誕生日の楽しい過ごし方



誕生日といったって、もうお家でパーティーという歳ではないし、そんなに特別な日という印象はない。
実際、朝起きて普通に朝飯を食って朝練に行って、眠気と戦いながら授業を受けてその合間の休み時間、クラスの女子に声をかけられて初めて気がついたくらいだ。
「菅原クン、今日誕生日でしょ?」
「え?あ、そっか、今日13日か」
昨日までは「あーそういや明日誕生日か」とか思っていたはずなのに、いざ当日となるとぽろっと忘れてしまうのは何故だろう。
「誕生日おめでとー。はい、これあげる」
隣の席に座るその女の子に、プレゼントと称してポッキーを貰った。
「おーサンキュ」
「いえいえー。いつも消しゴム貸してもらったり、ノート見せてもらってるしね」
にこっと笑うと手をひらひらと振って別の友だちのところに駆けていった。


「大地、これ食べる?」
昼休み、いつものように教室で大地と向かい合って弁当を食べる。ふと思い出し、先ほど貰ったポッキーの箱を開けた。
「珍しいな、お菓子?」
「さっき貰ったんだ。誕生日プレゼントだって」
その言葉に大地はハッと気付いた表情になり、「そうだ」と声を上げた。
「スガ、今日誕生日だよな。悪い、遅くなったけど誕生日おめでとう」
ばつが悪そうに笑う大地に「ありがとう」と返す。
「あー昨日までは覚えてたんだけどな」
悔しそうな顔をする大地は、一度自分の席に戻り鞄の中をがさがさと探ると何か包みを持って戻ってきた。
「スガ、これプレゼント」
「え!?プレゼント?」
思わず大きな声を上げてしまう。なんというか、この年になって男同士でプレゼントとか、ちょっと予想外だった。
「今年は特に、スガにはすごい助けられてるし」
主将と副主将という立場上、そしてクラスメイトとして、たしかに今年はずっと一緒にいる。
「はい。誕生日おめでとう」
そう言っていつもの頼りになる笑顔で無機質な包みを差し出した。
「わ……ありがとう。すっげー嬉しい」
予想外なだけに喜びもひとしおだ。まさかこの年になって誕生日プレゼントにこんなに喜ぶことになるとは思わなかった。
「開けてみていい?」
「もちろん」
丁寧に包みを剥がしていくと、青と白の綺麗な色のスポーツタオルが出てきた。
「おお!」
「プレゼントとか、何を選べばいいか分からないよな。迷ったけど結局無難な物になった」
「いや、すげー嬉しい!大切に使うよ」
自然に顔がふにゃふにゃとにやける。本気で嬉しそうな菅原の様子に、大地の頬も緩む。
「喜んでもらえて良かった」
「おーマジでありがとな、大地!」
いそいそとプレゼントを包み直し、大事に鞄にしまう。
「やーっぱ、持つべきものは親友だよな!」
ハイテンションなままがしっと大地の首に腕を回す。
「これからもよろしくな、スガ」
「もちろん!」
誕生日ごときでここまでテンションが上がるなんてガキかと思いつつも、せっかくの誕生日だからこそ楽しい1日を過ごしたいとも思う。
その楽しい1日に、隣にこの親友がいてくれたら最高だ!






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