使用資材



林檎屋では農薬を減らすだけではなく、環境に負荷を与えるような資材を極力使わないように意識してきました。それはだいたいの場合、コスト高になったり不便になったりしました。それも最もなことで、「より安く、より効率的に」で世の中は動いてきたわけですから。でもそれは結果的に環境に大きなダメージを与えてきました。何もかもとは思いませんが、できることは少しずつでも変えていく意識が大切です。一人でも多くの人が。

 

梱包資材
ふつうりんごなどが送られてくると、同じ大きさのりんごがその形のプラスチックのトレイに並べられ、上や(2段であれば)間に発泡スチロールの緩衝材が入っていると思います。これらは輸送中の荷傷みを防ぐためのものですが、たった一度きり、片道乗車でゴミとなります。各家庭では一枚二枚でも、農家では何百枚、何千枚、選果場では何万枚、何十万枚、ものすごい量のプラスチックごみです。
ちょっと抵抗があります。
「可能な限り石油製品は使わない」これは私の私生活でも貫かれているポリシーです。(あくまで可能な限り、です)
林檎屋は大きさごとの選果もしないので、新聞紙やもみ殻(お米の殻)を使って送っています。その方が安くて楽だと思いますか。ところが、大きさがだいたい均等になるように分けるのも、新聞やもみ殻で詰めるのも、もみ殻を集めてくるのもとても手間です。一番最初に言ったように、安く効率よくできるようにしてきた結果が一般に普及しているやり方なのです。
大きさを揃え(選果)トレイに並べることを否定はしません。自然素材のトレイや緩衝材があればよいと思いますが、なかなか見つからないし何とか使えそうなものがあってもとても高価です。高価だから使う人が少ない、だから値も下がらない。世の中そんなものばかりです。
  

 

誘引ひも
果樹の仕事には、何かとひもを使った誘引作業が多いです。苗木を支柱に固定したり、枝が垂れないように吊ったり、向きを変えるために引っ張ったり、りんごのわい化(小さくする仕立て方)樹では枝の誘引作業は欠かせないものだったりします。
林檎屋では誘引などの作業には「紙ひも」(写真下)を使います。1〜2年しか持ちませんが地面に落ちても分解されるため、環境への負荷が少ないです。この辺りの農家では昔から「発泡ロープ」(写真上)と呼ばれるポリスチレン製のひもがよく使われます。縛りやすくある程度強度もあります。でも摩擦や紫外線などにも意外と弱く、細かく散り散りになって環境中にばらまかれます。私はこれが嫌でたまりません。まめに回収できる人はまだ良いのかもしれませんが、私のような人間には紙ひもが良いのです。
枝を吊ったり引っ張ったりする負荷のかかる作業に使うのが、「マイカ線(商品名です)」というポリエチレン製のきしめんのような形のひもです。ハウスを張るときにも使われます。これは石油製品ですが、丈夫で何年も持ち、ほどいて再使用することもできるのでまずまずといったところで使用しています。


 

 

その他
「そんなところまでこだわらなくても…」。そう思う方も大勢いるでしょう。でも、それの積み重ねなんです。そして一人ひとりの積み重ねなのです。そうしなければ環境に負荷を掛けない商品は、いつまでたっても高価で普及しないのです。
林檎屋の懐はとてもお寒い状況ですが、ポリシーを貫いています。
一人でも多くの人が少しずつ負担していけば、それでもだいぶ変わってゆくと思います。
消費者の方は、そういう面の負担も考慮してもらえたらと思います。

●「支柱」 
枝を支える支柱。プラスチック製が主流になっていますが、なるべく金属(鉄)製、または竹を使うようにしています。厳密にいえば鉄製も塗装してあるので石油製品を使っていますが…。
●「チェインソー オイル」 
古い樹、病気で枯れた樹、太い枝などを切るために、果樹農家には(意外に)チェインソーは必需品です。我が家は薪ストーブも使っているのでなおさらです。
チェインソーはエンジンオイルとは別に歯(チェイン)にもオイルを供給していて結構な量を消費します。
林檎屋では現在、生分解性のオイルを使うようにしています。これが一般のオイル(鉱物性)に比べかなり高価でおまけに近くで入手できない(エコが叫ばれながらもこれが現実)ため、送料をかけて取り寄せています。
●「シルバーポリ(反射マルチ)」 
アルミを蒸着したポリシートで、地面に敷いて光を反射させりんごや桃の色づきを良くします。気温の下がる頃収穫される晩生種、「ふじ」などによく使われます。
これは数年で劣化してゴミとなります。粘って使うほどぼろぼろ散り散りとなり、畑にバラまかれます。
そこまでする必要があるのか、と私なんかは思ってしまいますが、世間はそれほどに見た目重視なのです。りんごのお尻に色を付けてしまうと本当の熟度がわからなくなってしまうので、敷かない人もいます。
林檎屋ももちろん敷きません
●「塩ビ製品」 
塩化ビニールはご存知の通り燃やすとダイオキシンが発生します。また可塑剤として添加されるフタル酸エステルは環境ホルモンの疑いが掛けられています。
2000年でしたっけ?国の調査で焼却場からのダイオキシンが問題になったのは。でも高価な新型の焼却炉を建設することで一件落着?ゴミの減量という方向には向かわず塩ビ製品も相変わらず。つくる側、売る側の責任には触れず、ゴミの有料化と税金での負担が残りました。
塩化ビニールというのは優れた材質のようで、いろんなものに使われています。農業関係では、イボ付き軍手のイボ、ゴム手袋、合羽、長靴、剪定ハサミの持ち手、ゴムホース、トラックのシート、ハウスのビニールなどなど。
林檎屋では買う時には材質を見て使わないように、代替製品のあるものはなるべく探すようにしています。それでも剪定ばさみなど、使っているものもあります(もらいものとかもあるので)。
適正に処理されればそこまでしなくてもいいじゃないか、という人もいると思います。でも必ずしも適正には処理されないのです。ほとんどの人には塩ビ製品と言う意識はありません。イボイボ軍手もビニールテープも平気で燃やしてしまいます。捨ててしまいます。
塩ビは使わないに越したことはありません。やむを得ず代替出来るものがない場合に限るべきです。そういった環境にしなければ代替品の開発も進まないし、あっても高価なままなのです。