ユーロ危機

一橋大の小川教授が日経新聞に、ユーロについての分析をされています。大変解りやすい記事ですので、ご参考に供します。添付記事をご覧下さい。

この中で、ユーロ圏、中でもPIGSと称されるポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシア・スペインはいずれも財政問題を抱えており、ユーロ圏の中でGDP­に占める比率が全体の35%にも上ること、政府債務がGDP比60%以下でなければ健全と言えないところ、当初からギリシアは114%を超えていた。また、財政赤字もユーロ発足当時の99年に16カ国で3%以内が妥当なところ2008年から2009年にかけて3倍の6%に達してしまった。それがリーマンショックと今回­のギリシャ問題の2度にわたって通貨下落を引き起こした。ドイツの国債空売り規制は、加盟国の足並みが揃わない単独介入では効果がない。といったことを述べられています。

詳細は、添付資料を読んでいただければいいのですが、問題は日本がとるべきスタンスなり、とるべき政府方針、対処法が明らかでありません。学術的な分析分野と経­済政策を担う政府の立場は当然違うものの、いま少し戦略的な提言は出来ないのか、このあたりは率直に言ってもどかしいところです。

ご存じの方は多いかと思いますが、東京市場での株式売買規模並びに為替市場規模は1日あたりそれぞれ2兆円強です。
これに対して、世界中の外国為替市場で取引されている通貨の額は、合計で350兆円とも400兆円ともいわれており、一国の株式市場など比較の対象にならないくらいの大きな金額が取引されています。それだけ外国為替市場の取引金額が大きいということは、流動性が高いということを意味します。流動性という面では、為替市場は売り買いの注文を出した時に、確実にそれが約定(成立)する状況が出来上がっているということです。しかも為替市場は土日を除いて24時間体制ですので、国家は、それだけ重要マターとして取り組む必要性があると思います。

中国は既に、200兆円からの外貨をドルで積み上げており、いつでも自国通貨である元の軟化(通貨下落)には対応できますが、反面、元の切り上げとなれば、外貨­の価値は切り上げ率に比例して下落してしまいます。そのように考えれば、ユーロ危機に際して、中国は大量のドルを供給しても何らの痛痒を感じません。日本も同様なのではないでしょうか。今回のユーロ危機に対して、一番の貢献役を果たした国はスイスです。5月のスイス中銀が抱えた外貨準備高は前月比730億ドル増の2000億ドル(18.3兆円)に上り、ECB(欧州中央銀行)が実施したユーロ国債買い入れ額を上回るものであったといわれています。理由は自国の輸出競争力の維持がその理由にあるといわれています。
ちょうど、構図は米国債を保有する中国とアメリカとの関係に似ています。

日本は、日銀はどうすべきなのか。そのあたりの考えは不明瞭です。少なくとも、ドル、ユーロに対しては国として市場介入すべきと思うのだが、何を躊躇っているの­でしょうか。今、世界の金融市場は、古典的な経済学では理解できません。より、機動的で国益を重視したスタンスが必要なのではな­いでしょうか。

何もしなければ、今起きている国内企業の外国脱出、国内雇用の不安定化、デフレ進行という悪循環になります。通貨に関しては、為替以外にFTAなどの関税などの­問題が関係してきますが、ユーロ安で1円動くとパナソニックの為替損失が70億円、ドル安で1円動くとトヨタ為替損失が150億円などといわれています。我々も­消衆者との立場で高い円の実力と安易に浸っていて良い問題ではないはずです。