21 背中合わせ




背中合わせに立ちながら。
存在を気配で感じてる。




俺と三蔵は。

テーブル越しに向かい合って飯を食ったり。
並んで壁に背を預けながら煙草を吸ったりする。
改めて顔を見合わせるのも面映くてお互いに前を向いたまま。
頭上で紫煙だけを緩く絡ませるコトもある。
それでも時々我慢できなくなって。
煙草に火をつけてやるフリをして紫暗の瞳を覗き込む。

瞳(め)を見れば引き込まれて。
無理に逸らせば代わりに映る唇が欲しくなる。
陽光を吸い込んで発光する金糸に指を絡めたり。
月光を弾いて光る肩を抱きたいと思ったりする。

見ていたくて、触れていたくて。
そして自分を深く埋めたい。


背中合わせになんてなりたくねえのよ。
だって同じ方を見ていたいから。
いつまでもずっと見ていたいから。
でも、無くすワケにはいかないから。
アンタの背中に廻り込む。


すぐに独りになっちまうアンタを探し当てるのは悟空だし。
傷ついたアンタを治癒(なお)すのは八戒の役目。
どっちも出来ない俺に出来んのは。
せいぜい煙草の火を貸してやることくらい。

だからせめて。
後ろなんか振り返りもしないアンタと背中合わせになる。
後ろなんか気にしなくてもいいように。
前だけ向いて歩いて行けるように。
どこまでも行けるように。
たとえ、独りになっても。

行けるように。


無事でいるのかそうでないのか。
気配でしか分からない。
そんな。
背中合わせになんてなりたくない。
明るい金色も深い紫色も見られない。
そんな。
背中合わせになんてなりたくない。
でも。
無くせないから

亡くせないから俺は。




アンタの背中に廻り込む。






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