激震地に集う  土壌浄化法・出前講座的研修会
 − 東日本大震災による下水道再興への提言 −
全国市町村土壌浄化法連絡協議会
事務局長 稲垣 茂
文化へのバロメーターとしてもて囃されてきた下水道事業が、今般の震災によって、多くの下水道施設が壊滅的な被害を被り、過去の阪神淡路大震災には見られなかった津波の被害により、東北地方沿岸部の多くの処理場が想定外の破壊力によって、無残な姿をさらけ出していた。

「百聞は一見にしかず」の諺どおり、仙台市南蒲生浄化センター及び宮城県仙塩浄化センターの屋上に立った時、同じ建物の上に避難した職員が撮影した津波のビデオと重ね合わせながら、下界を見渡すと、一同あまりにもひどいガレキの山を眺め涙することしかできなかった。ここでも尊い命が失われた方々に対し、改めて合掌し、ただただご冥福をお祈り申し上げるのみで、人間の無力さに業を煮やしたのであります。嘆き悲しむばかりが能ではなく、過去のあの世界大戦から見事復興を成し遂げた日本人、この困難を乗り切るため、震災発生直後から国土交通省や全国各地からの復興支援が迅速に実施され、応急処理の状態であったが、本格復旧に向けて現場における最高責任者の適切な指揮のもと、万全なる体制で作戦が展開されている様子を具に見ることができ安心したのであります。

しかし、我々は見たのである、応急処置から本格復旧に向けた取り組みや、その手順の説明を受けた時、従来の下水道施設の復元を念頭に入れたものであり、巨大津波の教訓を生かした下水道施設の復旧のために過去の反省点に立った充分な検証が、あまりにも復旧を急ぐため、なされてなかったように見えたのであります。(未来に向け、より快適で持続可能な下水道施設の実現が絶対に必要と感じた。)

今回の技術研修会のテーマは、「今われわれに何ができるか、何をなすべきか」を掲げ、今こそ、土壌浄化法の知恵と技術をあらためて世に問うため、被災地に設営したのであります。

○急ピッチで進む応急措置、本復旧への提言として
土壌浄化法の特徴   
会津坂下町 坂下東浄化センター
・ 二次公害が発生しない
・ 無人運転が可能
・ 維持管理が容易
・ 発生汚泥量が少ない
・ 建設金額が安価
・ 処理場が緑地公園 
土壌浄化法の規模
・ 地域に適した処理区域を設定
・ 管径を細く、土被りが浅くなるため管渠工事費が安価
・ 河川や逆勾配等の地形に応じて処理区域を分割
・ ポンプ場を下水処理場に
・ 70人、180人、750人、1000人、2000人、5000人規模の
 下水道が補助事業で採択実績有り
土壌浄化法は、下水道事業として各省から補助事業として採用されていますが、その取り扱いは法律によって運用が異なっているのが実態であります(国土交通省の補助事業は下水道法を適用)。今や「土壌被覆型礫間接触酸化法」として堂々認定「小規模下水道計画・設計・維持管理・指針と解説」(財)日本下水道協会 2004年度版参照。

また、この処理方式は、浄化槽の構造をベースに研究を重ねながら実績を上げてきた汚水処理技術であることから、建築基準法上の特別な浄化槽として大臣認定(人口規模 51人〜4000人まで取得・回想年表参照)、農業集落排水事業の分野にも進出し、良好な処理水確保のシステムとして活躍中であります。

残念なことに、私達が今回の被害に遭われた自治体を訪問し、処理場の位置と津波の因果関係を検証しながら、土壌浄化法による小規模分散型汚水処理システムの提案を試みたのでありますが、この処理方式を知っている自治体が少なかったです。今さらながら驚き、更なる努力と「震災復興」のために、土壌浄化法の果たすべき新たな役割について意気を感じたのであります。

○ 合併浄化槽優位論の問題点についても言及!
民主党政権になり、「コンクリートから人へ」の方針転換により、注目を浴びた事業仕分けで、下水道建設よりコストの安い浄化槽を導入すべきと、仕分けされたことについて、研修会の中で、将来に向けて″lえる時、大きな不安を感じるとの意見、反論があったことを特筆しますが、それは下水道化構想の中で策定した集合処理計画区域を、単に経済比較のみで合併浄化槽による個別処理に変える町村が増えている傾向にあるということであります。

心配・危惧する事は、浄化槽の維持管理、義務づけられている法定検査の受検率が、極めて低いというデータの公表もあり、結果として下水道が求める良好な放流水の確保≠ノついて、もっと真剣に考えるべきとの結論が、今回の技術研修会で総括がなされたのであります。

 してあげたい事よりも
      してほしくない事をしない事だよ
(地域振興に活かせ土壌浄化法。元気な東北を創るためガンバロウ日本)