あるべき日本の為替レート
日本の為替レートはどうあるべきなのか。
為替を考える上での重要なポイントの一つに、日本にとって内需拡大か外需拡大かという議論があります。
これが正しい議論とすれば、内需の拡大とは製造業による国内需要の発掘強化であり、介護・福祉等のサービス業の拡充、規制緩和による新規事業の緩和がある。
 
ごく大ざっぱな括りでとらえてみると、サービス業は生産性という面からいうと製造業の比ではなく、サービス価格は一般的に労働集約的であり、サービス価格は製造業に比して改善余地に乏しく、価格硬直的であるといえる。実際には1000円床屋、ワンコインタクシーなど低価格化の側面もあるが、あくまで国内市場のため、サービス価格というのは、製造業における輸出市場での価格押し下げ効果ほどのインパクトはない。
したがって、長いスパンでとらえてみると、内需の拡大策は国内サービス価格の上昇をもたらし、購買力平価説に基づけば、ドルと円との関係で見れば円安の方に向かってくるので中長期的には製造業にとってもメリットがあるといわれる。
 
問題は、そのような方向性が正しいとしても、その間、製造業が円高で押さえられ、生産性の向上という点では国際市場で大いに鍛えられることになるかも知れないが、果たしてそこまで製造業が耐えられるのかという根本的な疑問がある。そこまで、日本企業は強いのか?という率直な疑問がある。いま、世界では家電メーカーとして、世界を制覇しつつあるのはソニーでも日立東芝でもなく、SAMSUNG、自動車も、トヨタではなく現代自動車だと言われる。
民主党政権で当初、藤井財務大臣が為替に介入はしません、出来ません。といっていたのを思い出しますが、マスコミも、菅直人財務大臣が経済界を慮っての円安誘導発言をした折、不適切な言動と叩いたことがある。はたしてそれで正解なのか。
 
為替の水準を比較する手法として、実質レートというものがあるが、名目レートに日米の物価比率を勘案して判断するものだが、現在の1ドル90円台はリーマンショック以降に急速にデフレ化した日本経済にとって、30%以上も過大評価された水準にあるといわれる。そのようなシミュレーション結果も出ている(リンク参照は新聞の参考記事です)。つまり、ドル円は110円が適当ではないかという議論もある。これはリーマンショック前の水準に戻れということでもある。
 
このところの為替水準が実力以上の円高の現在、国として、何も手を打たないでいることが、不作為のそしりを受けても可笑しくない実情にあることを私たちは理解すべきではないのか。危機感を持たねばならない。国債発行残高が1000兆円に迫る中、国力が落ちているといっても、膨大な国民金融資産・郵貯マネーなどを活用すれば金融市場で円安誘導出来るのではないかと思うが、皆さんはどうお考えですか。ただ、これには国民全体が痛みを分かち合う、より正確に言えば、あらゆる行財政改革、就中、年金の一部削減、全ての公務員分野での給料カットが必然となる。失われた20年を回復するにはプラザ合意以前に戻す勇気を持つべきなのです。