亭主の寸話42『最強の健康食品?豆乳ヨーグルト』

 

 豆乳が第2の発展期に入ってきたのではないかと話しましたが、豆乳がこのように消費者の支持を得られるのも、大豆の持つ健康機能に期待してのことである。ここでは繰り返してお話しませんが、大豆は多くの生活習慣病を改善してくれるいろいろな健康機能を持っている。そして、それらをそのまま持ち込んでいるのが豆乳です。その豆乳が消費者の好みに合わせていろいろと飲みやすさを工夫されるようになり、現在の豆乳の需要拡大に大きな力となっているように感じられます。私はこのような豆乳の商品展開を見ながら、以前から「豆乳ヨーグルト」の発展に期待をかけていた。それは豆乳の持ついろいろな健康機能に加えてもうひとつの健康の働きの場である腸内菌の改善が期待できるからである。それは従来の豆乳にないもうひとつの役割を加えたことになり、納豆と並ぶ大豆の2枚看板となりうるからである。納豆には納豆菌が加わったことで血栓溶解作用のナットウキナーゼや骨粗鬆症の改善につながるビタミンk2を備えた強力な健康大豆へと変身している。「豆乳ヨーグルト」は大豆のもつ健康機能に加えて、乳酸菌を腸に送り込むことによって免疫力の向上や便秘の改善、さらには癌の予防などにも役立つ新たな健康大豆へと変身することが出来る。今回はこの「豆乳ヨーグルト」についてお話したいと思っています。

豆乳には大豆の優れた健康機能が含まれていることは誰でも知っていたが、それでもいくつか大豆に欠けている働きもある。現在、豆乳と同じく健康機能を期待して多くの人たちに飲まれているものに牛乳がある。わが国では牛乳には、その時代に応じていろいろな健康への期待が寄せられていた。終戦直後の輸入脱脂粉乳の体力増強にはじまり、牛乳蛋白質+カルシウム強化、さらにカルシウムによる骨粗鬆症の改善など国民の栄養状態を反映しながら牛乳のキャッチフレーズは変化していきました。そしてすでにお話したように日本人の牛乳の消費量は米をはるかにしのぐ膨大な量へと拡大しているのです。しかし、これだけ牛乳を飲んでも骨粗鬆症は一向に改善されません。アメリカでは数年前から牛乳と骨粗鬆症の関係を声高に叫ばなくなったと聞いています。むしろ牛乳のマイナスの面を心配する声が大きくなってきているように感じています。それは牛乳に含まれる動物脂肪摂取によるコレステロールの増加や動脈硬化のおそれです。そこで注目が集まったのがコレステロールを全く含んでいない豆乳だったのです。

牛乳と豆乳は色も形状も似ており同じように健康にいいとされているが、それぞれに含まれている成分には特徴がある。まず、牛乳に含まれている油脂は動物脂肪で飽和脂肪酸が主体になっていますが、これに比べて豆乳には植物油脂で不飽和脂肪酸が多くコレステロールを下げる働きをしてくれます。飽和脂肪酸が多くなると動脈硬化へとつながる恐れが指摘されています。また、同じ摂取量から得られる蛋白質は牛乳よりも豆乳のほうがやや多く、さらに豆乳に含まれる大豆タンパクにはいろいろな健康機能も報告されています。また、牛乳の優れているところは、カルシウム、リン、ビタミンAが多いことですが、一方、豆乳の優れているところは、鉄分、カリウム、マグネシウム、ビタミンE,Kが多いことです。このように豆乳には牛乳に勝るとも劣らない優れた栄養成分が含まれています。

しかし、私たちが自分の健康を考えるときに思い浮かべなければならないもうひとつの見えない場面、すなわち体内に住み着いている腸内細菌群の働きも健康に大切な役割を担っているのです。私たちの体の中にはいろいろな細菌が住み着いており、その中のいくつかは私たちの健康に直接的に影響を与えていると見られています。特に小腸、大腸の中には40兆個とも100兆個ともいわれる細菌が住み着いており、彼らは私たちの健康に大きく関与しています。これらは大きく分けて善玉菌と悪玉菌に分けることが出来ます。この他に日和見菌といういやなやつもいて、私たちの体調が悪くなると悪玉菌のグループに加わって悪さをし、体調のいいときには知らぬ顔をしているというものまである。そして食事内容や体調によって善玉菌が増えたり悪玉菌が増加したりしているのです。私たちは生まれたときから一生彼ら腸内細菌と付き合っていかなければならないのです。そして私たちの体の中では善玉菌と悪玉菌が絶えず勢力争いを繰り返しているのです。善玉菌が優勢なときは体調がよく、悪玉菌に腸内を占領されると体調を崩してしまいます。善玉菌が増えて悪玉菌の増殖を抑えてくれていたら、私たちの体は免疫力が高まり、いろいろなビタミンを作り出すことが出来るのです。また腸の働きが良くなると、便秘や下痢を改善してくれます。一方、悪玉菌が増殖してくると食物の蛋白質や脂肪を分解して悪臭を放ち、アンモニアなどの有害物質を生産します。このような状態が長く続くとガンなどの病気のきっかけを作ってしまいます。腸内に善玉菌が多いか悪玉菌に支配されているかは自分の大便の状態とおならの臭いで大体は判断できます。便の色と形、柔らかさで腸の健全性が想像できるし、臭いおならが出るときには悪玉菌に支配されている状態です。

ここでいう良い腸内菌とは腸管に働きかけて免疫力を高めるたりビタミン合成などに役立っている乳酸菌やビフィズス菌のことです。私たちが腸内の乳酸菌やビフィズス菌を増やして体調を整えるにはヨーグルトなどでこれら善玉菌を送り込んでやるか、善玉菌のえさとなる食材を送り込んでやる必要がある。豆乳にこのような乳酸菌の働きが加わると最強の健康食品が出来上がることになります。ところがここにきて豆乳ヨーグルトが店頭でよく目に付くようになってきた。味もこれなら消費者に受けそうである。豆乳ヨーグルトの初登場は1980年頃の岡崎マルサンの「トーグルト」ではなかったかと思っている。ということは豆乳ヨーグルトにはすでに30年の歴史があることになる。

彼ら腸内細菌はなにも人間の健康のために働いているわけでもないのです。彼らは腸内で縄張り争いをしており、他の細菌を殺して自分の子孫を増やすために彼らは抗生物質や免疫物質を作って戦っているのです。彼らが作ったものが私たちの体の害になれば悪玉菌というレッテルを貼り付けてしまうのです。いい働きをする善玉菌を増やすためには絶えず腸に善玉菌を送り込んでやらなければなりません。いまでは腸内細菌を改善するために有益な微生物を食品として食べることをプロバイオティクスと呼んで大切な健康食と見られています。気をつけて食料品店のヨーグルトの棚を見ているとこの言葉が目に付きます。このプロバイオティクスにはガンの発生を予防したり血中の悪玉コレステロールを下げたり病原菌に対する拮抗作用などが知られており、免疫力の向上に大切なこととされています。また、プレバイオティクスという言葉も眼にしますが、これは有益な微生物であるプロバイオティクスの餌となって増殖を助けるもので、大豆オリゴ糖などが当てはまります。

腸内細菌は私たちの腸の中で絶えず激しい栄養分の争奪戦を展開しながら縄張り争いをしています。そのような中に新たな微生物が割り込んでいくには大勢で押しかけるか絶え間なく応援部隊が押しかけていかないとなかなか新参者にとっては住み着くのが厳しい社会のようです。生まれたときから腸管に住み着いている細菌は異物とは認識されず増殖が可能ですが、幼児期を過ぎてから食物と一緒に口から入る細菌は、それがたとえ善玉菌であってもなかなか住み着くことが難しいのです。そのため腸の中の善玉菌である乳酸菌を増やろうとすると、毎日欠かさずヨーグルトを食べ続けて初めて腸内細菌の改善が始まるのです。

人間は歳をとると次第に善玉菌の数が減って悪玉菌が勢力を広げはじめます。それに日和見菌が悪玉菌と一緒になって私たちの体調を崩す働きに加わるのです。高齢者が風邪を引くと、それをきっかけにいろいろな病気を招き入れてしまうのはこのためです。このような状態を招く要因はなにも加齢だけでなくストレスや食習慣、さらには抗生物質などの医薬品の過剰な摂取なども同じことを引き起こしてしまいます。最近では若者にも便秘症が多いと聞きます。これらは生活の乱れからくる腸の働きの乱れにより起こってくるものです。腸は栄養分の吸収をはじめとして体の働きを健全に保つ重要な役割をしています。これら腸の働きを整えるためにも「豆乳ヨーグルト」は力強い食べ物になるといえるでしょう。

このように「豆乳ヨーグルト」には、大豆食品を食べているだけでは得られない健康の力を与えてくれます。それは腸内に住み着いている微生物の働きが活発になることによるものです。大豆に微生物の働きが加わったものには他にもいくつかあります。納豆、味噌、醤油などにも納豆菌、麹菌が働きかけています。しかし、ヨーグルトには腸内で良い働きをしてくれる乳酸菌が加わっているので、彼らとは違った新しい働きをしてくれます。乳酸菌は古くから親しまれてきた漬物にも住み着いています。しかし、塩分のことを考えると豆乳ヨーグルトには遥かに及ばないことは言うまでもありません。豆乳ヨーグルトには新たな大豆健康食として今後も大いに注目していきたいと思っています。

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