加藤昇の(新)大豆の話

30. 納豆の健康効果について

 納豆の健康機能については、すでに多くの情報が広まっており、十分に知れ渡っていることですが、簡単にまとめておきたいと思います。大豆に含まれている成分であるタンパク質、油脂、レシチン、イソフラボン、ビタミンEなどはそのまま健康効果として働いていますが、さらに納豆菌が繁殖することによってビタミンK2、ナットウキナーゼのような新たな機能も加わり、さらに健康効果を高めていることが知られています。納豆による健康効果としては、ダイエット効果、更年期障害の軽減、血圧と血糖値の降下、血管の強化と肝機能向上、などが挙げられます。そして納豆菌により新たに付け加えられた血液凝固作用、骨形成促進作用、整腸作用などの健康効果が指摘されています。つまり健康に対して攻めと守りの両面で優れた能力を発揮するオールラウンドプレーヤーといったところではないでしょうか。

ただ、血液をサラサラにする働きをするために、ワルファリンなどの薬を服用している方は納豆の摂り方について医師に確認をされた方がいいでしょう。

 

納豆はその持っている健康成分により細胞の若さを保ち、老化を防ぐ働きをもっているとされています。納豆が強壮、強精食として知られるのも、この機能に関連した働きといえるでしょう。また、納豆の中には古くから抗菌成分として知られているジピコリン酸の存在が報告されています。ジピコリン酸は溶連菌、ビブリオなどのほか、食中毒菌O-157に対しても強い抗菌活性を持っています。また納豆中のジピコリン酸は放射能除去物質としても知られていますが、最近は制癌物質としても注目されている物質です。

 

 糸引き納豆の主な成分含量を記すと次の通りです。

 糸引き納豆100g中の成分 (日本食品標準成分表 5訂)

カロリー

200 kcal

カルシウム

  90 mg

水分

 59.5 g

マグネシウム

 100 mg

タンパク質

 16.5 g

リン

 190 mg

脂質

 10.0 g

ビタミンB1

  0.07 mg

炭水化物

 12.1 g

ビタミンB2

  0.56 mg

灰分

  1.9 g

ビタミンK

 600 μg

カリウム

 660 mg

 

 

 

ビタミンK2

 やはり納豆には発酵によって生まれたビタミンKが特徴的です。ビタミンKはビタミンK1K2K3K4K5の混合物として生成していますが、私たちの骨形成などに機能性を発揮するのはビタミンK2が主体となっています。

ビタミンK1929年にデンマークの化学者ダムによって発見されました。彼はそのことで後にノーベル賞をもらっています。自然界に存在するビタミンKは、緑黄色野菜など植物に含まれるビタミンK1と、発酵食品や動物性食品に含まれるビタミンK2があります。その後の研究でビタミンKの内でも特にビタミンK2が骨代謝に対する効果が高いことが分かり、骨粗鬆症の治療薬として利用されるようになりました。生理活性の高いビタミンK2を多く含む食品は納豆だけです。納豆にはビタミンK2の中でも特に活性度の高いメナキノン-7MK-7)を多く含んでいます。納豆菌に含まれているビタミンK2は、骨粗鬆症や赤ちゃんのビタミンK欠乏性出血症の予防に効果を発揮しています。ビタミンKはオステオカルシンを活性化する反応の補酵素として働くため、骨にカルシウムなどが沈着するのを助ける働きをしています。ビタミンKは健康な人であれば腸内で生成されていますが、加齢とともにその合成力が衰えていくので、納豆などから摂取して行く必要があります。ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、体内にある脂質と一緒に体内に取り込まれていきます。納豆には豊富な大豆油が含まれているのでビタミンKを摂取するのに最も適している食品と言えます。

現在、納豆に含まれるビタミンK2は骨粗鬆症予防効果として特定保健用食品に認められています。

 

ジピコリン酸

また、納豆の中には古くから抗菌成分としてのジピコリン酸の存在が知られています。ジピコリン酸は溶連菌、ビブリオ菌などのほか、食中毒菌O-157に対しても強い抗菌活性を持っています。この物質の持つ強い抗菌作用によって納豆に他の菌が繁殖するのを防いでいるのです。納豆菌は強酸、強アルカリに強く高温、低温にも耐えられる強さを持っています。だから酒造りの杜氏さんたちは納豆を食べて酒蔵に入って、もし自分の体から納豆菌が麹菌の中に混じると麹菌が殺されてしまうために納豆は避けていると聞いています。また農家で子牛が生まれるときには稲わらを敷いておいてやると子牛が病気にならないと言われています。さらに牛糞に納豆を混ぜておくと納豆菌により牛糞が分解されて匂いが出ないし、その分解された牛糞で野菜を栽培するとそれらの野菜は病気によって枯れることがないと言われています。これらは抗菌作用のあるジピコリン酸の働きによるものと考えられています。このように納豆にはジピコリン酸が含まれているために他の菌に侵されることのない強い防御機能を持っていると言えます。また納豆中のジピコリン酸は放射能除去物質としても知られていますが、最近は制癌物質としても注目されている物質です。


ナットウキナーゼ

さらに納豆菌の中には血液中に出来た血栓を溶かす働きがある酵素、ナットウキナーゼが発見されています。ナットウキナーゼには血栓のフィブリンを直接溶かす働きや体内の血栓溶解酵素を補強する働きがあります。これは日本人研究者によって見つけられたもので、試験管内では非常に強い血栓溶解能を示していまが、納豆を食べて体内の消化器官を経過するうちに消化酵素により分解されてしまい、血栓溶解の働きを発揮することは難しいと考えられています。

 

このように納豆は医食同源というよりは、健康に対して攻めと守りの両面で優れた能力を発揮するオールラウンドプレーヤーといったところではないでしょうか。 

豆腐の消費量が下降状態にある中で、納豆は踏みとどまって消費量を維持しているのもこのような健康機能に対する期待があるからでしょう。しかし、これだけの能力を持った食材であるだけに、もう少し食べやすい食品にならないものだろうかと、心ひそかに期待しているのですが、縄文時代から食べ方が少しも変わっていないとは、ずいぶん頑固な食べ物ですよね。

 

    掲載日 2019.7

 

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