機動警察Kanon 第205話
「大人しくその黒いレイバーから降りるんだよ！！」
外部スピーカーを使ってみちるに呼びかける名雪。
だが激高したみちるはそんな名雪の言葉に耳を貸したりはしなかった。
「みちるは絶対にお姉ちゃんに勝つんだから！！」
「わたしに勝つって……」
「みちるのグリフォンは無敵なんだから！！」
「うぅ〜、わからずやだよ！」
名雪は意を決するとシールド裏からスタンスティックを引き抜いた。
「それで良いんだよ、それで」
「悪い子はお仕置きだよ」
名雪の言葉に、みちるはグリフォンのコクピット内でにやっと笑った。
「出来るもんならやってみなさいよ」
「うぅ〜、言ったわね〜」
「悔しかったら力づくで止めてみなさいよ！！」
名雪とみちるがヒートアップしているそのころ。
事情が全くわからないみさきと雪見は、多少は事情を知っているであろう祐一に尋ねた。
「相沢巡査、一体どういう事情なのか教えてくれない？」
『そうだよね、あんな強いやつ相手に銃を撃つな、って理由を教えてもらわないと』
「…わかった、知っていることはすべて話す」
タタタタタ
まるで生き物のように滑らかな動きでグリフォンは突進してきた。
「くっ！！」
グリフォンの攻撃をしゃがみ込んで避ける名雪の駆るけろぴー。
そして立ち上がりざまグリフォンの腕をつかむとそのまま跳ね上げ、隙だらけの胴体にスタンスティックを
突き立てようとするがグリフォンの動きは名雪以上に素早かった。
「甘いよ！！」
「わっ！」
格闘戦中とは思えない声を上げる名雪。
「くたばれ！！」
ドギャアァアアン
「右肩アーマー破損！！ 右腕はまだ大丈夫！」
一瞬で損傷状態を把握した名雪は、自分を鼓舞すべく大声で叫ぶと操縦桿を押し込んだ。
「わたしだって負けないんだから！！」
そしてグリフォンに向かってスタンスティックを振り下ろす。
「甘いよ、お姉ちゃん！！」
だがグリフォンには、いやみちるにはそんな攻撃など屁でもなかった。
簡単にかいくぐるとけろぴーの体に連続して打撃を加える。
その連続攻撃の前に、けろぴーは思わず大地に跪いてしまったのだ。
「これでお終いよ！！」
「まだだよ、終わったりなんかしないよ！！」
二人の攻防は周囲に損害を与えながらまだまだ続くのであった。
『「子供！？」』
祐一の説明にみさき・雪見の二人は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「冗談を言って良いときと割るときがあるのは知ってるかしら」
『ちょっと信じられないよね〜』
「信じられないのは俺だって同じだが、とりあえずあのグリフォンというやつに乗っているのは
まだ12かそこらのガキンチョなんだよ！！」
「犯罪者の低年齢化が問題になっていたけど、まさか……」
『どうしよう、雪ちゃん？』
みさきの言葉に雪見は我に返るとすぐに決断した。
「水瀬巡査の援護するわよ。みさき、撃ちなさい！」
『撃ちなさい、って雪ちゃん、相手は子供なんだよ！？』
「聞かなかったことにすればいいでしょ」
「聞かなかったことにすれば、っておい……」
雪見の言葉に祐一も唖然としてしまう。
「子供の遊びしては度が過ぎるわ」
「いや、まあそれはそうだが……」
「水瀬さん一人であいつを相手にするのは無茶よ。でも三号機も片腕が無いのよ。
慣れないKanonの乗って、みさきはうまくやれる自信はあるの？」
雪見の言葉にみさきは一瞬考え込み、だがきっぱり言った。
『うまくできる自信なんてこれっぽちもないよ。でもね雪ちゃん、わたし子供相手に銃を向けたくない』
「みさき……」
『それにもう手遅れだと思うよ』
たしかにみさきの言うとおりであった。
けろぴーとグリフォンの二機は互いに激しくぶつかりながら移動し、結果今はホテルの目の前にいたのだ。
これではちょっとでも照準があっていないだけで外れた弾丸はホテルに当たってしまう。
「…水瀬巡査の邪魔しないように援護しなさい、みさき！！」
『了解だよ！』
みさきは37mmリボルバーカノンを収納すると、けろぴーとグリフォンの格闘戦へ介入すべく突き進んで行った。
あとがき
短いですがこの次の話はワンシーンでまとめたかったのでここでお終いです。
２週間ほど間が開いているのに本当短くてすいません。
2004.08.08
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