加藤昇の(新)大豆の話

41. 組織状大豆たんぱくの利用

  我が国では昔から大豆は食材の柱として豆腐や煮豆、黄粉などに長年にわたって大切に使われてきました。こうした大豆の利用の仕方と違って、大豆からタンパク質を分離して利用するという蛋白食品への応用の道が広がっています。このような大豆たんぱくの食品への取り組みは1960年代から盛んに研究され、産業界でも一時エクストゥルーダーを使った人工肉への応用として関心が高まりました。その後地道な努力が続き、大豆たんぱくを原料とした「粉末状タンパク」、「繊維状タンパク」、「粒状タンパク」など組織状タンパクの食品分野への用途拡大が進んでいきました。近年では大豆たんぱくの健康効果が明らかになり、家庭料理にも利用できるように食材店では「大豆肉」、「大豆プロテイン」などの名称で売られているものもあります。ここに示した生産量推移のグラフは国内の大豆タンパク製品全体の生産量を示したものです。その利用状況はグラフで見られる通り着実に拡大しています。

 

                 (農水省資料による)

 

 このグラフに見られるように、これら組織状大豆タンパクは現在、食品分野で広く使われていますが、民間の調査会社「日本能率協会総合研究所」が行った市場調査では、近年本物の肉と区別がつかない風味と外観を備えた、新たな「人工肉」市場が大きく伸びており、それらの商品は2025年には世界で1,500億円の市場規模に達すると予測されており、ハンバーガーパテ、チキンナゲット、ソーセージなどの商品として現在消費者に提供されています。日本でもこれらの商品は若者を含む広い顧客に受け入れられており、大豆たんぱくの新たな市場として今後発展していくことでしょう。

 

 わが国で現在大豆たんぱくとして利用されている主な用途を挙げれば次の通りです。

 

効果・効能

利用分野

栄養強化

プロティンパウダー、菓子類、育児粉乳、経腸栄養剤など

脂肪分離防止

ソーセージ、から揚げ、とんかつ、スープ、ドレッシングなど

粘着・離水防止

ハム、麺類、

保型性向上

かまぼこ、ちくわ、プレスハムなど

食感改良

パン、麺、焼きふ、ころも

噛み応え

ハンバーグ、ナゲット、ミートボール、餃子、シューマイ、

中華まんじゅうなど

焼き縮み防止

ハンバーグ、メンチカツ、クッキー、キャンディなど

 

これら大豆たんぱくの食品素材としての活用は、単純にコストダウンを狙ったものではなく、大豆たんぱくが持つ各種物性の活用が基本となり広がっているのです。

大豆タンパクを素材とした組織状タンパクは世界的にも応用が広がっています。それは、動物性タンパクにこの組織タンパクを添加した時には、動物性タンパクと植物性タンパクが互いの物性の欠点を補強する働きをすることにより、さらに優れた性質を持つようになることが知られており、その利用の幅が広がっているのです。また、宗教上の理由やベジタリアンとして植物性タンパクを求めている人たちにも歓迎されているのです。

 

 掲載日 2019.7

 

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