加藤昇の(新)大豆の話

93. 日本大豆の生産性

前のコラムでのコスト比較にも見られたように日米の大豆栽培には大きな落差があります。農水省のデーターで見ると日本の大豆栽培の収率は全国平均で、1ha当たり1.66トンとなっています。しかしこれを都道府県別に見てみると、北海道では2.39トンと優れた収率を示しています。もちろん栽培品種は必ずしも同じではないが、これは品種の差というよりも気候と栽培形式によるものと考えられます。

 全国的に北海道に続く収率を示しているのは九州、佐賀県で1.95トンであり、北海道の大豆栽培がいかに生産性に優れているかがわかります。

さらに大豆の栽培面積を見ると圧倒的に北海道が広く、41,000haと、次に広い宮城県の11,200haや第3位の秋田県の8,700haに較べて4倍の広さとなっています。まさに日本の大豆栽培の主体は北海道で行われているという姿が浮かんできています。

 

 

単収(トン/ha

日本

 1.66

アメリカ

 3.38

ブラジル

 3.33

 

しかし、これを世界の大豆栽培のレベルと比べたらどうでしょうか。この表は世界の主要大豆生産国と日本の1ha当たりの大豆生産量を比較したものです。単年度の比較だと、その年の天候などによって作柄が強く影響を受けるので、2016,17,18年度の平均で比較してみました。それによると日本に比べてアメリカ、ブラジルは倍以上の生産性の差があることが分かります。この差は何によるものであるか、一概に決めつけることは難しいが、遺伝子組み換え大豆を栽培しているかどうかも大きな要因だと考えられます。アメリカもブラジルも90%以上の栽培大豆が遺伝子組み換え大豆になっています。遺伝子組み換え大豆は単に除草剤に対する抵抗性だけではなく生産収率も飛躍的に向上しており大規模栽培をしてもこの表にみられるように格段に高い生産性を示しています。そして世界の大豆栽培の約8割はこの遺伝子組み換え大豆になっています。遺伝子組み換え大豆を栽培している国は大体アメリカ、ブラジルに近い単収を記録しているのです。一方、中国は遺伝子組み換え大豆を栽培していないので日本と似た単収となっています。つまり、遺伝子組み換え大豆の生産面積が増えると大豆の生産収率が高まり、世界の大豆需給が安定してくるという図式が描かれているのです。もし、遺伝子組み換え大豆がなくて、世界の大豆生産量が現在の半分だったとしたらどうだろう。大豆価格は暴騰してしまい、それらは家畜飼料に反映しており、肉の価格や量がひっ迫してしまっていたことでしょう。私たちはこんなにも肉は食べられなかったし、日本の豆腐も倍以上の価格になっていたかもしれません。現在の世界の大豆価格は圧倒的に生産量の多い彼らの生産性を基準に決められているのです。そして国産大豆に対応する食品用輸入大豆もこれら国際相場に間接的に連動しているのです。輸入大豆の価格が国産に比べて安価なのはこのことを反映しているのでしょう。

 

 掲載日 2019.7

 

 

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