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まずは LC フィルター回路の振動現象を解析してみました。

回路は、全波整流回路の後に3段もの LC フィルターをつけたものです。 (出所は伏せます。私はそんなことはしません。)
解析結果を見やすくするため、交流電源は 1kHz, ±10V peak、主フィルターコンデンサーは 4.7μF、負荷は 1KΩ としました。

 回路

原回路には C4, R7 のダンピング回路はありませんでした。 回路中で C4 を 3pF としていますが、これは浮遊容量のつもりです。 解析は、C4 = 3pF の場合と C4 = 100nF の場合に、ノード vc (整流ダイオード出力) の波形がどうなるか、ということに注目しています。

 C4 = 3pF, 100nF、開始から 2ms 〜 4ms

C4 = 3pF の場合は、当然ながらリンギングが出ます。 ダンピング回路を接続すれば (C4 = 100nF)、振動がダンプできます。

ここでちょっと興味深いことがあります。 シミュレーション解析の開始直後は、いったいどうなっているのか。

 C4 = 3pF, 100nF、開始から 0ms 〜 4ms

ノード vc の最大ピーク電圧は、約 13.3V にも達しています。 ここまでは予測していませんでした。 誰かに 聞かれれば思いついたかもしれませんが、その値まではとても言えませんね。


・ それならば

それだったら、もっと派手にベルを鳴らせて見よう、ということで、R6 = 220Ω、C3 = 33μF にしてみました。

 回路
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  C4 = 3pF、開始から 0 〜 10ms
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  C4 = 100nF、開始から 0 〜 10ms
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開始ベルの音は大きくなりました。 開始ベルの音にびっくりして失神してしまっているところも、見てしまいましたね。

 
・ ところで

整流ダイオードは理想素子か? 3pF なんていう偽の浮遊容量を使っていいものか? などという疑問もあります。 ダイオードは理想素子でした。 これを MURS120 (MOT), Si, 200V, 1A, Cjo=45p, Tt=45n に変えて、C4 = 3p と 33p の場合の差が、どのように結果に現れるか検討してみました。

 回路
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  C4 = 3pF、開始から 0 〜 10ms
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これの、失神から回復して 6 回目の「ベル音」に着目します。 主たるリンギング周波数は約 31KHz ですが、これに約 2MHz の振動が重なっています。 (これはかなり危険なシミュレーションです。後述。)

  C4 = 3pF、開始から 7.362 〜 7.662ms
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失神から回復して 6 回目の「ベル音」の、ごく最初の部分を詳細にシミュレート・表示させました。 (結果が出るまで、ちょっと待たされます。)

  C4 = 3pF、開始から 7.362 〜 7.365ms
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  C4 = 33pF、開始から 7.362 〜 7.365ms
 bs-7362-7365-33.png

なるほど、リンギングの周波数が変わっています。カーソルを当てて読み取ったところ、
 2.17MHz (C4 = 3p)
 1.74MHz (C4 = 33p)
でした。

ノード vf の電圧に 2MHz 程度の周波数成分はありませんし (グラフの青線)、100nF は 33pF + 2 * ダイオードの接合容量より十分に大きいとみなして、単純に 100μH との共振容量を求めると、
 2.17425MHz → 53.6p
 1.74027MHz → 83.6p

うそみたいに 30pF の増加を示しています。 (83.6p - 53.6p = 30pF, 33p - 3p = 30pF) ほんとかなあ〜。 目分量でカーソルを当てて読み取ったのに。

しかも、53.6p - 3p = 50.6pF。 整流ダイオード2個分の接合容量としては小さすぎませんかね。


・ 危険なシミュレーション

危険です。 前記「C4 = 3pF、開始から 7.362 〜 7.662ms」の時間軸を少しだけ長くした結果を紹介します。

 C4 = 3pF、開始から 7.362 〜 7.762ms
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そうなのです。 みごとに手抜きされました。 シミュレーションの高速化を望むからとも言えますが、やはりこのような振る舞いは知っておいて、十分に注意する必要があります。


・ 整流ダイオードの接合容量

サンプルに JFET を使用したクラップ発振回路があったので、その発振周波数から MURS120 2個分の接合容量を推定してみました。

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結果は、逆バイアス 2V のとき 40.6pF、逆バイアス 10V のとき 21.9pF 程度となりました。 (いずれもダイオード2個分の値)

以前、「ダイオード2個分の接合容量が 50.6pF とは小さすぎるのでは」などと書きましたが、逆バイアス 電圧が小さければ、ありうる値であることが確認できました。 近頃の整流用小型ダイオードは、接合容量が小さいんで すね。

まだいけませんね。 注目している MURS120 の逆バイアス電圧は、一個がほぼ 0V、もう一個は約 16V でしょうに。 これをちゃんと考えなくてはいけませんね。 未追求です。


・ 整流ダイオードの種類と逆方向回復時間

一般用整流ダイオードの SPICE モデルを見つけたので、ショットキー、高速シリコン、一般用シリコンダイオードの Turn off 性能を調べました。

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あ、1N4004 の逆方向回復時間がが一番短い、なんて大嘘。「そもそも部品の使い方を間違っている。 SPICE モデルの適用限界を知るべきだ。」と一喝されてしまいますよね。

使用した 1N4004 の SPICE モデルは http://www.fairchildsemi.com/models/PSPICE/Discrete/index.html から入手しました。

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