日本の為替介入状況
円の実力、妥当水準性については、既載のとおりであり、ここでは所与のものとしてふれません。
問題の所在を、円高介入不在の現状にしぼりました。データはドルですが、介入必要性に関してはユーロも同様です。
 
グラフと、円高介入の歴史を見てください。わかり易いように1993から1995年のみ抜き出しています。
1993年から2005年の13年間においては、ドルが100円前後の水準になると必ず円売り介入しています。最も頻繁に介入したのは1999-2004年です。問題は、2005年秋以降、2010年に至るまで全く介入をしていない点です。そして今は88円台に突入しています。これでは、輸出企業は国際競争力を完全に失っています。
 
安倍内閣から94代菅内閣に至る5年間、政治のたらい回しとともに、日本経済は疲弊に疲弊を重ね、見る影もない状況になってしまいました。為替レートに関するスタンスに関しても、全くの素人、政権の体をなしておりません。我が国の経済にとって、どれだけ為替水準が重要であるか、町工場から中小工場の経営者の常識でもあるにかかわらずです。この国の政治的課題とも連動することですが、弱体政権のつけが出ていると言えます。
 
これも、便宜官僚主義の弊害でしょうが、日銀の独立性の美名のもとに、彼らはやるべき仕事をしていません。財務当局も顔の見えないサラリーマン財務官が増え、仕事をせずに頂くものはきっちり頂くというスタンスを続けています。
今の状況、財界の重鎮は何をしているのでしょう。経団連の顔も見えません。政権をこづきまわすくらいのパフォーマンスが必要です。このレート問題に関して理解があるのは、みんなの党のようです。
日銀介入実績
2月4日 トロント 為替市場で緊密に協調するという責務を再確認する。
4月25日 ワシントン G7蔵相、中央銀行総裁は為替市場における最近の動向に懸念を表明した。最近の動きは主要国の基礎的な経済条件で正当化できる水準を逸脱したとの認識で一致。引き続き為替市場で緊密な協力をしていくことで合意した。
10月7日 声明 G7蔵相、中央銀行総裁は4月の会合以降に始まった、主要通貨での秩序立った反転の動きを歓迎した。基礎的な経済ファンダメンタルズに合致した、これらの動きが継続することを歓迎する。
4月29日 ワシントン 我々は、為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきで過度の変動は望ましくないという点で合意した。最近の外国為替市場での動向を再点検し為替市場における緊密な協力に向けての継続的なコミットメントを確認した。
外国為替資金特別会計は、為替の安定を図るために、日本政府が、ドルを買ったり売ったりするものです。 
急激にドル安(円高)になりそうだと、円売り・ドル買い出動を行い、ドルを買い支えます。 これは政府の仕事であり、常道です。
具体的には、政府短期証券を発行して円資金を調達します。引き受け手は日銀・市中銀行です。この円資金を為替市場に売却し、ドルを買います。買ったドルは、ドル建て預金やドル建て証券・米国債などで保有します。この結果、特別会計の負債側に「政府短期証券」が増加し、資産側に「ドル預金・ドル証券」が増加します。今現在、企業会計でいう剰余金に相当する円貨が19年度決算値で」3兆9千億円も「埋蔵金」として溜め込まれています。短期的に言えば直ちに短期証券を発行せずとも介入できるのです。つまり、日銀に手がないのではなく、財務省の主導があるか無いかの問題なのです。昨今の円高で外為会計の含み損は相当に痛んできていると思われ、事なかれ主義はもはや許されるわけがありません。菅が、野田が言っても、アメリカが怖くて財務省の役人は動かない、ということを新聞記者筋の情報として聞いています。大臣命令に背いているというのが事実とすれば、直ちに首にするか、左遷すればよいことです。多分、内閣の腹が据わっていないということなのでしょう。

世界で競争していく幾多の先端技術を日本が保有していることは確かですが、為替問題を放置し続けて良いこととと議論は別儀です。ドル安という竹槍を持たせて大砲に向かえというに等しい論は、戦前の戦陣訓と同じです。為替介入は、韓国でも、中国でも何処の国でもあたりまえに行っていることなのです。為替は介入を含めた「市場」で構成されることを正しく理解しなければなりません。

菅総理の騎兵隊内閣は何処に行ったのでしょうか。 
高杉晋作の信奉者らしいですが、些か、「狂気」に欠けます。たしか、平成維新という言葉も使っていました。維新を革命と捉えれば、「狂気」すなわち究極の指導力なくしてことはなせません。
政府の無策を前提にした日本企業の海外積極脱出論には全く与できません。現状、政府は万策尽きた状況なのでしょうか。時勢は何故沸騰しないのでしょうか。企業人から政府に参加するシステムが無い現状では、今更、国内の構造改革・円安誘導を今行っても手遅れかも知れませんが、少なくとも今までの無策・無作為を修正することにはなるものと思います。
多弁多智、言い訳の多い世相では何事ももっともらしくも聞こえてきますが、ゆがんだ情報に国民が操作されているようで寂しい限りです。
蛇足ですが、為替に関しては、購買力平価を超えた円高放置は、将来に禍根を残し国の方向を誤ることになることもつけ足したいと思います。