豊田市は平成17年に7市町村が合併いたしまして、人口約42万人の市になりました。 面積は918平方キロですが、そのうち628平方キロは今回新しく加わった4町2村です。そのほとんどは中山間部です。その山間部は汚水処理施設の普及が大幅に遅れておりまして、それが大きな課題となっております。この山間部は生活排水の処理は遅れておりますが、豊田市にとっては重要な水源地ともなっておりますので、この水源を守り、汚水処理も適切に行う、という大きな課題となっているのです。
豊田市の水源である旧町村部、水源上流地区ですが合計26の自治区がありまして、そのうちの32%が合併浄化槽、37%は単独浄化槽、6%は汲取り式、26%が不明という状況です。旧豊田市の市街地区域は、公共下水道がほぼ完全に普及しているのですが、この水源でもある中山間部をどうするか、早急に取り組んでいかなければならないのですが、先程来話が出ているように大規模な公共下水道は莫大な費用がかかります。旧豊田市は、この間200億を越える巨費を投じて公共下水道を設置して来たわけで、同じようなことは経費の面からも、また山間部という立地条件からも、まったく不可能です。
豊田市は平成6年度から全国で初めて上流地域6町村の水源保全を目的とした水道水源保全基金」というものをスタートさせました。これは水道料金から1立法メートル当り1円の基金を積み立てる、というもので年間約4500万円になります。平成22年度でこの基金は4億8400万円ほどになっています。これは水道水源の水質保全事業として「水源の森事業」「水質保全対策事業」に活用しています。水質保全対策事業としては水源近くの家庭が高度処理型合併処理浄化槽へ切り替える場合の補助をしていますが年間約600基を整備しております。この事業で水質改善に一定の効果をあげてきているのですが、一方で課題、問題点も出てきています。浄化槽は維持管理に様々な問題があるのに、法定検査受検率がまだ低いこと、浄化槽そのものへの苦情が年間約30件ほどあることが挙げられます。だからといって小規模分散型の集落に対しては大規模下水道を作るわけにはいきません。当然方向は「小規模分散型下水道が必要」ということになります。
土壌浄化法は現在全国72か所で採用されていると承知しておりますが、小規模下水道としては多くの有利点を持っております。特に維持管理費が大変に低いこと(現在の豊田市の場合と比
較するとほぼ半分)など、持続可能な処理システムとして極めて魅力的です。東日本大震災で明らかになったように一極集中型から分散型がいいこと、特にリスクは分散させなくてはいけないなど、これからの下水道の在り方がはっきり見えてきたように思います。自然エネルギーや省エネルギーなど効率的な処理システムを採用しなくてはなりません。持続可能な下水道というわけです。これからは地域主権の時代です。地方自治体、地域の裁量で最も効果的な手法を選定して実施することが重要となります。 |