加藤昇の(新)大豆の話

3. 世界のマメと日本の豆、その違いは

 先にも触れたように私達日本人はマメと聞けばまず大豆を思い浮かべますが、世界の常識はそのようにはなっていないのです。  国連は2016年を「国際マメ年(International Year of Pulse)」と定め、FAO(国連食糧農業機関)と各国の関係機関がマメの生産・消費などについて普及啓発を進めていく取り組みをしました。しかしこの時になぜマメをBeanと書かずにPulseと表現したのでしょうか。”Pulse”という言葉には「乾燥状態のマメ」とのイメージがあり、レンズマメやヒヨコマメなどのマメを主に指しているのです。これに対して”Bean”と表現すれば大豆やラッカセイなど油を搾油する原料マメとのニュアンスがついてくるようです。つまり私たちが毎日食べている大豆は国連(FAO)では食品用と分類されていなくて、油脂を採る油糧作物(Oil Crops)に分類されており、食用マメの分類から外されているのです。油糧作物には大豆のほかにナタネや落花生、オイルパームが含まれています。

これら国際的な大豆評価とは違って、我が国の農水省の作物統計資料では大豆だけが「マメ類」と分類され、アズキ、エンドウ豆、その他のマメ類は「雑豆類」とされているのです。いかに大豆にたいする見方が日本と世界に差があるのか、このことからも知ることが出来ます。日本に住む人たちで、東アジア以外で食べられているヒヨコマメ、キマメ、ケツルアズキ、レンズマメ、リョクトウなどの名前を見てすぐに料理が頭に浮かんでくる人たちは多くないのではないでしょうか。インドから西の世界に住む人たちはこれらのマメ類を常食としている人たちなのです。これらのことからもわかるように世界の豆は私たちが想像しているように一様ではないのです。

ここに大豆とその他のマメの簡単な比較表を挙げてみました。

 品種

蛋白質、%

脂質、%

2011年度生産量(千トン)

大豆 

 36

 20

 240,955

インゲンマメ

 22

  1

    23

ヒヨコマメ

 19

  6

    11

エンドウマメ

 24

  1

     9.5

レンズマメ

 25

  1

     4.4

キマメ

 21

  1

     4.4

ササゲ

 23

 10

     4.9

 この表にも見られるように大豆は他のマメに比べてたんぱく質、脂質の含有量が大きく違っています。それよりもその生産量の落差の大きさには驚くばかりです。それは、世界の多くの人たちは、大豆を油脂原料として、さらに家畜の飼料原料として見ているのであり、人間の胃袋の数とは切り離されて生産されているからです。しかしこれら世界の豆の栄養比較表から見ると、いかに我々東アジアに住む民族は昔から栄養豊富な大豆に恵まれていたのかを実感せずにはいられません。世界でのこれらマメ類の生産量を見ると、当然のことですが圧倒的に大豆の生産量が多いのです。しかし、これだけ大豆の栄養的評価が優れていることを世界の人たちが認めているにも関わらず直接大豆を食べることをせず、家畜の飼料にして肉、牛乳、卵としてからでないと食べないのは食文化の違いとしか言いようがありません。 

                        掲載日 2019.7

 
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