国土交通省・農林水産省・環境省3省政務官による
「汚水処理検討会」の中間とりまとめの内容報告 
 前回、ご紹介した国土交通省・岡久宏史下水道部長へのインタビューの中で「国土交通省、農林水産省、環境省3省の政務官が集まって今後の汚水処理のあり方に関する検討会が開かれてきたが、このほどその中間報告がまとまった」というくだりがありました。その中間報告の中身が明らかになりましたので、ここで紹介したいと思います。
 縦割り行政のなかで、今までこの3省の政務官が一堂に会して、汚水処理の問題を検討するというようなことはなかったことですが、その集まりが画期的であるばかりでなく、内容的にも画期的なものを含んでおります。今後の日本の下水道を考えて行くなかで、極めて重要なものと思われます。
 
 まずはこの検討会の概要について説明します。ちょうど2年前の平成22年4月19日に第1回の会合を開き、以来、6回にわたって会議を開いてきました。検討会のメンバーは途中で異動のため変更がありましたが、国土交通省は津川祥吾政務官、農林水産省は森本哲生政務官、環境省は高山智司政務官です。
この間、平成22年6月には都道府県知事、全市町村長あてに汚水処理の現状や課題などについてアンケートを実施したり、「今後の汚水処理のあり方に関する検討会 有識者等委員会」を設置して学識経験者などから意見を求めたりして、このほど(平成24年4月4日付)で中間報告を取りまとめたものです。
 
 その中間取りまとめの概要は
 
 ①未整備地域における効率的な整備の在り方について
  1.効率的な早期整備推進における国の支援
  2.都道府県構想の徹底した見直しの加速
 
 ②汚水処理のグレードアップによる水環境保全への一層の貢献
  1.適正な維持管理の確保
  2.湖沼等の閉鎖性水域における富栄養化防止の取組強化
  3.単独浄化槽の解消
 
 ③循環型社会・低炭素社会の構築への貢献について
  1.汚水処理施設の有する資源の有効利用の促進
  2.民間資金やノウハウ等の活用
 
 ④健全な経営の確保に向けた対応について
  1.老朽化対策も含めた長期的・計画的な維持管理の実施
  2.包括民間委託等も考慮した維持管理コストの縮減
  3.健全経営のための支援
 
の4項目にわたるものです。
 
 各項目別にもう少し具体的に見て行きましょう。
 
①未整備地域における効率的な整備の在り方について
  未だ国民のおよそ7人に一人が汚水処理施設を利用できていない状況にあり、汚水処理施設の効率的な
 早期整備が求められている。
 1.関係省庁の緊密な連絡のもと、国として効率的な早期整備のため、支援をより  一層推進すること
 2.今後3省で連携し、都道府県構想策定マニュアルの作成等の支援により都道府県  構想の徹底した見
   直しを加速する
 
②汚水処理のグレードアップによる水環境保全への一層の貢献
  公共用水域の水質保全については、……特に三大湾や閉鎖性水域においては、依然として水質改善が
 進んでいない……。水環境の保全を図ることが必要である。
 1.適正な維持管理の確保
 2.湖沼等の閉鎖性水域における富栄養化防止の取り組み強化
 3.単独浄化槽の解消
    水質保全の観点から単独処理浄化槽やくみ取り便所の解消が図られるよう、下水道供用区域内にお
   ける下水道への接続促進、下水道計画区域外における農業集落排水施設・合併浄化槽への転換に向
   けた取り組みを強化するとともに、その重要性に関してより一層の環境教育・啓発普及の推進を図るこ
   と。
 
③循環型社会・低炭素社会の構築への貢献について
 1.汚水処理施設の有する資源の有効利用の促進
    汚水処理施設の有する熱、ガス、バイオマス(汚泥)、放流水等の資源については、循環型社会・低炭
   素社会の構築に貢献する観点から、今後より一層の有効利用を図ること。
 2.民間資金やノウハウの活用
 
④健全な経営の確保に向けた対応について
  ……汚水処理施設は、厳しい財政状況にありながらも、人口減少などの社会情勢の変化を踏まえつつ施
 設を適正に維持・更新していくことが求められている。 そのために……健全な経営の確保が求められてい
 る。
 1.老朽化対策も含めた長期的・計画的な維持管理の実施
  ・ ストックマネジメントの導入を推進すること
  ・ 老朽施設の改築に併せた施設の統合、複数処理場のネットワーク化や人口減少等 に応じた適切な 
   処理規模の見直しなどについて……汚水処理システムの再構築 を推進していくこと。
  ・ バイオマス利活用に配慮しつつ……汚泥処理の集約化・共同化を推進すること。
 2.包括民間委託等も考慮した維持管理コストの縮減
 3.健全経営のための支援
  ・ より一層計画性・透明性の高い経営が実現されるよう、引き続き経営計画の 策定等を推進すること
  ・ 経済的助成の仕組みを含めた地方公共団体の財政負担軽減のための仕組みにつ いて引き続き検 
   討すること。
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 この「検討会」はさらに続くことになりますが、大きな成果を期待したいところです。