加藤昇の(新)大豆の話

62. レシチンの利用

  レシチンを最初に利用したのは食品添加物で、それはマーガリンを加熱調理した時にハネないように加えたのでした。マーガリンでは加熱することによって油脂から水分が分離するブリーディングという現象が起こらないようにレシチンを加えてあるのです。さらにチョコレートにも口に入れた時の滑らかさを増すように添加しています。最近の食品用途として多いのは、めん類への利用です。フライ麺にたいして生麺に近い風味をつけるためにレシチンが使われているのです。澱粉にレシチンを混ぜると澱粉の劣化、老化を防ぐことに役立つため、乳化剤というより品質改良剤としての使い方も広がっており、多くのパンやケーキにも転化されています。工業用分野では塗料、インキ、ゴムなどの工業製品にも広く利用されており、また、化粧品・医薬品領域では成分を包み込んで体の組織に運び込む微小顆粒リポゾームの主成分としても用いられています。食品添加剤としてさらにレシチンの乳化機能を強化したのが酵素処理レシチンです。低温でも強い乳化力を示したり、酸や塩に対する安定性を高めるなどいろいろ機能を備えることにより、新たな分野にも利用範囲を広げています。

 

 大豆レシチンが持つ主な機能は次のようなものです。

@  乳化作用

A  分散作用

B  離型作用

C  酸化防止作用

D  たんぱく質との相互作用

E  でんぷんとの相互作用

F  保水作用

G  起泡・消泡作用

H  粘度低下作用

I  生理活性作用

 

このようにレシチンには広い物理化学的機能が備わっています。

このレシチンは低温でも強い乳化力を示し、酸やアルカリに対する安定性を高めるなどいろいろ機能を備えることにより、新たな分野に利用領域を広げています。 

このようにレシチンの持つ機能性は非常に広範囲に及んでおり、その用途は食品分野に留まらず、医薬品、工業分野にも幅広く利用されています。

 

大豆レシチンの生理活性

 レシチンの健康機能としては、体にたまっている老廃物を除去するデトックス効果として知られていました。また、レシチンが体を作っている細胞膜の構成成分であることから、細胞膜の流動性、柔軟性を通じて体全体の調節に直接関与すると共に、いくつかの生理活性機能も発揮しています。多くの臨床試験で、動脈硬化の予防および治療、血清コレステロールの低下、HDLコレステロールの増加とLDLコレステロール降下、血液粘度低下と血流改善などいろいろな効果が認められています。この他にも低下している免疫力を回復させる効果も報告されています。これらをまとめると、レシチンの主な生理作用は次のようになります、

@  細胞膜の構成成分としての役割

A  肺機能の改善

B  脂質代謝の改善

C  動脈硬化症の改善

D  肝臓疾患の改善

E  神経機能の改善

 

 これらレシチンは生物の生命機能に深く関与している物質であり、あらゆる生命活動の場に存在している物質ですが、現在工業的に多量に取り出して利用されているのは大豆レシチンと卵レシチンです。大豆レシチンは大豆油製造工程で取り出されて精製されて利用されており、卵レシチンはマヨネーズなどの生産工程で取り出されているのです。

 掲載日 2019.7

 

 

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