亭主の寸話65『平成の養生訓』 その2

     「店頭に並ぶ健康長寿食材」 

前回のコラムで老化を遅らせる食べ物があることがわかったので、早速、老化を遅らせる食材を買うために近所のスーパーへ行ってみよう。まず、野菜売り場に入ったらまずこれを買っておこう

@  ブロッコリー 緑黄色野菜の中でも「老化防止の王様」である。200種類以上の有効成分が含まれており抗酸化作用、抗腫瘍作用に優れている。さらにビタミンC(抗酸化作用)、カロテン(抗酸化作用)、イソチオシアネート(発癌抑制作用)、クロム(インスリンの働きを助ける)、ケルセチン(動脈硬化を予防)、ビタミンU(胃潰瘍を防ぐ)、食物繊維(動脈硬化を予防し便秘を改善)、スルフォラファン(肝臓での癌物質解毒に働くフェーズ2酵素群、抗酸化機能や免疫機能を増強)など多くを含む。これらが細胞に取り込まれると細胞の防衛機構を活発にする働きがある。ブロッコリーには房だけでなく茎にも栄養素が含まれているので全部食べるようにしよう。ブロッコリーの種子を発芽させた「スプラウト」にはこれらの機能性成分をさらに多く含まれており注目されている。

A  トマト 20122月に京都大学の研究グループが、「トマトに中性脂肪を燃やす働きがある」と報じマスコミの話題になった。赤い色「リコピン」には強い抗酸化力(ビタミンEの100倍)があり、活性酸素を除去し、癌に対する抑制作用がある。また、リコピンは血液脳関門を通過できるので脳の活性酸素を除去し、認知症の予防、目の老化予防にも効果がある。リコピンは熱にも強く、火を通しても効能が失われないのでどんな料理に使ってもリコピン効果を得ることが出来る。そのほかにもカリウム(体内の余分な塩分を排泄)、ケルセチン(動脈硬化を予防)、ピラジン(血液サラサラ)、 ビタミンH(肌の老化予防)、ビタミンP(毛細血管の強化)などが含まれている。できるだけ太陽の下で育った旬の、真っ赤なものを買おう。

B リンゴ 「1日一個のリンゴは医者を遠ざける」と言われている。数種類のポリフェノールが含まれており強い抗酸化力を持っている。これらのポリフェノールはリンゴの皮のすぐ下に蓄積されているので、リンゴをよく洗って皮ごと食べるのがいい。リンゴの皮の下に含まれるポリフェノールはカテキンの重合体で「プロシアニジン」と呼ばれるものであり、長寿遺伝子と言われるサーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする働きがある。さらに脂肪の蓄積を抑制し癌細胞を死滅させる働きもある。また、動物実験によるとリンゴエキスを餌に与えると心筋細胞の老化が抑えられ、若々しい心臓を保ち、雄のマウスで29%、メスで72%も寿命を延ばすことが出来たという結果を得ている。リンゴを加熱すると食物繊維ペクチンの抗酸化力は9倍に増大する。ペクチンは体内で水に溶けると腸の中を掃除して余分なコレステロールや中性脂肪を排泄する。その他、カリウム(余分な塩分の排斥、血圧の安定、体内の老廃物の排泄、疲労回復などの効果)、ケルセチン(抗酸化作用)などが含まれている。

C ニンジン 赤い色は「β-カロテン」、体内で必要な分だけがビタミンAに変わる。ビタミンAは皮膚や粘膜を丈夫にし、免疫力を高める。高脂血症や動脈硬化の改善と癌などの悪性腫瘍の発生を抑える働きが確認されており、さらに脳卒中のリスクも下げる。カリウム(高血圧を防ぐ)、カルシウム(骨や歯を強くする)も豊富であり老化防止に効果的。カルシウムは更年期障害も和らげる。11日にニンジン1/2本を目標に。β-カロテンはニンジンの皮のすぐ下にあるのでできるだけ皮をむかずに調理したい。また、油との相性がいいので油料理に適している。ビタミンAの過剰摂取には要注意だが、「にんじん」からの摂取程度なら心配なし。

 

つぎに魚売り場に立ち寄ったらこれを買っておこう

@     サケ 鮭の身の赤色は「アスタキサンチン」からなり、ビタミンE500倍の強い抗酸化力を持っている。トマトのリコピンよりも抗酸化力は数倍強く最強のカロテノイドとされている。鮭が産卵のために急流を遡上するときに発生する活性酸素をブロックする働きをしていると言われている。また、アスタキサンチンには脳の炎症を抑える働きも強く、脳細胞を修復してくれる。さらにビタミンA,ビタミンB2,ビタミンB12、ビタミンD,ビタミンEなどのほかDHA(脳や神経に取り込まれる),EPA(血管や血液に効果)も豊富に含んでいるので高齢者の生活習慣病予防に適している。火を通しても栄養価はほとんど変わらない。

A     サバ、アジ、イワシ、サンマ  青身の魚には高度不飽和脂肪酸を含んでいる。EPA(エイコサペンタエンサン)は血管を拡げて血行を良くし動脈硬化や脳血栓、心筋梗塞の予防に効果的。DHA(ドコサヘキサエンサン)は悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがある。さらに脳を活性化する働きもある。

DHA,EPAの多い魚ベスト10は、@マグロのトロ、A養殖ハマチ、Bサバ、C養殖マダイ、Dブリ、Eイワシ、Fサンマ、Gウナギ、Hハモ、Iタカベ(日本食品脂溶性成分表・文部科学省、より)。

青魚のDHAは高度不飽和脂肪酸であり、酸化に対して不安定である。野菜を食べて体内に抗酸化物質を十分に貯めていないと体内で酸化作用を受けて病気の原因を作ることも起こるので注意が必要。さらに干物や塩蔵品などで長期保存されたものも脂肪酸酸化には注意が必要。干物などは作るときにトコフェロールなど酸化抑制剤を塗布することもあるが、古くなると不飽和脂肪酸の酸化が進むので保存食とはいえなるべく早く食べるのがいい。夏場は缶詰などで青魚を摂取するのもひとつの方法。厚生労働省はEPA,DHA11g以上摂ることを推奨している。

 

つぎに精肉売り場に入ったらこれを買っておこう

@ 鶏ムネ肉 鶏の筋肉には「カルノシン」が多く含まれている。カルノシンは持久力、瞬発力に関係している。渡り鳥が海を渡って飛び続けられるのはカルノシンの効果である。カルノシンは活性酸素を除去し、乳酸を中和することで疲れを和らげる作用がある。カルノシンは鶏のムネ肉に多く、老化防止効果が高い。さらに低カロリーであり、肥満も防ぐ。必須アミノ酸のメチオニンも多く肝臓の働きを助ける効果がある。

A  豚のヒレ肉 豚肉には牛肉の10倍のビタミンB1が含まれている。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える働きがあり、疲労回復に効果がある。しかし、ビタミンB1は排泄されやすく、アリシンと一緒に摂ると効果的である。アリシンはタマネギ、ニンニク、ニラ、ネギなどに含まれており、これらと一緒に食べるのがよい。その他、豚肉はビタミンB2,ナイアシン、ビタミンEなども豊富に含んでいる。

このように科学の目を通してスーパーマーケットの店頭を見渡せば健康長寿を支えてくれる食べ物は意外に身近に並んでいることに気付くはずだ。

               (平成266月 記)

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