睦言
ぎゅ、とシーツにしがみ付いて、何とか気を保つ。後ろから打ち付けられ続け、どうにかなってしまいそうだ。
そんな気はないのに自然と息が荒くなる。感触のいい枕を抱き締め、再びシーツを握る手に力を込めた。
甘く酔い痴れるような感覚が全体に行き渡ったかと思えば、しがみ付いていた理性をあっけなく手放してしまった。
その後も抽送を続けた箕輪も直に果て、強くマルコを抱き締めて内部で印を吐き出した。
繋がったまま、箕輪は覆いかぶさって、離さない。唇で何度も背に痕を残していって、マルコは脱力感と箕輪の行為のそれに身を任せていた。
後始末も終え、心地よい疲労感を感じつつ、ベッドに横たわる。
「明日はお仕事?」
「休みだよ」
「そっか」
こっそり、箕輪に身を寄せている。どうやら無意識に行った行動らしく、箕輪がそれを指摘すると恥ずかしそうにしていた。
「じゃあ、長くいれる」
「長く? ずっと一緒にいようよ」
「……それって……」
「俺はいいんだぜぇ? いつだって待ってるよ、一緒にいれるときをね」
マルコは唇を噛み締めて、顔を逸らす。その頬は真っ赤だ。そんな彼が愛おしくて髪をそっと撫でた。くすぐったそうに目を瞑る仕草はそれはもう……。
「でも準備がいるかもね」
おかしそうに笑った箕輪に、マルコは疑問符を浮かべる。
「何で」
「まずこのベッド、狭くないかい? 大きいサイズにしようか」
「だ、だめ」
「? そうかい、でも窮屈だろ?」
「だって、勢一がぎゅってしてくれる」
「…………」
「いつもあんまり長くいれない、それになかなか会えない。だからマルコはこれでいい」
「……マルコ君には敵わないねぇ」
箕輪がぎゅってしてくれる、その言葉通りに、隣で身を寄せるマルコを抱き締めた。
「勢一」
嬉しそうな、弾む声で名を呼ばれた。たまらず浮ついた声を隠さずに「何だい?」と返せば、
「ちゅーしていい?」
可愛い要求に、笑顔でもちろんと答えれば、マルコは照れたように唇を押し付けたのだ。
朝は億劫だった。呼び起こすような朝日に誘われて意識を浮上させれば、食欲を誘ういい香りが漂ってきた。
「おはよう〜〜マルコ君……お、何か作ってるのかな」
「お日様を作ってます!」
意味のわからない言葉だったので素直にフライパンを覗いた。目玉焼きだった。
(なるほどねぇ……)
何かで見たが、どこかの国では太陽は黄色で描くものなのだとか。きっとマルコもその感覚なのだろう。
「俺からすれば、マルコ君が一番のお日様なんだけどねぇ〜……」
コンロの火を消したマルコに背後からぎゅっと抱き寄せた。甘く囁くような声で耳元を擽れば、マルコの肩は強張る。
「!! ……箕輪、まだ寝ぼけてる……ま、マルコは人間です、お日様なんかじゃない」
「眩しいし、いい匂いするし、マルコ君見てると気持ちが穏やかになるんだよね……」
やはり寝ぼけている。マルコはそう思った。
「うう、は、恥ずかしい、駄目!」
「ひひひっ可愛いね〜やっぱり、俺のマルコ君は」
「早く食べる! 箕輪の分もあるから! 一緒に食べよ?」
こんなに可愛くて虐め甲斐のある、自分に従順で素直で甘えてくる恋人からの愛しいお誘いを断る男は馬鹿だ、愚の骨頂だ。
髪の生え際を露出させ、卑猥な水音を立ててマルコを震わす。
「さあて、どっちのお日様を食べようかな……??」