加藤昇の(新)大豆の話
37. 醤油の健康効果
醤油には本来大豆などに含まれている健康効果に加えて、麹菌による発酵によって生み出された健康機能が加味されて幅広い働きをしてくれています。
ニコチアナミン: この物質は大豆中にあるアミノ酸の一種ですが、血圧の上昇を抑制する作用が見出されています。
ギャバ: これもアミノ酸の一種ですが、主に脳内に存在する抑制性神経伝達物質の一種で、精神安定作用の他にも血圧低下作用や脳の血流を改善する働きが知られています。
メラノイジン: 醤油の褐色の色素ですが、血圧降下効果、コレステロール低減効果、急激な血糖値の変化を防ぐ働きなどが見出されています。癌の発生も抑えるとされています。
フラボン: 大豆のイソフラボンが醸造中に酒石酸誘導体になったもので、強い抗ヒスタミン性(アンギオテンシンT変換酵素(ACE)の阻害能)があり、血圧の調整をする働きがあります。
フラノン: 醤油の香気成分の一種で、強い抗酸化効果があります。コレステロールの低下効果も見られています。
ペクチン: 大豆に含まれる食物繊維の一種ですが、整腸作用やそれに伴う免疫力アップの効果が認められてアレルギーを抑える働きをしています。
油がないのになぜ醤油と書くのか
味噌には大豆と米、小麦などを混ぜて麹菌によって発酵させアミノ酸の旨みがたっぷり詰まった「醤(ひしお)」であり、油脂の多くは遊離脂肪酸として含まれています。しかし、醤油には、原料の大豆や小麦に含まれていた油分は全く含まれていません。原料の段階ですでに脱脂しておくか、製造の途中で油分を取り除いています。 それなのに何故、醤油として「油」の文字がついているのでしょうか。不思議に思ったことはありませんか。実は醤油に使っている「油」の文字は油脂を指していないのだそうです。各種「醤」を作り出した中国では「油」という字は単に油脂を表現しているだけではなくて粘度をもってゆっくりと流れる状態を示している形容詞としても使われているようで、「油油」という言葉もあるほどです。これはとろーりとした状態を表しているのです。このように「油」にはゆったりと流れる状態を表しており、濃厚な「溜まり醤油」がとろーりと流れる状態を示しているようです。
掲載日 2019.7