加藤昇の(新)大豆の話

49. 油脂を摂ると肥満になるの?

 テレビでも盛んにダイエットのために油の摂取を減らすようにと繰り返して話しているのをよく見ます。もちろん油を摂りすぎると肥満になることは否定しませんが、そんな単純な仕組みでもないのです。そもそも私たちはどの程度油を摂取しているのでしょうか。厚生労働省が発表した平成24年度国民健康・栄養調査によると、私たちは一日の摂取エネルギーの27%を油脂から取り入れているのです。油脂はエネルギー発生量も多いとのイメージもあるので、この数字にアレッと思われたのではないでしょうか。私たちが実際に摂取しているエネルギーは、実は糖質からが6割近くと最も多く摂っているのです。そしてこの糖質と脂質が体内に吸収されてエネルギーなどに活用され、使い切れなかった余分なエネルギーが脂肪として体内に蓄積されるのです。だから体内に蓄積される脂肪量の約6割は炭水化物(糖質)によるものなのです。そのことを念頭に入れておいて体内に脂肪細胞が増えていくメカニズムを見てみましょう。

 

 体内では余分な脂肪や糖質は再合成されて中性脂肪として脂肪組織の中に蓄積されていきます。そして余分な中性脂肪はまず、皮下脂肪の組織に蓄積されるのです。皮下脂肪とは皮膚を指でつまんで分かる脂肪組織で、体のエネルギーとして使われる他にも体温を逃がさない断熱材としての役割や外部からの衝撃を和らげるクッションの働きをしてくれています。しかし、そこが脂肪で満杯になって入りきれなかった余分な脂肪は内臓脂肪の組織に貯まり始めます。内臓脂肪は、お腹の内部に溜まるもので内臓の周辺に脂肪組織が生まれてきます。さらにここでも収まりきらない過剰な脂肪は肝臓や筋肉などいろいろな組織に入り込みます。このように本来の脂肪組織が集まる場所でないところに溜まっていくのを異所性脂肪と呼ばれています。この時に肝臓や筋肉などに脂肪が蓄積するようになります。このような状態になると健康を損なう危険性が起こってきます。こうしてためられた脂肪はじっとそこに止まるのではなく絶えず分解されながらエネルギー源として利用され、使いきれなかった脂肪は再びここに蓄積されているのです。

その他に褐色脂肪細胞と呼ばれる組織もあります。しかしこの脂肪組織は蓄積されている中性脂肪をエネルギーに変換していく働きをしますが、ある年齢を過ぎると褐色脂肪細胞は衰退してしまうために体内の脂肪がなかなか減っていかないという現象につながっているのです。

 実はこれらの脂肪細胞はいろいろなメッセージ物質を体内のいろいろな臓器に向かって発信していることが最近の研究で明かにされています。その一つが食欲を抑えるメッセージ物質レプチンです。体内に脂肪組織がある程度蓄積するとレプチンという情報物質を出して脳に満腹になったというシグナルを送っているのです。そしてこの脂肪細胞から発信されたメッセージを受けて脳からは食欲を抑えるような指令を発するのです。しかし脂肪細胞が異常に増えすぎると脂肪細胞から出される情報発信に乱れが生じ、レプチンの働きが弱まったりメッセージの乱れから免疫細胞の暴走が起こるなどの混乱が生ずることが知られています。その結果として花粉症や喘息、アレルギー性疾患などが発生することが指摘されており、パーキンソン病、うつ病、動脈硬化、自己免疫疾患、癌などの引き金を引く危険性が高まるとされています。これが肥満がもたらす弊害とされています。

 また脂肪細胞からはアディポネクチンという血管の若さを保つ物質も出ており、肥満はこの働きも阻害してしまいます。まさに私たちの脂肪組織は体の一つの臓器として全身の健康状態に大きな影響を及ぼす役割もしているのです。しかし、過度に脂肪細胞を肥大化させてしまうと本来の機能が果たせなくなり体に間違ったシグナルを発してしまうようになるのです。

 

我々が食べ物として取り込んだ油脂は小腸で吸収されて体内に入っていきますが、体内に吸収されるために油脂は脂肪酸とグリセリンに分解されてしまいます。これらの分解物は体内で再合成されて再び中性脂肪になりますが、そこにはもう大豆油とかオリーブ油といった油脂のラベルはなく、単に中性脂肪として体内の循環システムに乗って運ばれていく物質にすぎないのです。だから大豆油など油脂に名前がついているのは小腸から体内に入っていくまでの食道機関を通っているまでということになります。

 

 まず脂肪組織の主原因ともいえる糖質の吸収と脂肪細胞蓄積について見てみましょう。糖質はアミラーゼという酵素で分解されて小腸から体内に入り込みます。取り込まれた糖分は肝臓を経由して血液中に入り込んで血糖として血管内を循環します。血糖は脳の神経細胞や筋肉など体のいろいろな組織でエネルギーとして使われますが、使いきれなかった余分な血糖は最終的には脂肪細胞で中性脂肪の形で蓄えられるようになります。グルコースは肝臓や筋肉でグリコーゲンという貯蔵型の糖質として蓄えられますがその量には限界があり、それを超えた糖質は中性脂肪に変えられて脂肪組織に蓄積されます。この時に膵臓から分泌されるインスリンの働きが必要になります。だから糖分を多く摂取しているとインスリンが多く使われてしまい、膵臓が疲弊して糖尿病になってしまうのです。最も体脂肪になりやすい糖質は果糖です。果糖は小腸から吸収されて肝臓を通るまでにすでにその8割は中性脂肪に変換されてしまうとされています。そしてここでもインスリンの働きを弱めてしまうことになるのです。この果糖はノンカロリー清涼飲料水などとして私たちの身の回りに多く見られるようになっており、これらに配合されている果糖は、高果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖などと表示されて配合されています。高果糖液糖とはその成分の90%以上が果糖である液糖を指しており、最も脂肪に変換されやすい成分です。果糖ブドウ糖液糖は50-90%が果糖成分である液糖です。ブドウ糖果糖液糖はブドウ糖の比率が高く果糖の割合が50%以下となっている液糖です。これら果糖の甘味はブドウ糖の2倍の甘さがあり少量の添加で甘味を感じるので効果的ですが、ネズミによる飼育試験ではブドウ糖に比べて4倍の中性脂肪が血液中に溜まることが分かっています。しかもこの果糖はある程度摂取しても食欲を抑えるシグナルを発信しないという特徴があり、エネルギーの摂りすぎを起こしやすく、肥満につながりやすいとされています。

 

 一方、油脂は口から食べられると、さきにも書いたように小腸で吸収される直前に脂肪酸とグリセリンに分解されてしまいます。小腸から体内に入って再び中性脂肪に合成されますが、ここからは2つのルートに分かれます。 まず第1のルートとして、再合成された中性脂肪は小腸から肝臓組織へ向かいます。それは、中性脂肪はそのままの形では血液の中に入れないので、肝臓でたんぱく質と結合してVLDL(超低比重リポタンパク)という物質になるためです。この物質の半分は中性脂肪が占めています。この形に姿を変えて血液の中に入り全身を巡りながら筋肉などの必要な所へ中性脂肪を運んでいきエネルギー源として、ホルモン物質の原材料として、さらには体組織の素材として活用されていきます。もう一つのルートは肝臓を介さずにリンパ管に入るものです。その時にも小腸でたんぱく質と合体して「カイロミクロン」という物質に合成されてからリンパ管へ入っていきます。このカイロミクロンの85%は中性脂肪であり、この形になってから全身を巡り始めます。

しかし、摂取した油脂が全身を巡ってもすべて使い切ってしまうことはありません。使いきれなかった中性脂肪はVLDLとカイロミクロンの形で脂肪細胞まで運ばれて行き、ここでリポタンパクリパーゼという酵素の働きで脂肪酸だけが脂肪細胞に貯蔵されていきます。残されたグリセロールは肝臓に運ばれ、ここで糖質や中性脂肪に変換されて蓄積されていきます。

 このように我々が体をあまり動かさず、エネルギーを使わない状態で糖分や脂肪を摂取していると、体内ではせっせと脂肪細胞を溜め込み始め、それがある限度を超えるようになるといろいろな体調不良のきっかけとなっていくのです。せめて皮下脂肪か若干の内臓脂肪の程度に収めておいて運動もおろそかにしないように心がける必要がありますね。

  掲載日 2019.7

 

 

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