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変わった制御方式のスイッチング電源

 
● LTC3459 の動作を眺めているうちに、変わった 制御方式の boost 型スイッチング電源を思いつきました。

入力電圧は 3V で出力は 8V 500Ω負荷。
主インダクターの設定最大電流を超えないようにスイッチ素子の ON 時間を決める。
フライバック期間が終了した後、出力電圧が規定値より小さければ SW 素子を ON にする。
インダクターのリンギングを防止するダンピング回路をつけるが、むだに電力を消費しないように制御する。

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 swp1.asc

A2 SR フリップフロップの出力が 1 のときスイッチ素子が ON になり ます。 M1 に流れる電流を V2 (0V) で検出し、Imax を超えると rsr 信号 で SR フリップフロップをリセットします。 同 FF をセットする信号 は ssr1 〜 ssr3 の論理積で、ヒステリシス付きコンパレーターで発生させ ます。 ssr3 が出力電圧安定化の役割を持ってい ます。 (ヒステリシス付きコンパレーターに関しては、次項も参照して下さい。)

当初 S1 DSW で同期整流をしようと試したのですが、複雑な相互依存関係が出来て しまうためにうまく動作しません。 そこで Dio なる半理想ダイオードで 出力を整流しています。

S2 DSW がリンギングのダンプを制御するスイッチで、この制御信号 は B5 V=(V(q) < 0.5) & (V(d) < V(o)) & (V(ssr2) > 0.5) から得てい ます。 最後の項は不要のようにも思えますが、これがないと主スイッチ素子 の OFF 遷移時にもダンピング回路が働いてしまいます。

入力電圧は 0.2ms のランプ期間の後に 3V になります。 V(ssr2)-2 とか V(rsr)-4 の 引き算は、表示が重ならないように分離するためのものです。 V(n011) は、 現在未使用の同期整流素子の制御信号です。 V(n010) が 1 のとき ダンピング回路が働きます。

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L1 の突入電流が大きく見えますが、これは制御回路が時刻 0ms から 動作しているせいもあります。 現実には MOSFET のゲートに十分なドライブ電圧が 加わらないので、これほどの大電流は流れないでしょう。

 同、拡大図
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SR FF をセットするタイミングがこの過渡応答グラフからは読み取れませんが、 これは ssr3 が 1 になる時刻です。 (A1 の出力は ssr1 & ssr2 & ssr3。)

L1 のリンギングはうまくダンプされています。 動作安定後の出力回路の 効率は 0.977 と計算できました。(スイッチ・整流素子、ダンピング素子の 損失を含む。 MOSFET ドライブ電力は含まない。) この 回路で負荷 300Ωまで対応できます。 10kΩ負荷でも問題ありません。



前記の 回路に Bnn 電圧源で電圧・電流の差を計算し、それを schmtbuf を通す部分が ありました。 これはちょっと変です。 比較式の結果は論理値になる ので、schmtbuf の Td はともかく Vh は無意味だろうと。 でも、これを見て下さい。

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このように B1 の出力 V(si) は純粋な論理値とは言えません。 実際に _∧_ 型に中途半端な値まで変化して、もとに戻ってしまう例を多数経験しま した。 このような部分には、本来は diffschmtbuf を使うべきです が、Vh の計算がめんどうなのでお茶をにごした結果です。 ごめんなさい。

そのほか、前記の回路はスイッチング周波数が中途半端です。 主インダクター に 33 〜 47μH を使うとか、もっと意図を持ってより大きい L を使うとか、 設計方針を明確にする必要がありそうです。

後日気づいたのですが、LTC 社の製品に LTC3420 などカメラのストロボ放電管 のキャパシター充電用 IC があって、これの制御回路に上記回路と似た部分が あります。 但し LTC3420 にはスイッチ素子の最小 OFF 時間を決める one-shot が あります。 論理 AND はワイアード OR で表現されているので、ちょっとわかり にくいかもしれません。




● LED ライト


 近頃白色 LED が身近になったため、これを電池で点灯させようという 用途が多いようです。 LTC 社にも専用の製品がありますが、入手容易で安価 な部品を使って構成したらどうなるか試してみました。

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 (次項参照のこと)

制御には LTC555 (LMC555) を使い、2N2222 (30V, 800mA) をドライブします。 インダクター は 22μH と、小さめに選びました。 スイッチング周波数は 350kHz 程度 です。 Q2 が出力電流安定化の役割を持っており、TLC555 の THRS 端子に電流を 流し込んで 2N2222 の Ton を小さくします。 R8 はノイズ混入防止、 初期起動不能の防止、TLC555 ラッチアップ防止の役目を持っています。 Q2 は 飽和させません。

R5 の位置に3〜4個直列にした LED を接続します。 出力電流は約 14mA に安定化されます。

 (拡大図)
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TLC555 にここまでのドライブ能力があるのかちょっと疑問で すが、 シミュレーション結果では問題ありません。 少し 2N2222 のドライブ電流が 不足気味ですが、これには目をつぶっています。(次項参照)

ラジオ・TV 等への妨害を起こさないように注意する必要があります。 もう 少し部品が減らせないものか、とは思います。

TLC555 の SPICE モデルとシンボルファイル は http://groups.yahoo.com/group/LTspice/files/Lib/CMOS%20Timers%20TLC555%2C%20TLC556/ から 入手しました。 *.asy 中の "SYMATTR ModelFile timers.lib" を削除してあります ので、.lib <pathname> で明示指定する必要があります。

 swp2.asc  timers.lib  TLC555.asy

私は swp2.asc を LTC\SwCADIII\new_asc\ に、
timers.lib を LTC\SwCADIII\new_asc\doclib\ に、
TLC555.asy を LTC\SwCADIII\lib\sym\sym_new\ に置いています。

*.asy ファイル を追加したときは LTSpice/SwitcherCAD III を再起動して下さい。 カレント ディレクトリーが思った位置にないと「.lib ./doclib/timers.lib」指定での timers.lib 読み 込み時にエラーが起こります。 カレントディレクトリーの位置は File → Save as で確認できます。



前記 timers.lib の 使用について、指定を誤っていた部分がありました。 TLC555 のシンボルを 右クリックして VDD を指定しなくてはなりません。 RONX は そのままでかまいません。 これは標準的な ON 抵抗に対する比率です。

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これを踏まえて設計変更をしました。 スイッチング素子には 2N4401 を 使います。 こちらのほうが Vce 飽和電圧が小さいからです。 出力も高め ました。 ドライブ回路のトポロジーは同じですが、TLC555 の出力電圧が低下するのを 許容した設計になっています。

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R7 の位置に直列にした LED を接続します。 出力電流は約 14mA に安定化され ます。 この電流を流したときの LED の合計電圧は 12.5V 以下とします。

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 swp3.asc

負荷開放時の保護や、バッテリーの過放電防止機能も欲しくなりますね。



スイッチング周波数はどこで決まるのか?

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 swp4.asc  swp4.plt

インダクターに流れる電流を断続させない、連続モードで動く SW レギュレーター です。 5V → 12V 0.2A で SW 周波数 100kHz を設計目標にしました。 スイッチング周波数は 電源電圧 Vs と L1 でほぼ決まります。 なぜなら、インダクターのリップル電流を決めて しまっているからです。

上記の回路動作では、開始後 4ms 〜 4.5ms の区間は負荷電流を 10% 増大させています (I1)。 応答は 素直で、リンギングなどを起こしていません。

もちろん制限はあって、負荷電流が約 50mA 以下に なると、断続モードになってしまいます。 特徴は:
・ 電源投入時等のサージ電流が皆無。
・ リンギングのダンプ素子を省ける。 無駄な電力を消費しない。
・ 電源電圧が一定なら SW 周波数も一定。 電源電圧が変動した場合の SW 周波数補正回路を組み込む ことも可能。


前記の回路は抽象的な部品を多用していました。 実際の 部品を使うとどうなるでしょうか。

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 swp5.zip

74hc.lib は LTspice User Group の Files > Lib > Digital 74HCxxx から入手しました。
開始後 3.2m 〜 3.6ms の区間は負荷電流を 10% 増大させていますが、応答は素直 です。 .MEAS m3 は b 点でのコンパレーター UTP/LTP、ヒステリシス電圧を測定してい ます。 同 m7, m8 はスイッチング周波数の測定です。

L1 の電流検出には高周波で大きな利得を必要とします。 当初ここに LM358 を使ったのですが、 遅すぎて無理でした。 GBW 10MHz くらいの OP アンプが必要です。 LM339/393 についても、 もう少し高速で安価なものがあれば、ぜひ使いたいところです。



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