(6) KURO |
撮影: 2005 ~ 2008, 制作: 2018/4 |
東武鉄道の日光軌道線で活躍した100形電車が、1968年の廃止後岡山電気軌道に移籍して、同社の3000形になりました。日光軌道線は高低差が300mもある山岳路線で、最高勾配が60
パーミルに達します。このため3000形は、他の車両に比べて強力な45kwモーターを搭載しています。導入された10両のうち、撮影することが出来た3両の写真をお届けします。 そのうちの1両が全身を真っ黒に塗装したKURO(くろ)です。 |
Yanagawa KUROは2004年に改装、誕生しました。デザインはMOMOを手掛けた、水戸岡鋭治氏が担当しました。 烏城(うじょう)の名で知られる岡山城の色をイメージしています。 (2005/11/27) |
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真っ黒の被写体を撮影するのは大変難しいものです。どんなに天気が良くても、黒はすべての色を吸収してしまいます。 露光時間を長くするために、あえて流し撮りにしてみました。背景の色は、白く飛んでいます。 |
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Prefectural Office St. 県庁通りの電停付近で7100形とすれ違うKUROです。右が中銀本店、奥に円形のシンフォニーホールが見えます。 色調の極端に異なる電車を同時に撮影するのは、さらにやっかいです。 (2007/11/3) |
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県庁通りから西大寺町へ向かうところです。 案外、陰になった面の方がきれいに写っているかも知れません。 (2007/3/24) |
Okayama Castle KUROのモチーフとなった岡山城の天守閣です。 慶長2年(1597年)、宇喜多秀家によって造られ、同時に岡山の城下町が整備されました。天守閣はその特異な形状から、信長の安土城を模したとも言われています。 戦災により焼失し、現在の建物は1996年に復元されたものです。 (2008/12/17) |
Night Scene of Okayama Castle ライトアップされた夜の岡山城です。漆黒の闇の中に、金箔を施した瓦の縁取りが浮かび上がります。まさに烏城の名前にふさわしい姿です。 (2007/4/28) |
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Kobashi ~ Saidaiji-cho 京橋を渡るKUROを、雨降りの夕方に撮影しました。もやがかかっていて、黒い被写体はうまく撮れないと思ってましたが、予想に反してなかなか良い雰囲気が出ました。おそるべし、デジカメの威力です。 (2007/3/24) |
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3007, KURO at Nishigawa 冷房装置を搭載してないKUROは夏場にはほとんど稼働しません。その代わり、毎年12月になるとクリスマス電車になって活躍します。 車体にはジングルベルの飾り付けがなされ、車内では良い子にプレゼントの贈呈があります。 (2006/12/10) |
西川の電停から、クリスマス電車を見送っています。突き当たりが岡山駅です。 KUROを含めて3000形は、まとまった10両が存在しましたので、1970年代には主力の車両でした。 1980年代に入ると冷房を搭載した新設計の車体更新車が登場して、徐々に置き換えられて行きました。車体更新車の最後のモデル、7900形の5両には、廃車になった3000形のモーターが転用されています。 ※詳しくは下表をご覧下さい。 |
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3010 at Chunagon ~ Kadotayashiki 3000形のラストナンバー、3010号です。 2008年に、水色の地に赤、白、茶のストライプを斜めに配したデザインになって、「おしゃれ電車」と呼ばれました。 |
中納言から門田屋敷に至るクランク路で、おしゃれ電車を撮影しました。 3010号は2013年4月に用途廃止になりましたが、幸いにも故郷・日光にある「日光霧降チロリン村」に譲渡されました。かつての日光色に復元の上、保存されています。 |
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3005 at Chunagon こちらは3005号です。2005年から日光軌道線時代の復刻塗色(日光色)になっています。 上掲と同じ中納言にて、ズーミングで撮影しました。 下掲は、中納言の角を曲がるところです。↓ |
← Kadotayashiki 門田屋敷の歩道橋から、3005号をズーミングで俯瞰撮影しました。このアングルはたびたび登場し、変わり映えがせずに申し訳ありません。 |
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Nikko Tramway 110 at Nikko Station (Photo by T.Fujimoto) 日光軌道線時代の貴重な写真です。1967/3/25、藤本哲男様が日光駅前で撮影されました。日光軌道線の110号は、岡山に移って3005号になっています。つまり、上掲の日光色の電車そのものです。集電装置がビューゲルで、正面の方向幕回りが オリジナルの形状をしています。 写真提供:藤本哲男様、ありがとうございました。 |
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Ishizu type pantograph 1951年から、岡山電気軌道では独特のパンタグラフが使われています。通常のパンタがバネの力によって集電部を架線に接触させるのに対し、錘(おもり)の重力を利用しています。 この方式を考案した当時の社長の名前から「石津式」と呼ばれています。構造が簡単で、ほとんど故障しない特長があり、市内を走る路面電車のスピードなら密着性能が十分追随できる優れものです。 東武日光軌道線の車両も、岡山へ移ったときに石津式に改造されました。 ※新型車両のMOMOは、高速走行対応のシングルアーム式パンタグラフを採用しています。 |
↑「鳥かご列車」で知られる中国四川省の抹江煤電を訪問した時に、岡山と同じ原理で動作する集電装置が使われているのを見ました。全体の形状は異なりますが、石津式そっくりの錘がシーソーの片端にあって、集電部を押し上げています。 (2013/3/21) |
東武社番 | 岡電社番 | 購入年月 | 改造 | 記事 |
101 | 3008 | 1969/1 | 大阪車輛工業 1・2マン化 | 廃車, 7900形へモーター転用 |
102 | 3001 | 1968/5 | 2マン, 1970年岡電工場 1・2マン化 | 1973年事故廃車 |
103 | 3009 | 1969/1 | 大阪車輛工業 1・2マン化 | 2002年5月, 栃木県で保存 |
104 | 3006 | 1969/1 | 1・2マン | 廃車, 7900形へモーター転用 |
105 | 3002 | 1968/5 | 2マン, 1970年岡電工場 1・2マン化 | 廃車, 7900形へモーター転用 |
106 | 3003 | 1968/5 | 1・2マン | 廃車, 7900形へモーター転用 |
107 | 3004 | 1968/5 | 2マン, 1970年岡電工場 1・2マン化 | 廃車, 7900形へモーター転用 |
108 | 3007 | 1969/1 | 1・2マン | 2004年~ KURO, 現役 |
109 | 3010 | 1969/1 | 大阪車輛工業 1・2マン化 | 2013年4月, 栃木県で保存 |
110 | 3005 | 1968/5 | 1・2マン | 2005年~ 日光色, 現役 |
表2 岡山電気軌道3000形車両一覧 ※メーカー: 宇都宮車輛(現富士重工), 1953年製, モーター: 東洋電機TDK532-B, 台車: 住友金属KS-40J |
References: 楢原雄一 編著「岡山の路面電車」日本文教出版 岡山文庫202, 1999年11月 早川淳一, 三田研慈「岡山電気軌道」鉄道ピクトリアル No.688, 2000年7月 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%AD%A6100%E5% BD%A2%E9%9B%BB%E8%BB%8A_(%E8%BB%8C%E9%81%93) |