加藤昇の(新)大豆の話

32. 我が国の味噌分布

味噌の種類別の生産量(出荷量)を見ると米と大豆を原材料とする米味噌が圧倒的に多く、2017年度では味噌全体の81%を占めています。あとは豆味噌の5%、麦味噌の4%で、残りは調合味噌という割合になっています。

これを全国の分布状況で味噌の使われ方を大まかに見ると、北海道から本州全体にわたって米味噌が行き渡っています。その中にあって、愛知県を中心とした中部地方では豆味噌が頑張っているのです。さらに四国の西部から九州にかけての地域は麦みそが好まれています。このように米味噌が全般に行き渡っている中で、昔からの地域の特性が強く残っているところもいくつか見られます。

さらに味噌の生産地が全国津々浦々に広がっていると言ってもその中でも味噌作りが活発な所もあるのです。生産量の多い地域を見ると、長野県が全国の半分近くの46%を占めており、2位の愛知県の8%を遥かに引き離しており、「信州みそ」の健闘ぶりが光っています。

 国内味噌の消費量は年間50万トンと言われてきましたが、徐々にその生産量も減少傾向をたどりつつあります。これは食生活の変化によって米食が減り、味噌汁が食卓に並ぶ機会が少なくなっていることによるものと思われます。我が国が現在、世界一の長寿国であることも、大豆、米、魚を中心とした日本型食生活に支えられたところが大きく、海外からの注目も浴びているところです。しかし、このすばらしい食文化の伝統が現在崩れつつあるのです。なんとかこの優れた日本の食習慣を次世代に続けていきたいものです。

 

主な地域味噌

味噌はそれぞれの家で作られていたものから始まって徐々に大型化していき、周辺の地域に供給できる生産量にまとまって専業化して今日に至っています。そのためにそれぞれの郷土色を浮き彫りにした味噌が各地に誕生してきています。それはそれぞれの気候風土を反映したものとなり、地域味噌としてのバリエーション豊かなものとなっています。こうして日本には北から南まで、長年それぞれの地域に根差した味噌が存在しているのです。その主なものを挙げてみると次のようなものがあります。

北海道には北海道味噌が、  青森県には津軽味噌、 宮城県に仙台味噌、 秋田県には秋田味噌、 福島県には会津味噌、 北陸・静岡地方には越中味噌、 関東甲信越地方には信州味噌が広がり、 石川県には加賀味噌が、 愛知県には八丁味噌、 京都府には京都白味噌が、 岡山県・広島県一帯には府中味噌が、 徳島県には御膳味噌、 四国・中国・九州地方一帯には瀬戸内麦味噌が、 九州・中国地方には九州麦味噌、 九州地方には薩摩味噌が、 沖縄県には沖縄味噌があります。

 

私たちが普段目にしている味噌は、アジアにある同じような味噌の種類とされる穀醤とは少し違った日本独特のものになっています。比較的目にしやすい他の穀醤としては、中国の豆板醤や韓国のコチュジャンなどがありますが、味噌とは違ったそれぞれの風味があることに気が付くはずです。

 

味噌の語源

 「味噌」の語源についてはいろいろと説がありますが、満州語で「醤」のことを「ミスン」と呼ばれており、これが宋代の高麗方言になると「醤」は「密祖」となり、さらに李朝の『増補山林経済』では「末醤」と書いて「ミジョ」と読ませています。これら味噌が発達してきた土地とそれらの呼び方から、「ミスン→密祖→ミジョ→ミソ(味噌)」の流れが見えているように感じられます。いずれにしても味噌は中国、朝鮮半島で生まれ、その呼び方と一緒に我が国にもたらされたものと考えられています。

 

     掲載日 2019.7

 

 

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