財政危機 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ギリシャの財政危機の影響は、ユーロを直撃し、日本にも大きな混乱を引き起こしています。株式市場は混迷度を深め、日本の財政に対する信頼度の低下と共に外人売りが止まらない状況です。 この問題を考える時に大事なのは、将来に向けて財政が今のままで持続可能かどうかという視点です。そこで重要な指標となるのが、対名目GDP比でみた公債残高です。 財政を考える場合、税収で一般歳出が賄われていることを、プライマリーバランスが均衡していると言います。日本の場合、債務残高が既に大き過ぎ、かつ経済成長も今のままでは見込めないので、プライマリーバランスの回復はもはや不可能かも知れません。 日本の政府の公債残高は、すさまじい水準に及んでいます。1994年には、対GDP比80%の水準にあった国債の累積債務残高は、バブル崩壊後の景気後退における税収不足と、無規律な経済対策の結果、現在は199%を超えています。
そして、まもなく、日本政府の借金は1000兆円(GDP500兆円の200%)を超えます。
日本政府の債務は巨額であっても外国からの借金ではなく、国内の金融資産が債務の原資になっているので、心配無用とする意見が根強くあります。しかし、これは真であろうか。過去の成功体験に根ざした無責任な考えと思います。繰り返される政権の迷走も、このままでは一層深まる経済混迷を深めるばかりです。 まず、日銀が発表している資金循環勘定を基にした計算を見ていただきたい。図表1参照
これによると、2010年3月末時点で1453兆円である家計金融資産のうち、負債373兆円除いたネットの資産は1080兆円になります。次に、中央政府と地方公共団体を合計したネットの債務残高(負債1002兆円―資産482兆円)は520兆円になります。ネットの資産からネットの債務を差し引いて出てくる「国債消化余力」は、560兆円あることになります。 これによれば、確かに毎年50兆円増発したとしても、まだ10年強は国債の国内家計マネーによる消化は大丈夫だ、という話になります。亀井前大臣の景気浮揚での赤字公債論はこのようなところに論拠があるものと思います。これは、おかしな発想であり、10年経つと国債消化余力はゼロ、債務超過となり、企業であれば、倒産です。また、この「国債消化余力」は、現実には預金とか債券、株式資産になっており、国債を消化するにはこの資産を売らねばならないということから、ネットの消化余力と考えるには難があります。より厳密には、本邦対外資産・負債残高のうち、対外負債301兆円に対し、対外資産565億円、差し引き純資産264兆円を国債消化余力と見るのが妥当なところではないだろうか。つまり国際競争力、経常収支の動向が富の源泉として鍵となるということだと思います。確かに国は倒産しないという論もあるでしょう。アメリカのように基軸通貨としてのドルが信任を得ているならまだしも、グローバル経済の下では、無策でおればデフォルトとなります。あと10年もないのですね。 解決の処方箋は、小さな政府を実現し、分権国家に再編成し、もろもろの中央政府からの規制を撤廃し、2重行政を廃していく所にあり、官から民への労働移転を強力に進める所にあります。今争点になっている消費税などの小さな問題ではないと思います。地方により自立的な発展を促し、日本とアジアの各地域間で多様な相互補完関係を構築し、世界における日本経済の存在感・規模を飛躍的に拡大できれば、日本を破局から回避することになるでしょう。
|