッカーバスから見下ろす街は猥雑で、賑やかで。
入り混じったこの景色が何よりも愛おしい。
ただ、今の自分があることに、感謝を。
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