加藤昇の(新)大豆の話

63. ビタミンEについて

大豆に含まれる健康成分のもう一つの柱はビタミンEです。ビタミンEには強い抗酸化作用が認められており、体の組織を酸化から守ってくれる働きがあるために「美と若さのビタミン」と言われています。ビタミンEの生理活性として最初に認められたのは不妊症予防でした。

現在、ビタミンEを取り出す原料としては、大豆などの植物油とナッツ類があります。大豆から植物油を抽出するときに油と一緒にビタミンEが取り出されるのです。ビタミンEはトコフェロールとも呼ばれています。トコ(Tocos)とはギリシャ語で「子供を産む」という意味があり、フェロールには「力を与える」の意味があります。つまりトコフェロールには子供をつくる若さの素、との意味が込められているのです。

ビタミンEには4種類あり、アルファ(α)・トコフェロール、ベータ(β)・トコフェロール、ガンマ(γ)・トコフェロール、デルタ(δ)・トコフェロールと呼ばれていますが、体の生理活性に最も強い反応が認められているのは、アルファ・トコフェロールです。

 

ビタミンEの健康効果

ビタミンEにはどんな健康機能があるのか、簡単にまとめてみると次のようになります。まず、ビタミンEには強い抗酸化作用があります。抗酸化作用とは、体内に過剰に発生する活性酸素の力を消す作用のことです。我々の細胞は不飽和脂肪酸によって細胞膜が作られています。そして私たちは絶えず呼吸していることによって体内に酸素が取り込まれているのです。だから体に取り込まれた酸素が絶えず体内で酸化反応に関与しようとしています。身体の細胞は酸化されることにより錆を作り、いろいろな病気の原因を作ります。ビタミンEは活性酸素の働きを抑制することにより、老化現象を引き起こす要因となる過酸化脂質の生成を抑える働きをしています。体内は代謝によって生まれる強力な活性酸素に絶えずさらされているのです。この活性酸素から生体を守ってくれているのがビタミンEです。その抗酸化力によって血管に血栓ができにくくなることから、動脈硬化を予防し、血行促進作用もあることから心筋梗塞や脳卒中などといった危険な生活習慣病の発症を予防するといった効能があるとされています。このビタミンEが欠乏するといろいろな組織が酸化を受けて老化してしまいます。また、ビタミンEは紫外線によって体内で発生した活性酸素を除去する働きもあり、皮膚の新陳代謝を高めてメラニン色素が沈着するのを防止することから、シミやソバカスの予防に繋がるといった美肌効果が期待できます。このように健康面に限らず美容面においても効果的な作用があります。

又、活性酸素は色々な病気の原因にもなっていて、ビタミンEはガンの予防にも効果があると考えられており、国立がんセンターが公表しているがんを防ぐための12ヵ条でも取り上げられています。

 

ビタミンEは副腎や卵巣に含まれており、直接男性ホルモンや女性ホルモンに関与しており、不妊に対して効果があるとされています。

私の身近で起こったことで忘れられない出来事がありました。精製ビタミンEを作っていた時に身近にいた関係者が、「もし、これを飲んで息子夫妻に子供が出来たら大変ありがたい」と言ってビタミンE錠剤をいくつか持って帰りました。ところが数か月してその人から連絡があり、「息子夫妻に子供が出来た」と大喜びの電話がきたのです。その後、大変な感謝の気持ちを我々に表してくれたという思い出があります。勿論これは偶然が重なったのかも知れませんが、本で知っていた不妊の改善効果が自分の目の前の出来事になるとは思ってもいなくて、驚きと同時に忘れられない一コマとなりました。

 

 掲載日 2019.7

 

 

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