加藤昇の(新)大豆の話

8.  大豆の特徴とその健康機能について

大豆の特徴とは

大豆には他の植物にないいくつかの特徴が挙げられます。

まず第1に、根に根粒菌を持っておりこの菌が空気中の窒素ガスを固定化して自分の栄養として利用することが出来ることです。そのために大豆は痩せた肥料分の少ない土壌でも生育が出来るという特技があります。このことについては項目を改めて詳しく述べますが、厳密に言えば今ではマメ科植物以外にも窒素固定菌との共生が見られる植物も見つけられています。

2に優れたたんぱく質と油脂を豊富に持っていることです。大豆に含まれるたんぱく質には人の栄養に必要なアミノ酸をバランスよく含んでおり「アミノ酸スコア100」と呼ばれる良質のタンパク質です。油脂は「必須脂肪酸」と呼ばれる、食物として取り入れなければならない必要不可欠な多価不飽和脂肪酸を多く含んでいます。このようにアミノ酸スコア100のタンパク質と必須脂肪酸を豊富に含んでいる食材は非常に珍しく、大豆だけなのです。

 第3の特徴は、大豆には人の健康に効果のある物質を多く含んでいることです。大豆を素材とした食品では厚生労働省から特定保健用食品として7種類が認められています。このように一つの食材で7種類もの健康訴求が認められているものは大豆の他にはありません。

4の特徴は、すでに述べてきたように大豆は多くの作物の中で日本を原産地の一つにしている、貴重な作物なのです。現時点では大豆は中国、朝鮮半島と日本で同時に先祖種のツルマメから大豆に生まれ変わったとされています。私たちの身の回りには多くの食品で埋め尽くされていますが、その中にあって日本で生まれた、いわゆる本籍地を日本としている主要な作物は大豆だけです。

このように大豆には他の穀物に見られない優れた機能を持ち合わせている特異な植物ということが出来ます。

 

大豆の持つ健康機能

大豆にはいくつかの健康機能が知られています。それぞれについてはその都度紹介していきますが、ここではまとめて簡単に羅列しておきたいとおもいます。

大豆成分

健康機能

大豆タンパク

コレステロール低下、中性脂肪低下、抗肥満

大豆ペプチド

ダイエット効果、血圧改善、中性脂肪低下

大豆ステロール

コレステロール低下

大豆レシチン

脳機能改善、肝臓保護、コレステロール低下

大豆イソフラボン

更年期障害改善、発がんリスク低下、老化防止

大豆サポニン

抗コレステロール・高脂血症、肝臓障害抑制

大豆オリゴ糖

ビフィズス菌増殖、腸内フローラの改善

大豆レクチン

腫瘍成長抑制

フィチン酸

抗がん作用

トリプシンインヒビター

癌予防・転移抑制、インスリン増強作用

 

このように大豆の持つこれら健康機能が大豆の大きな魅力であり、今も多くの人たちによって自分の健康のために食べ続けられている理由でもあります。
近年の国民栄養調査によると摂取タンパク質の多くを動物性タンパクによる傾向が見られます。その時に同時に摂取される動物性脂肪がもたらす各種疾患にたいする懸念から、厚生労働省は「健康日本21」では植物性タンパク質として現在食べられている大豆類(1日当たり76g)を100gに増やそうとしています。厚生労働省では従来は機能性食品と言われていたもののうち、その食品の中の成分が科学的な試験結果に基づいて医学や栄養学の面から保健効果が認められた食品に対し、「特定保健用食品」と認定し、表示を許可する制度をスタートさせました。この特定保健用食品として認定された植物性タンパクが大豆と大豆製品でした。
大豆にはこのように健康機能が認められており、東アジア地域では多く食べられていますが、世界に目を向けると大豆を直接食品としている国民が意外に少ないのです。それは、私たちは子供の頃から大豆食品を食べ慣れているので気にならないのでしょうが、欧米の人たちにとっては意外にも大豆の匂いが気になるようです。


私が若い頃にアメリカでホームステイしている時に、よく台所で味噌汁を作っていました。すると私が調理したあとで家の人は必ず台所でローソクに火をを灯しているのです。私も初めのうちは気にしませんでしたが、やがてそれは味噌汁の匂いが台所に充満しているのを消すためにやっていることだとわかりました。私はそれが分かってからは味噌汁を作るのをやめましたが、食習慣の違いを思い知らされた思いがしました。だから彼らが大豆を利用するときには大豆たんぱくを分離して食材としようとしているのはなるべく匂い成分を取り除いておきたいところにあるのではないかと思っています。

しかし大豆にはここに見るように多くの健康機能が含まれていることが知られるところとなり、海外でも大豆成分を多く取り入れた食品が徐々に広がりつつあります。

 

                          掲載日 2023.8

 

 

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