全国市町村土壌浄化法連絡協議会
第13回全国大会 講演者のご紹介 
■ 基調講演者のご紹介
 13回を数える全国市町村土壌浄化法連絡協議会の全国大会に原子力の専門家が出席して基調講演を行うのは初めてのことです。講演を快諾して下さった西嶋茂宏教授は「未曾有の原子力災害に学者が手を拱いているわけにはいかない。しかもただ原子力の専門分野だけに閉じこもることも許されない。人間の命にかかわる根本的なこと、例えば上下水道など水の問題にも積極的に関わっていかなくては」と話しておられます。
 国土交通省の松原誠町村下水道対策官は、いわゆる儀礼的な挨拶に来られるのではなく、歴史的大問題の事態に直面して町村下水道はどうあるべきか、をしっかりと語って下さる予定です。
西嶋茂宏 氏
 肩書は「大阪大学大学院工学研究科教授(環境・エネルギー工学専攻・博士)」というもので、その研究内容は「量子線を利用したソフトマテリアルの創生と評価、(核融合用)超伝導磁石の安定性の研究……」と大阪大学の「研究者総覧」には紹介されています。一般的にいうと「原子力」の専門家です。本連絡協議会会長・竹内昰俊(会津坂下町町長)の「ご案内」にもある通り、あの未曾有の国難「東日本大震災」は、地震、津波による想像を絶する甚大な被害はもとより、原子力発電所のメルトダウンによる、放射能汚染というこれまた人類の生存にいまだかつてない危機を招来するものでした。この原子力災害をどう克服するか、は直接の被災地ばかりではなく、日本全体、いや人類全体の緊急課題であることは、誰も異論のないところでしょう。西嶋教授は、その専門的立場から、今年初め被災地を訪れ、さらに会津坂下町で放射能汚染の実態なども調査されました。
 今回の全国大会にあたり、「国難からの復興は下水道から」という本連絡協議会の主旨をご理解いただき、基調講演の要請を気持ちよく受け入れてくださいました。
 西嶋研究室では、人々の「生活の質」の向上を図るため、新たな学問の体系である応用福祉工学を確立することも目的としている、といいます。この国難からの復興にもその研究成果が反映されるものと思われます。「下水道と原子力」……、一見、遠い存在のように思われる事柄が、本大会ではきっちりとつながることになると思われます。
松原誠 氏 
 履歴書ふうに経歴を記します。
  ・平成 3年 建設省(当時)入省
  ・平成20年 国土交通省下水道部下水道事業部企画専門官
  ・平成22年 日本下水道事業団 事業統括部 計画課長
  ・平成24年 現職(水管理・国土保全局下水道部 町村下水道対策官)
 
経歴で分かる通り、今年から下水道部の町村下水道対策官という立場に立たれました。本連絡協議会が取り組み続けてきている「町村下水道」のまさに国の担当者であるわけです。松原氏は平成15年、京都府園部町(現南丹市)で開催された本連絡協議会の第4回大会、翌年の平成16年鹿児島県知覧町(現南九州市)で開催した第6回大会にもゲストとして出席いただき(当時の肩書は、都市・地域整備局下水道部下水道企画課課長補佐)、「安くていい技術に期待したい」と土壌浄化法への深い理解とエールを送っていただいたという経緯があります。以来8年、下水道を取り巻く情勢も変化してきております。国の行政の最先端のお話が伺えると思います。
■ パネラーのご紹介
 全国大会第2部はパネルディスカッションです。題して「第1次一括法の施行で地域主権を生かすためのパネルディスカッション」――。コーディネーターは、連絡協議会の稲垣茂事務局長です。竹内昰俊連絡協議会会長(福島県会津坂下町町長)を中心に5人のパネラーで議論を展開して行く予定だったのですが、急遽、福島県双葉郡楢葉町の草野孝前町長が、出席して原発事故によって町に何が起こったか、そこからどう立ち直るか、を話して下さることになりました。
 以下、草野前町長を始め、パネラーの方々のプロフィルを紹介いたします。
福島県楢葉町 草野孝前町長
 「前町長」と紹介せざるを得ないのですが、草野氏はつい4月まで町長でした。震災から1年、全町避難を余儀なくされた未曾有の事態に町民の先頭に立って困難に立ち向かった町長です。1992(平成4)年から5期20年の長きに渡って楢葉町の行政を担当して来た草野氏も今年は喜寿を迎え、「この際後進に道を譲るべき」と考え、今期限りでの引退を決意したのでした。本連絡協議会の全国大会には、退いてまだ1カ月経たないうちに馳せ参じて下さるわけです。
楢葉町は町域のほとんどが、問題の福島第1原発から20キロ範囲内に入る海岸の町です。町内には福島第2原発の4つの発電施設があります。津波に加え、予想だにしなかった原発のメルトダウン事故。約7700人の町民は全員が避難を余儀なくされ、町役場そのものもいわき市などに移転せざるを得ませんでした。避難住民の行く先は会津1400人、いわき300人、県外2700人などで、まだ故郷に戻れずにいます。大半が警戒区域に入っている楢葉町は、先日、政府が提示した「避難指示解除準備区域」の提案を容認しないことを決定しました。今後も広く、深く、深刻な問題が続いていくのです。なまなましい報告が聞かれるはずです。
熊本県南小国町 河津修司町長(当連絡協議会副会長)
 
 南小国町は、阿蘇山の北麓から大分県の日田市に通じる国道212号線沿いに開けた町です。阿蘇の外輪山の北側、阿蘇山を間近に望む高原の町で、近頃は温泉が人気を呼ぶ観光の町でもあります。河津町長は風光明媚な観光の町であるだけに、町のインフラ整備を熱心に続けてきました。とりわけ下水道の整備に関心が深く、身の丈にあった下水道を……を持論にして、土壌浄化法に並々ならぬ関心を示し続けてきました。「沢山の観光客を迎えるには、まず環境整備が重要。また我が町は九州一の大河「筑後川」の水源地でもある。上流で水を汚してはならない」とも強調します。
沖永良部島・知名町 平安正盛町長
 鹿児島県の奄美諸島は、中心になる大島から南へ徳之島、沖永良部島、与論島と連なって沖縄に至ります。知名町はその沖永良部にある2つの町の一つです(もう一つは和泊町)。人口は6600人。和泊町より400人ほど少ない南岸の町です。この町で土壌浄化法による下水道施設が完成して、最近通水式が行われたことはこのホームページでもお知らせしました。平安町長はこの下水道計画を推進した立役者です。美しいサンゴ礁の海の町で、なぜ土壌浄化法による下水道が推進されたのか、具体的な話が聞けるはずです。
 
福島県金山町 長谷川律夫町長 
 長谷川町長は昨年の全国大会に引き続いての出席です。奥会津の、只見川沿いに広がる金山町では、今まで夢のまた夢と思われて来た公共下水道を、県代行事業としてわずか80m3/日という小規模分散型で実現させた町です。その経験は、他の市町村でも大いなる参考になるはずです。
なお、長谷川町長は昨年の本大会に出席した日の夜、新潟・福島地方を襲った7月豪雨で只見川が氾濫、直ちに帰郷すると、その収拾の陣頭指揮に立たれたのでした。